「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第10部
白猫夢・紅丹抄 3
麒麟を巡る話、第522話。
謎の勢力。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
葵に止められたものの、ロンダは突撃部隊を編成し、自ら大月に向かっていた。
「いくらアオイ嬢のお言葉でも、女性を一人戦地に送って、軍人たる我々が平然とふんぞり返っているなど、とてもできませんからな」
青州と玄州を結ぶ青玄街道を大型軍用トラックで突き進みつつ、ロンダとシエナは通信機で連絡をとっていた。
《ええ。アタシとしても、このままあの子に任せっきりにしたら、何がどうなったのか分かんなくなりそうだしね。あの子、眠たい時とかだとろくに説明しないし。できるだけ細かく、状況を報告してちょうだい。
勿論、アオイが危なそうだってなったら、アンタたちも援護してよ》
「承知しております」
《後、どのくらいで到着しそう?》
「恐らく15分もかからないかと。ただ、アオイ嬢が『テレポート』により現地へ出向いてから既に30分以上は経過しておりますし、もう既に決着しているかも知れません」
《そうね、あの子は恐ろしく強いもの。
ソレでも万が一ってコトはあるし、十分気を付けてちょうだい》
「はい」
ロンダが予測した通り、トラックは間もなく大月に到着した。
「ふーむ……、確かにあちこちで交戦した跡が見受けられる。我が軍による制圧行動だけでは、あれほど火が上がるわけも無い」
街のあちこちから黒煙が上がっており、様々なものが焼ける臭いが立ち込めている。ロンダは顔をしかめつつ、通信機を使って指示を送った。
「各指揮官に告ぐ。先刻通知したように、この都市は約1時間前に海軍局第3師団付属第16大隊が制圧したが、当該作戦が終了した直後に正体不明の勢力によって襲撃され、あえなく壊滅したとの情報が入っている。
我々の目的は第一に、その敵性勢力が何者であるかの確認、そして可能ならば殲滅もしくは撃退すること。第二に、先だって進入した預言者殿を支援すること。第三に、我が軍の生存者がいれば、その保護も行うこと。
説明は以上だ。各部隊、最大限に注意して散開し、行動を開始せよ」
ロンダの命令に従い、兵士たちが街中に散る。
(私も市街地に赴きたいところだが、私に何かあれば、それこそ全軍の危機だからな。ここはじっと、報告を待つしかあるまい。
しかし……、女性一人に我が軍が壊滅させられただと? 馬鹿な、と言いたいところだが、我々にしてもアオイ嬢をたのみにしている体たらくだ。
現実に、途方も無い才と力を持つアオイ嬢がいるのだから、もう一人や二人、同様の存在がいたとしても、決しておかしな話ではない。昨今はうわさを聞かんが、『黒い悪魔』などの例もある。ミッドランドのテンコ氏と『旅の賢者』にしてやられた覚えもあるからな。
だがそんな存在がこの央南にいるなどとは、まったく聞き及んでいない。我々の情報網にも無かった存在だ。まるで突然、湧いて出たような……。
確か『シンサ』と名乗っていたが……、一体何者なのだ?)
思案に暮れていたところに、進入していた兵士たちから報告が入る。
《第1小隊、市街地南側に到着しました。現在、敵性勢力と思しき者は見当たりません》
《第2小隊、市街地中央に到着しました。異常ありません》
《第3小隊、市街地北側に……》
だが、どの隊からも敵と遭遇したり、葵を見つけたと言うような報告は無い。
「全隊、預言者殿は見つかったか? 緑髪に三毛耳の猫獣人だが……」
《いえ》
《見つかりません》
尋ねてみても、それらしい回答が無い。
と、恐る恐ると言った声色で、返事が返って来た。
《緑髪に三毛耳の、女性の猫獣人でしょうか? 20代半ばくらいの》
「うん? ……それだ! 彼女に違いない。どこで見つけた?」
《港にて発見しました。気を失っているようです》
「気を? その、……眠っている、とかではなく?」
《あちこちに傷を負っており、気絶しているように見受けられます》
「なんと……!?」
《なお、港にも敵性勢力は確認できませんでした。恐らく撤退したのではと思われるのですが》
「いや、性急な判断は禁物だ。まずは彼女が預言者殿であるか、私が確認に向かおう」
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謎の勢力。
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3.
葵に止められたものの、ロンダは突撃部隊を編成し、自ら大月に向かっていた。
「いくらアオイ嬢のお言葉でも、女性を一人戦地に送って、軍人たる我々が平然とふんぞり返っているなど、とてもできませんからな」
青州と玄州を結ぶ青玄街道を大型軍用トラックで突き進みつつ、ロンダとシエナは通信機で連絡をとっていた。
《ええ。アタシとしても、このままあの子に任せっきりにしたら、何がどうなったのか分かんなくなりそうだしね。あの子、眠たい時とかだとろくに説明しないし。できるだけ細かく、状況を報告してちょうだい。
勿論、アオイが危なそうだってなったら、アンタたちも援護してよ》
「承知しております」
《後、どのくらいで到着しそう?》
「恐らく15分もかからないかと。ただ、アオイ嬢が『テレポート』により現地へ出向いてから既に30分以上は経過しておりますし、もう既に決着しているかも知れません」
《そうね、あの子は恐ろしく強いもの。
ソレでも万が一ってコトはあるし、十分気を付けてちょうだい》
「はい」
ロンダが予測した通り、トラックは間もなく大月に到着した。
「ふーむ……、確かにあちこちで交戦した跡が見受けられる。我が軍による制圧行動だけでは、あれほど火が上がるわけも無い」
街のあちこちから黒煙が上がっており、様々なものが焼ける臭いが立ち込めている。ロンダは顔をしかめつつ、通信機を使って指示を送った。
「各指揮官に告ぐ。先刻通知したように、この都市は約1時間前に海軍局第3師団付属第16大隊が制圧したが、当該作戦が終了した直後に正体不明の勢力によって襲撃され、あえなく壊滅したとの情報が入っている。
我々の目的は第一に、その敵性勢力が何者であるかの確認、そして可能ならば殲滅もしくは撃退すること。第二に、先だって進入した預言者殿を支援すること。第三に、我が軍の生存者がいれば、その保護も行うこと。
説明は以上だ。各部隊、最大限に注意して散開し、行動を開始せよ」
ロンダの命令に従い、兵士たちが街中に散る。
(私も市街地に赴きたいところだが、私に何かあれば、それこそ全軍の危機だからな。ここはじっと、報告を待つしかあるまい。
しかし……、女性一人に我が軍が壊滅させられただと? 馬鹿な、と言いたいところだが、我々にしてもアオイ嬢をたのみにしている体たらくだ。
現実に、途方も無い才と力を持つアオイ嬢がいるのだから、もう一人や二人、同様の存在がいたとしても、決しておかしな話ではない。昨今はうわさを聞かんが、『黒い悪魔』などの例もある。ミッドランドのテンコ氏と『旅の賢者』にしてやられた覚えもあるからな。
だがそんな存在がこの央南にいるなどとは、まったく聞き及んでいない。我々の情報網にも無かった存在だ。まるで突然、湧いて出たような……。
確か『シンサ』と名乗っていたが……、一体何者なのだ?)
思案に暮れていたところに、進入していた兵士たちから報告が入る。
《第1小隊、市街地南側に到着しました。現在、敵性勢力と思しき者は見当たりません》
《第2小隊、市街地中央に到着しました。異常ありません》
《第3小隊、市街地北側に……》
だが、どの隊からも敵と遭遇したり、葵を見つけたと言うような報告は無い。
「全隊、預言者殿は見つかったか? 緑髪に三毛耳の猫獣人だが……」
《いえ》
《見つかりません》
尋ねてみても、それらしい回答が無い。
と、恐る恐ると言った声色で、返事が返って来た。
《緑髪に三毛耳の、女性の猫獣人でしょうか? 20代半ばくらいの》
「うん? ……それだ! 彼女に違いない。どこで見つけた?」
《港にて発見しました。気を失っているようです》
「気を? その、……眠っている、とかではなく?」
《あちこちに傷を負っており、気絶しているように見受けられます》
「なんと……!?」
《なお、港にも敵性勢力は確認できませんでした。恐らく撤退したのではと思われるのですが》
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