黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第10部

    白猫夢・落葉抄 4

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    麒麟を巡る話、第544話。
    楓の猛攻。

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    4.
    「あなたって」
     楓の初太刀をすい、とかわし、葵が尋ねる。
    「そんなキャラだったっけ」
    「あんな鬼畜じみた話を聞かされて、激昂しない者がいるものですかッ!」
     続けざまに二太刀、三太刀と振り回すが、葵には少しも当たらない。
    「少しは落ち着いたら? 今のあなた、前より全然弱いよ」
    「敵に心配されるいわれはございませんわッ!」
     ぼっ、と空気が爆ぜる音をなびかせ、楓の四太刀目が葵の肩をかすめる。
    「つっ……」
     葵のシャツが焦げ、わずかながらも火が点く。
     それをぱたぱたとはたいて消し、葵が離れる。
    「これでも、以前より弱いとでも?」
     いつの間にか小雨がしとしとと降っていたが、楓の刀に灯る火が弱まる気配は、全く見られない。
    「調子が出てきたみたいだね」
    「あなたも本気をお出しになったら如何かしら?」
     そう言って、楓は左手の人差し指と中指をくい、くいと引き、葵を挑発する。
     しかし葵は挑発に乗る様子を見せず、すたすたと近付いて来る。
    「それはまだ、もう少し先」
    「何故かしら?」
    「あなたの実力を測っておきたいから。その上で、あたしの技を試したい」
    「……あまりあたくしを、侮辱なさらないで下さらない?」
     怒りの上に怒りが加わり、楓の刀がぶるぶると震え出す。
    「それともわざと怒らせたいのかしら?」
    「うん」
    「……ッ!」
     次の瞬間、楓はもう一度一足飛びに間合いを詰め、葵の腕を捉えていた。
    「あっ……」
    「もらったああッ!」
     ざくっ、と音を立て、葵の腕から血しぶきが上がる。切断までには至らなかったが、それでも深手を負わせたのは確かだった。
    「りゃあッ!」
     くるん、くるんと刀を返し、今度は唐竹に振るう。
     しかしこの一瞬で治療術を終わらせたらしく、葵は両手で刀を握って楓の太刀を受ける。
    「……っく」
     地力ではやはり楓が勝るらしく、鍔競り合いに移って間もなく、葵の体勢が崩れていく。
    「はあッ!」
     楓はさっと体勢を変え、葵を蹴り飛ばす。
     だがこれも予測済みだったらしく、葵は蹴りが入る直前にひょいと後方へ離れ、威力を殺していた。
     そのため、今度は楓の体勢が大きく崩れ、のけぞりかける。
    「やっ」
     後方に跳んだ葵がばねで弾かれたように、ぴょんと前に跳び掛かる。
     上段に振りかぶってきた葵を、楓はのけぞったまま迎え撃つ。
    「食らうかあッ!」
     完全に横に倒れると同時に、楓は両足を葵に向けて突き出す。楓に刀が届くよりも一歩早く、葵の胸と鳩尾にその右足と左足とが食い込んだ。
    「う……ぐ、っ」
     半ば巴投げの形になり、楓は全身の筋肉を総動員させて、そのまま葵を後方へと蹴り飛ばした。
    「はあっ、……はあっ」
     起き上がった楓の目に、仰向けになったままの葵の姿が映る。どうやら受け身を取りきれず、地面に背中から叩き付けられたらしい。
    「う……、うっ、……く、げほ、っ」
     それでも葵はふらふらと立ち上がるが、すぐに膝を着く。と同時に、口から赤いものが飛び散り、ぼたぼたと地面に撒かれる。
     対する楓はすっくと立ち上がり、泰然と刀を構える。
    「頃合いではないかしら? もうあたくしの実力は、十分に味わったでしょう?」
    「……そう……だね」
     膝を着いたまま、葵が途切れ途切れに応じる。
    「やっぱり、本当に強い。普通の、人間じゃ、あの一瞬であんな、反応できないし、あんな遠くまで、あたしを蹴っ飛ばしたりも、できないもの。
     本当に良かった。あなたがそこまで強くて。それでこそ、あたしの『切り札』を試すことができるよ」
     まだ蒼い顔のまま、葵が立ち上がり、刀を構えた。
     いや、正確には刀の腹を楓に向けている。
    「何か技か、術でも出すおつもりかしら?」
    「ううん。ちょっと、説明しておきたいから。
     この刀、何だか分かる?」
    「え?」
    「実を言うとね、この刀、あたしには十分に使えないんだ。この刀は人を選ぶから」
    「意味が分かりませんわ。今まで普通に振るっていたでしょう?」
    「ううん、結構きついんだ、実は。握った瞬間からすごく吐きそうになったし、何度も気が遠くなってた」
     葵は刀を納めつつ、話を続ける。
    「この刀の名前は『晴空刀 蒼天』。別名、『蒼天剣』。あたしのばーちゃんが使ってた刀」
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    葵、刀に限らず、かなりの無茶をしています。
    彼女の健康が心配。

    NoTitle 

    わあ。ここで蒼天剣すか。葵ちゃんも無茶を……。

    ってことは切り札ってあの秘剣? いやいや、切り札というからにはなにかアレンジを加えてくるに違いない。

    楽しみでごんす(^^)
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