「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
白猫夢番外編 その7_1
麒麟を巡る話、からちょっと外れて。
見た目と年齢、その1。
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白猫夢番外編 その7_1
央北の、短い秋が深まる頃には、楓は車椅子なしで歩けるほどに回復していた。
「超人化って、ホントにものすごいんだねー。マークはもう3ヶ月くらい寝たきりだろうって言ってたのに」
「そのようですわね」
まだ若干、ふらつく様子を見せることもあるが、今この時、楓は道着姿で葛と対峙している。葛の修行に付き合うと共に、自身のリハビリを兼ねているのだ。
「あたしが今住んでる国の皇帝さんも、30年以上前にアル――その時はアロイスって名乗ってたらしいんだけど――から超人にしてもらったんだってー」
「へえ? その方、お名前は?」
「グリスロージュ帝政連邦の皇帝さんでー、フィッボ・モダスって言う人。
兎獣人なんだけど、60歳超えてもすっごくお元気でー、たまーに兵士さんたちのトコに行って、視察がてら乱取り稽古されるコトもあるんだってー」
「老いてなお盛ん、ですわね。超人と言うことであれば、簡単にいなしてしまわれるのかしら? それともそこは、やはり歳相応に……?」
「パパ曰く、『マジになられたらオレでも敵わないかも』って。あ、パパは剣士なんだけどね」
「伺っておりますわ。黄秋也氏でしたわね」
「そ、そ」
この他愛のない会話だけであれば、単に戯れているようにも感じられるが、この間にも二人は真面目に木刀を振るい、型稽古に励んでいる。
「秋也氏も相当の武人なのでしょう? それが苦戦するとなると、やはり老いても超人は超人のまま、と言うことになるのでしょうね」
「かもねー。
あ、てコトはカエデさんも、60、70になっても全然元気ってコトになるのかなー?」
「さあ……? あ、あらっ」
興味無さげな返事ではあったが、実際のところ、かなり気を取られていたらしい。
葛の袈裟斬りを受け損ね、からん、と乾いた音を立てて、楓が構えていた木刀が床を転がっていく。
「失礼いたしました」
「いえいえー。……ねー、コントンさーん。どうなのかなー、その辺?」
楓が木刀を取りに向かう間に、葛は二人を(嬉しそうにニヤニヤと口元を緩ませつつ)眺めていた渾沌に尋ねる。
「へっ? あ、ああ、超人化がどのくらい効力が続くかって話?」
「うん」
「あたくしも、それは伺っておきたいですわね。正直な話、あたくしが60になっても70になっても、ずっとこの姿のままだなどと言われたら、ぞっといたしますわ」
「あら、美貌が続くなんて、女にとってはいい話じゃないの」
「同じ美貌が続くにしても、歳相応でありたいですもの。どこかの九尾ちゃんみたいな若作りも、どうかと思いますし」
「あはは、そうね。あれは少女趣味が過ぎるわね、確かに。
モダス帝についてはわたしも何度か会ったけど、見た目は歳相応だったわよ。それにモダス帝以外にも超人を見たことあるけど、みんな大抵、年齢通りって感じ。
まあ、多少は肌の色ツヤが良かったり、背筋がしゃきっと伸びてたりって程度で、わたしみたいに魔術でも使わない限りは、見た目と年齢はイコールになるみたいよ、大体」
「え? 渾沌さんも、実はお歳を召されて……?」
きょとんとした顔で尋ねた楓に、葛が答える。
「そだよ。パパがあたしくらい、ううん、子供の時からアレだってさ。実はセイナばーちゃんのいっこ下だって」
「やだわ、葛。歳をばらさないでちょうだいな」
笑いながら突っ込んだ渾沌を、楓がしげしげと眺める。
「『蒼天剣』黄晴奈と同年代って、……え、……まさか、あなた70歳以上ですの!?」
「うふふ……、今年で丁度、80歳よ」
渾沌がそう答えた途端、楓は葛にそろりと近付き、こそこそと耳打ちした。
「80歳が33歳の同性を口説くって、……色々な意味で、どうかと思いませんこと?」
「ま、ちょっと思う。いい人なんだけどねー」
「聞こえてるわよ」
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見た目と年齢、その1。
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白猫夢番外編 その7_1
央北の、短い秋が深まる頃には、楓は車椅子なしで歩けるほどに回復していた。
「超人化って、ホントにものすごいんだねー。マークはもう3ヶ月くらい寝たきりだろうって言ってたのに」
「そのようですわね」
まだ若干、ふらつく様子を見せることもあるが、今この時、楓は道着姿で葛と対峙している。葛の修行に付き合うと共に、自身のリハビリを兼ねているのだ。
「あたしが今住んでる国の皇帝さんも、30年以上前にアル――その時はアロイスって名乗ってたらしいんだけど――から超人にしてもらったんだってー」
「へえ? その方、お名前は?」
「グリスロージュ帝政連邦の皇帝さんでー、フィッボ・モダスって言う人。
兎獣人なんだけど、60歳超えてもすっごくお元気でー、たまーに兵士さんたちのトコに行って、視察がてら乱取り稽古されるコトもあるんだってー」
「老いてなお盛ん、ですわね。超人と言うことであれば、簡単にいなしてしまわれるのかしら? それともそこは、やはり歳相応に……?」
「パパ曰く、『マジになられたらオレでも敵わないかも』って。あ、パパは剣士なんだけどね」
「伺っておりますわ。黄秋也氏でしたわね」
「そ、そ」
この他愛のない会話だけであれば、単に戯れているようにも感じられるが、この間にも二人は真面目に木刀を振るい、型稽古に励んでいる。
「秋也氏も相当の武人なのでしょう? それが苦戦するとなると、やはり老いても超人は超人のまま、と言うことになるのでしょうね」
「かもねー。
あ、てコトはカエデさんも、60、70になっても全然元気ってコトになるのかなー?」
「さあ……? あ、あらっ」
興味無さげな返事ではあったが、実際のところ、かなり気を取られていたらしい。
葛の袈裟斬りを受け損ね、からん、と乾いた音を立てて、楓が構えていた木刀が床を転がっていく。
「失礼いたしました」
「いえいえー。……ねー、コントンさーん。どうなのかなー、その辺?」
楓が木刀を取りに向かう間に、葛は二人を(嬉しそうにニヤニヤと口元を緩ませつつ)眺めていた渾沌に尋ねる。
「へっ? あ、ああ、超人化がどのくらい効力が続くかって話?」
「うん」
「あたくしも、それは伺っておきたいですわね。正直な話、あたくしが60になっても70になっても、ずっとこの姿のままだなどと言われたら、ぞっといたしますわ」
「あら、美貌が続くなんて、女にとってはいい話じゃないの」
「同じ美貌が続くにしても、歳相応でありたいですもの。どこかの九尾ちゃんみたいな若作りも、どうかと思いますし」
「あはは、そうね。あれは少女趣味が過ぎるわね、確かに。
モダス帝についてはわたしも何度か会ったけど、見た目は歳相応だったわよ。それにモダス帝以外にも超人を見たことあるけど、みんな大抵、年齢通りって感じ。
まあ、多少は肌の色ツヤが良かったり、背筋がしゃきっと伸びてたりって程度で、わたしみたいに魔術でも使わない限りは、見た目と年齢はイコールになるみたいよ、大体」
「え? 渾沌さんも、実はお歳を召されて……?」
きょとんとした顔で尋ねた楓に、葛が答える。
「そだよ。パパがあたしくらい、ううん、子供の時からアレだってさ。実はセイナばーちゃんのいっこ下だって」
「やだわ、葛。歳をばらさないでちょうだいな」
笑いながら突っ込んだ渾沌を、楓がしげしげと眺める。
「『蒼天剣』黄晴奈と同年代って、……え、……まさか、あなた70歳以上ですの!?」
「うふふ……、今年で丁度、80歳よ」
渾沌がそう答えた途端、楓は葛にそろりと近付き、こそこそと耳打ちした。
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「ま、ちょっと思う。いい人なんだけどねー」
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