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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第4部

    蒼天剣・恋慕録 1

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    晴奈の話、第179話。
    おてんば恋姫の冒険。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     ゴールドコーストを後にした晴奈と小鈴は央中北部の国、ネール公国への道を進んでいた。
    「もう一度確認しても、よろしいですか?」
    「ん?」
     晴奈が地図を眺めながら、小鈴に質問する。
    「ゴールドコーストを抜け、この街道を北上した後に、えっと……」
    「リトルマイン、ね。ゴールドコーストほどじゃないけど、ちっちゃい鉱山がある街よ」
    「はい、それでそのリトルマインを抜け、西の関所を越えて、次は湖を越える、でしたっけ」
    「そうそう。フォルピア湖を船で越えて、その真ん中にあるミッドランド島で一休み。んで、その後また船に乗って西岸に降りて、そのまま西へ進む」
    「そこには港がある、と」
    「うんうん。ルーバスポートって言う、ネール公国公有の港。そこで一泊して、そこから2日ほど北に進めば……」
    「我々の目的地、ネール公国の首都であるクラフトランドに到着する、と」
    「そーゆーコト。……コレで4回目だけどね、確認するの」
    「はは……、失敬。どうも、見知らぬ土地は不安なもので。それに……」
     晴奈は立ち止まって地図をたたみ、それから後ろをチラ、と見た。
    「……何なのか、一体」
    「ん?」
    「いえ……」
     晴奈は進む方向に向き直り、また歩き始めた。



    (み、見つかってしまったかしら)
     晴奈の後方、約20メートル後ろにいたフォルナは慌てて身を隠した。晴奈を男だと勘違いしたまま一目ぼれしてしまったフォルナは、護衛たちに無断でゴールドコーストを飛び出し、晴奈たちを追いかけていた。
    (……大丈夫、よね?)
     木の陰からそっと晴奈たちの様子を伺ってみると、二人は既に歩き出していた。
    (あら、急がなくては)
     フォルナは街道から若干それ、木々に姿を隠しながら晴奈たちの後を追いかける。フォルナの目には、晴奈の姿がまるで物語に登場する騎士の如く映っている。
    (ああ……! 何て綺麗な後姿でしょう!
     威風堂々として、それでいて『猫』らしい軽やかな足取り。上に束ねられた、真っ黒な長い髪。エキゾチックな異国のお召し物。そして優雅に揺れる尻尾!
     ああ、コウさま……!)
     晴奈が女だとは少しも疑わず、フォルナは勝手に妄想を膨らませていく。
     と、ここでようやく晴奈の横に並んで歩く小鈴に気付いた。
    (……あら? そう言えばあの赤毛のエルフの方、ずっとコウさまと一緒にいるわね。確か、コスズさんと言うお名前、だったような。
     お二人で、旅をされているのよね? ……まさか、コスズさんはコウさまの恋人? ……い、いえ。まだそうと決まったわけでは無いわ。もしかしたら単なる従者かも知れないし)
     フォルナの想いを知らない晴奈は、何の気なく小鈴と話をしている。
    「小鈴殿、リトルマインと言うのはどんな街なのですか?」
    「さっきもちょっと触れたけど、鉱山の街ね。
     屏風山脈西側には金や銀、その他色んな金属の鉱床が多いのよ。一番有名なのはゴールドコースト。その名の通り、金がザクザク掘れるトコだって言うのは前に言った通り。
     んで、リトルマインも同じように錫とか黒炭、亜鉛が採れるのよ。ま、ゴールドコーストみたいに貴金属は出ないから、そんなに人気は無いけどね」
    「ふむ。ゴールドコーストとは違って、落ち着いて過ごせそうですね」
    「そーね。あ、そうそう。ココもね、温泉あんのよ。鉱山近くの温泉だから、効能もけっこーあるらしいわよ」
    「ほう、温泉ですか」
    「硫黄とか燐も出るらしいから、ここ数年では鉱山よりもむしろ、温泉を軸にした観光業を押し出そうとしてるみたい。ま、今のところそんなに儲かってないみたいだから、ゆっくりはできると思うけどね」
     温泉と聞いて晴奈は昔、紅蓮塞で小鈴に出会った時のことを思い出した。
    「そう言えば昔も、紅蓮塞へ温泉目的でいらしてましたね」
    「あー、うんうん。あそこのお湯も気持ち良かったわぁ。お酒も美味しかったし」
    「ふむ。温泉に入ったら、酒でも飲みますか」
    「いーわねぇ、もう秋めいてきたし。ワインを熱燗にしてもらって、ホットワインをぐいー、っと」
     その言い方が5年前、紅蓮塞の温泉内で小鈴が見せた動作とまったく一緒だったので、晴奈は笑い出した。
    「ふふ、あはは」
    「ん? どしたの、晴奈?」
    「いえ、紅蓮塞の時も……」
     楽しそうに笑う晴奈と小鈴を見て、フォルナは焦る。
    (あっ、あっ……。あんなに楽しそうに笑っているわ。やっぱり、お二人は付き合っていらっしゃるのかしら?)
     そんな風に、木陰で気を揉んでいると――。

     フォルナは突然口をふさがれ、森の奥へと引きずり込まれた。

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    ……このサブタイトル、一体どっちのファンが食いついてくれるのか。
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