「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第4部
蒼天剣・恋慕録 2
晴奈の話、第180話。
金に目がくらむ愚か者たち。
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2.
「!?」
フォルナは何が起こったのか、そして何をされているのか把握できなかった。
「むっ、むぐ!?」
「うるせえ。静かにしやがれ」
がっちりと口、肩、そして首をつかまれているため身動きが取れないが、背後から男の声がする。
「騒ぐんじゃねえぞ」
フォルナを捕まえているのとは別の男らしい声がする。フォルナはまだ状況が飲み込めず、しきりにうなる。
「うー、うー」
「俺の言ってることが分かんねえのか、お嬢さんよお?」
男が一人、フォルナの目の前に回ってギラリと光るナイフを取り出す。
「うぅ!?」
「黙ってくんねーとよ、オシゴトできねーのよ」
「……」
ここでようやく、フォルナは状況を理解した――今、自分は襲われているのだと。
「よしよし……」
フォルナは盗賊たちに持ち物を奪われ、猿ぐつわを噛まされて木に縛り付けられた。
「金は、クラムが現金で12000と。で、こっちはエル金貨2枚に、銀貨が、えーと……、62枚。なあ、今1クラムって何エルだっけ?」
「確か、25か26」
「いや、こないだ中央政府がかなりクラムを発行してたから、いいとこ22じゃねーか?」
「そっか。……てことは、金貨が10000エル、銀貨100エルだから、合計26200エルで、割ることの……」
「1200クラムってところだな」
「じゃ、合わせて13200か。……ヒュー、金持ってたな、やっぱり」
盗賊たちはフォルナの財布からジャラジャラと金を出し、ほくそ笑んでいる。と、盗賊の一人がフォルナの鞄から通帳を取り出した。
「ん? これ、通帳か? えーと、お嬢ちゃんのお名前は、と……。『金火狐銀行 ブラウンガーデン支店 フォルナ・ブラウンテイル・グラネル』。
……へ?」
通帳に記載されている名前を読み上げた瞬間、盗賊たちは凍りついた。
「グラネル家って、アレ、だよな?」
「あ、ああ」
「グラーナ王国の、王家……」
盗賊4人は一斉に、木にくくりつけたフォルナを見つめる。一人が立ち上がり、フォルナの猿ぐつわを取って質問する。
「……聞くけどよ、お嬢ちゃん」
「はい」
「アンタの名前は、この通帳に書いてあるフォルナ・ブラウンテイル・グラネルでいいのか?」
「ええ」
「マジか?」
「はい」
盗賊たちは顔を見合わせ、たどたどしい口調で相談する。
「つまり、これはあれか」
「俺たちは、王族の、お嬢ちゃんを、縛り付けて、金も奪った、と」
「い、いや。まだやってねえ。このまま離れりゃ、問題ない。多分。きっと。恐らく」
「……でもよ、13000クラムだぜ?」
その一言で相談の声がやみ、全員がもう一度フォルナの顔を見る。
「……だな」
「ほしいよな、13000」
「13000あったらさ、しばらく遊べるよな」
「それどころじゃねえぜ」
盗賊の一人が、先ほどの通帳を手にとって調べている。
「預金残高、1682798クラムだってよ」
「ひゃ、168万クラム!?」
「どっ、どんだけ遊べるよ?」
「てめーは遊ぶことしか頭にねえのか。こんだけあったらよ、あっちこっちの事業債権がしこたま買えるぜ?」
「他人の借金背負ってどうしようってんだよ?」
盗賊の中で一番頭の良さそうな男が、ニヤリと笑う。
「バーカ、借金ったって使い道は商売の元手だぜ?
こう言う債権にゃ、配当ってもんが付くんだよ。オマケに優良債権を押さえときゃ、色んな理由つけて買いたいってヤツも出てくる。
俺たちが安値で大量に仕入れて、後々奴らが一儲けすりゃ、それだけで10倍、20倍に膨れ上がる」
「ひゃ、168万が10、いや20倍になるってのか!?」
「計算してみろよ、3000万くらいにゃなるぜ」
「……うっひょー」
欲にまみれた男たちの妄想は止まらない。そして線の細い、弱気そうな男が物騒なことを言ってのけた。
「3000万もありゃ、もうこんな薄暗いところで人を殺さなくてもいいんだよな……」
「そうだ。今、王女様を手放してチャンスを逃し、人を襲い続けるか。
それともたった一回、ここで手を汚すか」
盗賊たちはそこで、しばらく黙る。フォルナは男たちの間に渦巻く狂気を感じ取り、恐る恐る声をかける。
「あ、あの。お金がほしいのなら、差し上げます。国にも盗られたことは言いません。ですから、このまま解放して……」「お嬢さぁん」
盗賊たちは一斉に立ち上がり、フォルナの顔を見つめた。
「俺たちゃだまされてだまされて、色んなもん搾り取られてさ。こんな最下層にまで堕っこちたのよ」
「今さらさぁ、『何もチクらないから』って言われてもさ」
「信じる気にゃ、さーっぱりなれんのよ」
「そう言うことでね。……せめて苦しまないようには、しておいてやるからな」
盗賊たちは一斉にナイフを抜いて、フォルナを囲む。
彼らの目は欲と殺人に対する倦怠感で、ドロドロに濁っていた。
「ひっ……!」
フォルナは短く悲鳴を上げ、目をつぶった。
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金に目がくらむ愚か者たち。
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「!?」
フォルナは何が起こったのか、そして何をされているのか把握できなかった。
「むっ、むぐ!?」
「うるせえ。静かにしやがれ」
がっちりと口、肩、そして首をつかまれているため身動きが取れないが、背後から男の声がする。
「騒ぐんじゃねえぞ」
フォルナを捕まえているのとは別の男らしい声がする。フォルナはまだ状況が飲み込めず、しきりにうなる。
「うー、うー」
「俺の言ってることが分かんねえのか、お嬢さんよお?」
男が一人、フォルナの目の前に回ってギラリと光るナイフを取り出す。
「うぅ!?」
「黙ってくんねーとよ、オシゴトできねーのよ」
「……」
ここでようやく、フォルナは状況を理解した――今、自分は襲われているのだと。
「よしよし……」
フォルナは盗賊たちに持ち物を奪われ、猿ぐつわを噛まされて木に縛り付けられた。
「金は、クラムが現金で12000と。で、こっちはエル金貨2枚に、銀貨が、えーと……、62枚。なあ、今1クラムって何エルだっけ?」
「確か、25か26」
「いや、こないだ中央政府がかなりクラムを発行してたから、いいとこ22じゃねーか?」
「そっか。……てことは、金貨が10000エル、銀貨100エルだから、合計26200エルで、割ることの……」
「1200クラムってところだな」
「じゃ、合わせて13200か。……ヒュー、金持ってたな、やっぱり」
盗賊たちはフォルナの財布からジャラジャラと金を出し、ほくそ笑んでいる。と、盗賊の一人がフォルナの鞄から通帳を取り出した。
「ん? これ、通帳か? えーと、お嬢ちゃんのお名前は、と……。『金火狐銀行 ブラウンガーデン支店 フォルナ・ブラウンテイル・グラネル』。
……へ?」
通帳に記載されている名前を読み上げた瞬間、盗賊たちは凍りついた。
「グラネル家って、アレ、だよな?」
「あ、ああ」
「グラーナ王国の、王家……」
盗賊4人は一斉に、木にくくりつけたフォルナを見つめる。一人が立ち上がり、フォルナの猿ぐつわを取って質問する。
「……聞くけどよ、お嬢ちゃん」
「はい」
「アンタの名前は、この通帳に書いてあるフォルナ・ブラウンテイル・グラネルでいいのか?」
「ええ」
「マジか?」
「はい」
盗賊たちは顔を見合わせ、たどたどしい口調で相談する。
「つまり、これはあれか」
「俺たちは、王族の、お嬢ちゃんを、縛り付けて、金も奪った、と」
「い、いや。まだやってねえ。このまま離れりゃ、問題ない。多分。きっと。恐らく」
「……でもよ、13000クラムだぜ?」
その一言で相談の声がやみ、全員がもう一度フォルナの顔を見る。
「……だな」
「ほしいよな、13000」
「13000あったらさ、しばらく遊べるよな」
「それどころじゃねえぜ」
盗賊の一人が、先ほどの通帳を手にとって調べている。
「預金残高、1682798クラムだってよ」
「ひゃ、168万クラム!?」
「どっ、どんだけ遊べるよ?」
「てめーは遊ぶことしか頭にねえのか。こんだけあったらよ、あっちこっちの事業債権がしこたま買えるぜ?」
「他人の借金背負ってどうしようってんだよ?」
盗賊の中で一番頭の良さそうな男が、ニヤリと笑う。
「バーカ、借金ったって使い道は商売の元手だぜ?
こう言う債権にゃ、配当ってもんが付くんだよ。オマケに優良債権を押さえときゃ、色んな理由つけて買いたいってヤツも出てくる。
俺たちが安値で大量に仕入れて、後々奴らが一儲けすりゃ、それだけで10倍、20倍に膨れ上がる」
「ひゃ、168万が10、いや20倍になるってのか!?」
「計算してみろよ、3000万くらいにゃなるぜ」
「……うっひょー」
欲にまみれた男たちの妄想は止まらない。そして線の細い、弱気そうな男が物騒なことを言ってのけた。
「3000万もありゃ、もうこんな薄暗いところで人を殺さなくてもいいんだよな……」
「そうだ。今、王女様を手放してチャンスを逃し、人を襲い続けるか。
それともたった一回、ここで手を汚すか」
盗賊たちはそこで、しばらく黙る。フォルナは男たちの間に渦巻く狂気を感じ取り、恐る恐る声をかける。
「あ、あの。お金がほしいのなら、差し上げます。国にも盗られたことは言いません。ですから、このまま解放して……」「お嬢さぁん」
盗賊たちは一斉に立ち上がり、フォルナの顔を見つめた。
「俺たちゃだまされてだまされて、色んなもん搾り取られてさ。こんな最下層にまで堕っこちたのよ」
「今さらさぁ、『何もチクらないから』って言われてもさ」
「信じる気にゃ、さーっぱりなれんのよ」
「そう言うことでね。……せめて苦しまないようには、しておいてやるからな」
盗賊たちは一斉にナイフを抜いて、フォルナを囲む。
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「ひっ……!」
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