DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 4 ~シーブズ・エクスプレス~ 6
ウエスタン小説、第6話。
アブダクション。
6.
電話を終え、アデルがテーブルに戻ってくる。
「局長からの伝言だ。
『会計事務所から情報を聞き出したところ、鉄道車輌とその保全部品が盗まれていたことが判明しているそうだ。
その盗まれた車輌と、これまで被害に遭った街で上がった目撃証言にあった車輌の形状とを比較し、一致した。この盗まれた車輌が、一連の犯行に使われているのは間違いないだろう。
となれば、必然的に我々が捜索すべきものは定まってくる。即ち、その盗んだ車輌を保管・整備するための車輌基地だ』……だってさ」
「車輌基地、ねえ」
つぶやいてはみたが、エミルは内心、うんざりしている。
その様子を見て、アデルもうなずく。
「ああ、確かにこれだけじゃ、まだ見付けられるとは言いがたい。
S&R鉄道の路線が使われているのは間違いないだろうが、だからってその路線をつぶさに見て回ってたんじゃ、日が何回暮れるんだって話だ。
ただ、もう一つ手がかりはある」
「って言うと?」
アデルはピン、と人差し指を立て、こう続ける。
「盗まれた車輌はHKP6900型蒸気機関車、ゲージ(両輪の間の長さ。レールの横幅でもある)は3.5フィート。S&R鉄道の他の車輌も、3.5フィートで統一されてる。つまりS&Rの線路は全て、ゲージが3.5フィートで統一されてるってことだ。
ところが近隣で被害に遭ってるダグラス&ドーソン鉄道やインターパシフィック鉄道の線路は、ゲージが3.5じゃないんだ」
「どう言うこと? 別の車輌が使われてるってこと? それとも、S&Rから盗んだ車輌を改造してるってことかしら?」
「前者なら、少なくとも3台の車輌が盗まれていて、それをしまえる規模の車輌基地があるってことになる。後者でも、そんな改造を施すには相当な設備がいる。
となれば、単に屋根が付いてるって程度の倉庫ぐらいじゃ、管理や整備なんかできるわけがない。どっちにしたって、かなり大規模の車輌基地が必要になるだろう。
そして一方で、コソ泥稼業なんかやってる奴が、どこの所属か分からんような胡散臭い車輌を、主要都市にある大型車輌基地に堂々と停めるとは考えにくい。恐らく人目に付かないようなところに停めるだろう。
とは言え、蒸気機関車は修理やら手入れやら、手間がかなりかかる。モノの手に入りにくい山奥なんかに車輌基地を造って、もしも車輌が動かないなんてことになったら、そのまま立ち往生だからな。
それらの情報を全て総合すれば……」
「鉄道は一応通ってるけど、寂れてる。でもその割に、不釣り合いに大きな車輌基地があるような街。そこを探せってわけね」
「そう言うことだ」
サムが持っていた西部の路線図を広げ、3人はそれに該当する街が無いか確かめる。程なくしてサムが、「あっ!」と声を上げた。
「こっ、これ、これじゃないでしょうか!?」
「どこだ?」
「このマーシャルスプリングスと言う街、以前はリーランド鉄道車輌と言う、鉄道車輌を開発・販売していた会社の本拠地だったんですが、その会社が数年前に無くなってまして、でも、会社の設備とか、車輌を造ってた工場とかはそのまま残ってるらしいです」
「鉄道車輌の開発会社か……。なるほど、そう言うところなら駅はなくとも、公の路線につながる線路はあるだろうな。
しかも会社は潰れて工場だけ残ってるってなれば、盗んだ車輌なんかを隠すのにはうってつけだな」
「で、ですよね、ですよね! しかもここ……」
「一連の事件があった場所からは、割りと近いわね。蒸気機関車ならそう時間をかけずに戻れそうね」
「そ、そうなんです! どっ、どうでしょうか!?」
顔を上気させたサムに、エミルとアデルは揃って吹き出した。
「ぷっ……」「あはは……」
「え? え?」
「いや何、お前さん急に、張り切りだしたと思ってな」
「……あ、……は、はい」
一転、顔を真っ赤にしたサムの肩を、エミルがトントンと叩く。
「ま、一番臭いところなのは確かね。行ってみましょ」
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アブダクション。
6.
電話を終え、アデルがテーブルに戻ってくる。
「局長からの伝言だ。
『会計事務所から情報を聞き出したところ、鉄道車輌とその保全部品が盗まれていたことが判明しているそうだ。
その盗まれた車輌と、これまで被害に遭った街で上がった目撃証言にあった車輌の形状とを比較し、一致した。この盗まれた車輌が、一連の犯行に使われているのは間違いないだろう。
となれば、必然的に我々が捜索すべきものは定まってくる。即ち、その盗んだ車輌を保管・整備するための車輌基地だ』……だってさ」
「車輌基地、ねえ」
つぶやいてはみたが、エミルは内心、うんざりしている。
その様子を見て、アデルもうなずく。
「ああ、確かにこれだけじゃ、まだ見付けられるとは言いがたい。
S&R鉄道の路線が使われているのは間違いないだろうが、だからってその路線をつぶさに見て回ってたんじゃ、日が何回暮れるんだって話だ。
ただ、もう一つ手がかりはある」
「って言うと?」
アデルはピン、と人差し指を立て、こう続ける。
「盗まれた車輌はHKP6900型蒸気機関車、ゲージ(両輪の間の長さ。レールの横幅でもある)は3.5フィート。S&R鉄道の他の車輌も、3.5フィートで統一されてる。つまりS&Rの線路は全て、ゲージが3.5フィートで統一されてるってことだ。
ところが近隣で被害に遭ってるダグラス&ドーソン鉄道やインターパシフィック鉄道の線路は、ゲージが3.5じゃないんだ」
「どう言うこと? 別の車輌が使われてるってこと? それとも、S&Rから盗んだ車輌を改造してるってことかしら?」
「前者なら、少なくとも3台の車輌が盗まれていて、それをしまえる規模の車輌基地があるってことになる。後者でも、そんな改造を施すには相当な設備がいる。
となれば、単に屋根が付いてるって程度の倉庫ぐらいじゃ、管理や整備なんかできるわけがない。どっちにしたって、かなり大規模の車輌基地が必要になるだろう。
そして一方で、コソ泥稼業なんかやってる奴が、どこの所属か分からんような胡散臭い車輌を、主要都市にある大型車輌基地に堂々と停めるとは考えにくい。恐らく人目に付かないようなところに停めるだろう。
とは言え、蒸気機関車は修理やら手入れやら、手間がかなりかかる。モノの手に入りにくい山奥なんかに車輌基地を造って、もしも車輌が動かないなんてことになったら、そのまま立ち往生だからな。
それらの情報を全て総合すれば……」
「鉄道は一応通ってるけど、寂れてる。でもその割に、不釣り合いに大きな車輌基地があるような街。そこを探せってわけね」
「そう言うことだ」
サムが持っていた西部の路線図を広げ、3人はそれに該当する街が無いか確かめる。程なくしてサムが、「あっ!」と声を上げた。
「こっ、これ、これじゃないでしょうか!?」
「どこだ?」
「このマーシャルスプリングスと言う街、以前はリーランド鉄道車輌と言う、鉄道車輌を開発・販売していた会社の本拠地だったんですが、その会社が数年前に無くなってまして、でも、会社の設備とか、車輌を造ってた工場とかはそのまま残ってるらしいです」
「鉄道車輌の開発会社か……。なるほど、そう言うところなら駅はなくとも、公の路線につながる線路はあるだろうな。
しかも会社は潰れて工場だけ残ってるってなれば、盗んだ車輌なんかを隠すのにはうってつけだな」
「で、ですよね、ですよね! しかもここ……」
「一連の事件があった場所からは、割りと近いわね。蒸気機関車ならそう時間をかけずに戻れそうね」
「そ、そうなんです! どっ、どうでしょうか!?」
顔を上気させたサムに、エミルとアデルは揃って吹き出した。
「ぷっ……」「あはは……」
「え? え?」
「いや何、お前さん急に、張り切りだしたと思ってな」
「……あ、……は、はい」
一転、顔を真っ赤にしたサムの肩を、エミルがトントンと叩く。
「ま、一番臭いところなのは確かね。行ってみましょ」
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