短編・掌編
リンクまちがい
リンクまちがい
《Kさんまたリンク間違えてますよ。前のタグそのままコピペしたでしょwwww》
「え? ……あ、本当だ」
指摘の通りである。
僕はページの編集画面を開き、リンクの内容を修正した。
「またって言われちゃったなぁ」
僕はそそっかしい。誤字脱字は日常茶飯事だし、忘れ物や落し物もしょっちゅうだ。
それでもどうにか、このサイトは人が来てくれている。自分で言うのも何だが、人気がある方だろう。
念のため、最近更新した他の箇所も点検し、リンクが間違って張られていないか確かめる。
「……大丈夫そうかな」
作業が一段落したので、僕はキッチンに行って水でも飲もうかと、部屋のドアを開けた。
「……んっ?」
目の前で何が起こっているのか、理解できなかった。
寝室兼書斎であるこの部屋と廊下の間にあるドアを開けたのだから、ドアの向こうには廊下があるはずだ。
だけど今、僕の目の前には鬱蒼と茂る森が広がっている。
「……え、……えーと」
くる、と振り返る。そこは僕が今までいた部屋のままだ。
もう一度、振り返る。森だ。
僕は自分の部屋と森とをぐるぐる見返し、やがて叫んだ。
「どっ、どうなってるんだ!?」
言ってから、我ながら何てひねりの無い台詞なんだと思った。
と――森の奥から、何かがやってくる気配がする。
「……!」
頭のなかが半ば真っ白になっていた僕は隠れることもできず、そのまま、その「何か」が来るのを待つ形になる。
やがて木々をかき分けて、見たことのない服、と言うか鎧を着た、金髪で背が高く、ほっそりとした、……そして何より耳が異様に長い、女の人が現れた。
「……!?」
相手と目が会い、彼女はぎょっとした顔をした。どうやら驚いているらしい。
僕も驚いている。まるでファンタジーの世界からそのまま抜け出てきたような女性だ。
いや、少し違う。ドアの向こうが丸ごと、ファンタジーの世界そのままなのだ。
そのまま二人とも、ずっと顔を見合わせていたが――。
「すみませーん!」
どこからか、声がする。当然、僕のものではない。前にいる女性は口を開いていないし、彼女でもなさそうだ。
僕も彼女も、辺りをきょろきょろと伺ったところで、もう一度声が投げかけられた。
「リンク張り間違えたんで修正しまーす。ほんっと、ごめんなさーい!」
次の瞬間、目の前が、と言うよりドアの向こう側が真っ暗になり、そして僕がいつも見る、家の廊下に戻った。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「……森は鬱蒼と茂り、彼女の行く手を延々と遮っている。
それでもここを進まねば、今日のうちには目指す都にたどり着けない。
彼女は若干うんざりとしながらも、木々をかき分け、自らの進む道を切り拓いていく。
と、彼女の目の前に現れたのは――。
<前話>
<次話>」
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「え? ……あ、本当だ」
指摘の通りである。
僕はページの編集画面を開き、リンクの内容を修正した。
「またって言われちゃったなぁ」
僕はそそっかしい。誤字脱字は日常茶飯事だし、忘れ物や落し物もしょっちゅうだ。
それでもどうにか、このサイトは人が来てくれている。自分で言うのも何だが、人気がある方だろう。
念のため、最近更新した他の箇所も点検し、リンクが間違って張られていないか確かめる。
「……大丈夫そうかな」
作業が一段落したので、僕はキッチンに行って水でも飲もうかと、部屋のドアを開けた。
「……んっ?」
目の前で何が起こっているのか、理解できなかった。
寝室兼書斎であるこの部屋と廊下の間にあるドアを開けたのだから、ドアの向こうには廊下があるはずだ。
だけど今、僕の目の前には鬱蒼と茂る森が広がっている。
「……え、……えーと」
くる、と振り返る。そこは僕が今までいた部屋のままだ。
もう一度、振り返る。森だ。
僕は自分の部屋と森とをぐるぐる見返し、やがて叫んだ。
「どっ、どうなってるんだ!?」
言ってから、我ながら何てひねりの無い台詞なんだと思った。
と――森の奥から、何かがやってくる気配がする。
「……!」
頭のなかが半ば真っ白になっていた僕は隠れることもできず、そのまま、その「何か」が来るのを待つ形になる。
やがて木々をかき分けて、見たことのない服、と言うか鎧を着た、金髪で背が高く、ほっそりとした、……そして何より耳が異様に長い、女の人が現れた。
「……!?」
相手と目が会い、彼女はぎょっとした顔をした。どうやら驚いているらしい。
僕も驚いている。まるでファンタジーの世界からそのまま抜け出てきたような女性だ。
いや、少し違う。ドアの向こうが丸ごと、ファンタジーの世界そのままなのだ。
そのまま二人とも、ずっと顔を見合わせていたが――。
「すみませーん!」
どこからか、声がする。当然、僕のものではない。前にいる女性は口を開いていないし、彼女でもなさそうだ。
僕も彼女も、辺りをきょろきょろと伺ったところで、もう一度声が投げかけられた。
「リンク張り間違えたんで修正しまーす。ほんっと、ごめんなさーい!」
次の瞬間、目の前が、と言うよりドアの向こう側が真っ暗になり、そして僕がいつも見る、家の廊下に戻った。
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~ Comment ~
NoTitle
リンク間違いか。。。
確かに。この世界は色々なところでリンクしていて。
それが少しでも間違っていると、混乱しますからね。
空間・・・という概念を使ったズレの考え方ですね。
勉強になります。
確かに。この世界は色々なところでリンクしていて。
それが少しでも間違っていると、混乱しますからね。
空間・・・という概念を使ったズレの考え方ですね。
勉強になります。
NoTitle
残念ながら、彼にも彼女にもそれだけの機転は利かなかったようです。
せめて修正が入るまでに、もう少し間があれば……。
せめて修正が入るまでに、もう少し間があれば……。
NoTitle
惜しい! その一瞬に、腕のデジタル時計とあちらの女性の金貨を交換しておけば丸儲けなのに(笑)
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NoTitle
全く違うものがつながれてしまったら、それが例え「自分の家の玄関を開けたら自分の家のお風呂につながっていた」くらいの小規模なものでも、大混乱するでしょうね。