「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・麒麟抄 11
麒麟の話、第11話。
最も避けるべき、最も望ましい未来。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
11.
見たくないものを、見てしまった。
アオイはボクの、ボクと言う神にとっての、天使だったはずだ。
アオイがこの世に生まれてからずっと、アオイはボクの、第一の使徒だったはずだ。
アオイがボクに歯向かうコトなど、ありえないはずだ。
あってはならないはずだったんだ!
ボクは「見た」。アオイが、ボクに刃を向けている光景を。
勿論――ボクほど未来を、数多ある並行世界を観測し続けてきた者はいないから、ソレは誰よりも良く知っているコトだけど――この未来が絶対に、100%何の紛れも無く起こるとは、断言できない。何らかの偶然やほんの少しの選択、挙動の違いで、起こるはずのものが起こらなくなるコトは十分にある。
そう言うケースは幾度と無く見てきたコトだし、この件だって、その要素は十分に含まれている。だけど「見た」以上、何%か、何十%の確率で起こるコトになる。起こりうる未来の一つとして、ボクの未来視に現れたんだ。
だからボクは、何が何でもこの未来がこの世界において発生・実現させるのを、どんな手を使ってでも阻止しなければならないんだ。
だけど。
絶対に起こってほしくないと思う一方で、この未来視はボクを、何千年かぶりに悦ばせてくれていた。
何故かって? 分からないか?
ボクに対して、アオイが「刃を向けていた」んだよ? 夢や幻ではない、実物の刃をだ。
そう、つまりソレは、今ボクがいる「夢の世界」での出来事じゃない。現実において起こっていたコトだったんだ。
ソコから導き出される答えは、そう、即ち――ボクが現世に蘇っている、と言うコトなんだ!
この未来を「見て」、ボクは一瞬、ほんのちょっと悩んだ。
アオイがボクに歯向かうコトなど、起こってほしくない。戦えば間違いなく、ボクが勝つ。しかしソレは、アオイが死ぬコトとほぼ同義だ。ソレはとてつもなく惜しい。
だけど何故、ボクは彼女を惜しんでいるのか? ソコまで考えたところで、彼女を惜しいと言う気持ちは霧散した。
ボクが惜しいと思うのは、ボクにとっての――そう、「今は」動けないボクにとっての、史上最大にして最良の手駒だからだ。
だけどあの未来では、ボクは蘇っている。つまりアオイの手を借りずとも、自由に世界へ干渉できるようになっている、と言うコトだ。
である以上、アオイに今求めているような利用価値など無いんだ。むしろ敵になると言うのなら、ボクは喜々としてアオイを殺すだろう。
ああ……! 楽しみで仕方がない。
ボクはいよいよ、現世に復活するんだ。
アオイはその贄(にえ)となる。四半世紀にわたって色々と手助けしてくれた彼女だ。ソレに対して少しばかりは、敬意を払ってやろう。
だが同時に、ボクを散々苛立たせてくれた、この上なく鬱陶しい一族の末裔だ。だからアオイと、そしてついでにカズラも。姉妹揃って――ボクの秘義を以って、一欠片残さずこの世から消滅させてやる。
永遠にだ!
@au_ringさんをフォロー
最も避けるべき、最も望ましい未来。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
11.
見たくないものを、見てしまった。
アオイはボクの、ボクと言う神にとっての、天使だったはずだ。
アオイがこの世に生まれてからずっと、アオイはボクの、第一の使徒だったはずだ。
アオイがボクに歯向かうコトなど、ありえないはずだ。
あってはならないはずだったんだ!
ボクは「見た」。アオイが、ボクに刃を向けている光景を。
勿論――ボクほど未来を、数多ある並行世界を観測し続けてきた者はいないから、ソレは誰よりも良く知っているコトだけど――この未来が絶対に、100%何の紛れも無く起こるとは、断言できない。何らかの偶然やほんの少しの選択、挙動の違いで、起こるはずのものが起こらなくなるコトは十分にある。
そう言うケースは幾度と無く見てきたコトだし、この件だって、その要素は十分に含まれている。だけど「見た」以上、何%か、何十%の確率で起こるコトになる。起こりうる未来の一つとして、ボクの未来視に現れたんだ。
だからボクは、何が何でもこの未来がこの世界において発生・実現させるのを、どんな手を使ってでも阻止しなければならないんだ。
だけど。
絶対に起こってほしくないと思う一方で、この未来視はボクを、何千年かぶりに悦ばせてくれていた。
何故かって? 分からないか?
ボクに対して、アオイが「刃を向けていた」んだよ? 夢や幻ではない、実物の刃をだ。
そう、つまりソレは、今ボクがいる「夢の世界」での出来事じゃない。現実において起こっていたコトだったんだ。
ソコから導き出される答えは、そう、即ち――ボクが現世に蘇っている、と言うコトなんだ!
この未来を「見て」、ボクは一瞬、ほんのちょっと悩んだ。
アオイがボクに歯向かうコトなど、起こってほしくない。戦えば間違いなく、ボクが勝つ。しかしソレは、アオイが死ぬコトとほぼ同義だ。ソレはとてつもなく惜しい。
だけど何故、ボクは彼女を惜しんでいるのか? ソコまで考えたところで、彼女を惜しいと言う気持ちは霧散した。
ボクが惜しいと思うのは、ボクにとっての――そう、「今は」動けないボクにとっての、史上最大にして最良の手駒だからだ。
だけどあの未来では、ボクは蘇っている。つまりアオイの手を借りずとも、自由に世界へ干渉できるようになっている、と言うコトだ。
である以上、アオイに今求めているような利用価値など無いんだ。むしろ敵になると言うのなら、ボクは喜々としてアオイを殺すだろう。
ああ……! 楽しみで仕方がない。
ボクはいよいよ、現世に復活するんだ。
アオイはその贄(にえ)となる。四半世紀にわたって色々と手助けしてくれた彼女だ。ソレに対して少しばかりは、敬意を払ってやろう。
だが同時に、ボクを散々苛立たせてくれた、この上なく鬱陶しい一族の末裔だ。だからアオイと、そしてついでにカズラも。姉妹揃って――ボクの秘義を以って、一欠片残さずこの世から消滅させてやる。
永遠にだ!
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~