「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・狼煙抄 3
麒麟を巡る話、第551話。
白んだマロ。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
央中、ゴールドコースト市国、市立刑務所の面会室。
「久しぶりやな、マーク。なんかオトナになったなぁ」
「そりゃ、もう25歳だもの。結婚もしたし、子供も去年生まれたし」
「へぇ、もう嫁さんと子供おんのかー……。絵に描いたような幸せっぷりで、うらやましいわ、ホンマ」
5年ぶりに会ったガラス越しのマロは、ひどく衰えていた。
マークたちを襲った際に傷を負った左目は、今は白く濁っており、失明しているのがはっきりと分かる。髪は半分近く白髪となっており、金火狐一族の遺伝かつ代名詞である金髪に赤メッシュも、ほとんどかすんでしまっている。肌も病的に白く変色しており、マロの全身はほとんど真っ白に見えた。
すっかり脱色してしまったマロの姿に、マークは内心、ひどく衝撃を受けていた。
「見たままや」
マークの内心を察したらしく、マロが自嘲気味にこぼす。
「俺はこの通り、もう燃えカスみたいなもんや。このまま出所したとしても、何もでけへん。
それでもな、……俺は出たいねん。どうしても、や」
「その理由を聞きたいんだけどさ」
どうにか冷静な声色を作り、マークが尋ねる。
「手紙に恋人がどうとかって書いてあったけど、それが理由?」
「察しがええな」
灰のようだったマロのほおに、わずかにだが紅が差す。
「俺とは遠縁なんやけど、一応俺と同じアキュラ家のヤツで、ミランダって言うねん。俺の5つ上で今年32歳。実はバツイチで子供も2人おるけど、ちょっと色々あって、仲良うなってな」
「……ミランダ? ……ん?」
と、マークがポン、と手を打つ。
「もしかして、ミランダ・アキュラ・ゴールドマンさん?」
「え、お前知っとんの? なんで?」
目を丸くしたマロに、マークがまくし立てる。
「そりゃ知ってるさ、外科治療の権威だもの! 僕も研究のために何度か手紙をやり取りしたり、直接会って意見交換したりしたし、……あー、分かった!」
マークは自分の目を指差しつつ、マロに確認する。
「君の目を診に来たのが縁なんだね?」
「せや、ご名答。見ての通り、片っぽ見えんようになってしもてな。刑務所の医療室で手に負えへん、特殊な症状が出とるっちゅうことで彼女に診てもろてたんやけど、その間に話とか色々しとるうちに、お互い好きになってしもてな、……て、話したいんはそこちゃうねん。
まあ、ほんでやな、こんなゴミ以下の俺やけども、どうしても彼女と結婚したいねん。そら釣り合わへんのは百も承知や。それでもミラはええって言うてくれたんや。そう言われたらもう、一緒になりとうてなりとうて、たまらんねや……!」
マロは顔をくしゃくしゃにし、ボタボタと涙を流し始めた。
と、これまでマークの後ろで静観していたルナと一聖、楓が、揃って顔を下に向ける。
(……笑ってるな)
マークは振り向きこそしないものの、漏れ聞こえてくる声でそれを察する。
「笑うなッ!」
と、マロが涙でほおを濡らしたまま、怒鳴り出す。
「お前らみたいに真っ当に生きてる人間にとったら、そらお笑いやろけどな!? 俺は真面目に話しとるんや!」
「あー、ごめんなさいね」
ルナが目を拭いながら、手をぱたぱたと振る。
「でもあたしたちみんな、あなたが思うほどまともな生き方してないわよ。まともなのはマークくらい。……ま、そんなことどうでもいいわね。
で? マークにどうしてほしいのよ? あんたを助ける知恵を授けてほしいって?」
「まあ、そんなところや。
手紙にも書いた通り、ミラを通して財団に、どうにか仮出所でけへんか頼んでみたんや。そしたら『白猫党が依然として央中に居座っとるんがうっとおしいから、元党員のお前がそれをどうにかでけへんか』って返って来たから、とりあえず党について知っとることを全部話したんや。でも……」
「その辺りも手紙で書いてあったわね。大した情報じゃないって言われたんでしょ?」
「せやねん。……え」
マロが憮然とした顔をする。
「マーク、お前こいつらにも読ませたんか?」
「ああ。この人たちも情報を持ってるから。足しになるかと思って」
「……まあ、ええけど」
「それで、ちょっと聞いておきたいんだけど」
ルナが立ち上がり、ガラスの壁に半ばもたれつつ、こう尋ねた。
「どんな情報を渡したの? もしあたしたちが持ってるものと被ってたら意味が無いし、詳しく聞かせてちょうだい」
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白んだマロ。
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央中、ゴールドコースト市国、市立刑務所の面会室。
「久しぶりやな、マーク。なんかオトナになったなぁ」
「そりゃ、もう25歳だもの。結婚もしたし、子供も去年生まれたし」
「へぇ、もう嫁さんと子供おんのかー……。絵に描いたような幸せっぷりで、うらやましいわ、ホンマ」
5年ぶりに会ったガラス越しのマロは、ひどく衰えていた。
マークたちを襲った際に傷を負った左目は、今は白く濁っており、失明しているのがはっきりと分かる。髪は半分近く白髪となっており、金火狐一族の遺伝かつ代名詞である金髪に赤メッシュも、ほとんどかすんでしまっている。肌も病的に白く変色しており、マロの全身はほとんど真っ白に見えた。
すっかり脱色してしまったマロの姿に、マークは内心、ひどく衝撃を受けていた。
「見たままや」
マークの内心を察したらしく、マロが自嘲気味にこぼす。
「俺はこの通り、もう燃えカスみたいなもんや。このまま出所したとしても、何もでけへん。
それでもな、……俺は出たいねん。どうしても、や」
「その理由を聞きたいんだけどさ」
どうにか冷静な声色を作り、マークが尋ねる。
「手紙に恋人がどうとかって書いてあったけど、それが理由?」
「察しがええな」
灰のようだったマロのほおに、わずかにだが紅が差す。
「俺とは遠縁なんやけど、一応俺と同じアキュラ家のヤツで、ミランダって言うねん。俺の5つ上で今年32歳。実はバツイチで子供も2人おるけど、ちょっと色々あって、仲良うなってな」
「……ミランダ? ……ん?」
と、マークがポン、と手を打つ。
「もしかして、ミランダ・アキュラ・ゴールドマンさん?」
「え、お前知っとんの? なんで?」
目を丸くしたマロに、マークがまくし立てる。
「そりゃ知ってるさ、外科治療の権威だもの! 僕も研究のために何度か手紙をやり取りしたり、直接会って意見交換したりしたし、……あー、分かった!」
マークは自分の目を指差しつつ、マロに確認する。
「君の目を診に来たのが縁なんだね?」
「せや、ご名答。見ての通り、片っぽ見えんようになってしもてな。刑務所の医療室で手に負えへん、特殊な症状が出とるっちゅうことで彼女に診てもろてたんやけど、その間に話とか色々しとるうちに、お互い好きになってしもてな、……て、話したいんはそこちゃうねん。
まあ、ほんでやな、こんなゴミ以下の俺やけども、どうしても彼女と結婚したいねん。そら釣り合わへんのは百も承知や。それでもミラはええって言うてくれたんや。そう言われたらもう、一緒になりとうてなりとうて、たまらんねや……!」
マロは顔をくしゃくしゃにし、ボタボタと涙を流し始めた。
と、これまでマークの後ろで静観していたルナと一聖、楓が、揃って顔を下に向ける。
(……笑ってるな)
マークは振り向きこそしないものの、漏れ聞こえてくる声でそれを察する。
「笑うなッ!」
と、マロが涙でほおを濡らしたまま、怒鳴り出す。
「お前らみたいに真っ当に生きてる人間にとったら、そらお笑いやろけどな!? 俺は真面目に話しとるんや!」
「あー、ごめんなさいね」
ルナが目を拭いながら、手をぱたぱたと振る。
「でもあたしたちみんな、あなたが思うほどまともな生き方してないわよ。まともなのはマークくらい。……ま、そんなことどうでもいいわね。
で? マークにどうしてほしいのよ? あんたを助ける知恵を授けてほしいって?」
「まあ、そんなところや。
手紙にも書いた通り、ミラを通して財団に、どうにか仮出所でけへんか頼んでみたんや。そしたら『白猫党が依然として央中に居座っとるんがうっとおしいから、元党員のお前がそれをどうにかでけへんか』って返って来たから、とりあえず党について知っとることを全部話したんや。でも……」
「その辺りも手紙で書いてあったわね。大した情報じゃないって言われたんでしょ?」
「せやねん。……え」
マロが憮然とした顔をする。
「マーク、お前こいつらにも読ませたんか?」
「ああ。この人たちも情報を持ってるから。足しになるかと思って」
「……まあ、ええけど」
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