黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・掴雲抄 1

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    麒麟を巡る話、第556話。
    白日の下に。

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    1.
    「……っ」
     うめいたマロに、取り囲んでいた公安職員が声をかける。
    「どうした?」
    「い、いや、……目が、ずきっと」
    「大丈夫か?」
    「大丈夫です、段々慣れてきました。5年ぶりに、直射日光を浴びたからやと……」
    「そうだったな」
     背後の一人が、マロの背を押す。
    「相手の準備が整ったようです。向かって下さい」
    「はい」
     そのまま囲まれつつ、マロは船から降り、桟橋を進む。
     その中程まで歩いたところで、トラス王国の紋章をスーツの胸に付けた一団が、向かいから近付いてきた。
    「ご苦労様です」
     横一列に並び、敬礼した彼らに対し、職員らも敬礼して返す。
    「それでは身柄を引き渡します」
    「はい」
     マロを縛る縄の一端を渡し、書類にサインして、淡々と手続きが進んでいく。
    「マロ」
     その合間に、小声で彼に声をかける者がいる。
    「……おう」
     マロが目を向けると、そこにはスーツを着たマークの姿があった。
    「約束は守ったよ」
    「……分かっとる」
     マロは周囲に気付かれないくらいに、小さく頭を下げた。
    「ありがとう」

     マロの身柄がトラス王国に渡されてすぐ、マロはマークの監視下に置かれることとなった。と言っても、刑務所と同様の扱いはせず――。
    「はぐ、はぐっ……、う、ふっ、……うまっ」
    「落ち着いて食べていいから」
     マークはまず、マロに十分な食事を取らせた。
    「まずは体を治してもらわないと。いつまでもベッドに張り付いたままで会議に参加してもらうわけにも行かないし」
    「せやな」
    「旅の疲れもあると思うから、最初の会議は3日後にするよ。それまでは休んでていい。
     もしどこか出歩きたいってことであれば、僕かフィオが同行すれば許可してもらえるから」
    「ホンマにええんか?」
    「逃げるかもってこと? まあ、逃げたいなら逃げてもいいけど、多分街を出る前に捕まるよ。この人からはまず、逃げられないし」
     マークは自分の後ろに立っていたルナを示す。
    「まあ、実際にぶん殴られた君は良く分かってるとは思うけど」
    「俺が? ……いつ?」
    「君に殺されかけた時」
    「……あー、なるほどな。あったなぁ、そんなこと」
    「ところでマロ」
     と、話題に登っていたルナが口を開く。
    「ちょっと聞きたいんだけど」
    「いきなり呼び捨てかいな」
    「いいから。あなた、逮捕される時に刺されたって聞いたけど、本当?」
    「ん、……ま、まあ、ホンマや」
     マロが口を濁したところで、ルナの横にいた一聖がとん、とマロの肩に手を置く。
    「ん?」
    「動くな」
    「なんやねん」
    「しゃべんなっつってんだ。死にたくねーだろ」
    「……」
     一聖ににらまれ、マロは目を白黒させる。
    「返事するなよ。うなずきもするな。『はい』なら右目を閉じろ。『いいえ』なら左目だけだ。分かったか?」
     言われるがまま、マロは右目を閉じた。
    「難訓、……じゃ分かんねーな、白いローブを頭からすっぽり羽織った、嫌味な笑い方するいけ好かねークソ女に会ったろ?」
     もう一度、右目を閉じる。
    「刺された後にソイツか、ソイツの従者に会ったか?」
     左目を閉じる。
    「ソイツらのコトを、誰かにしゃべったか?」
     左目を閉じる。
    「分かった。じっとしてろよ」
     一聖はマロの背後に回り込み、その背中をバンバンと強く叩いた。
    「いでえっ!?」
    「解呪した。もう普通にしゃべっていいぜ。
     しかし良く、5年も無事だったな。取り調べ受けたりとか無かったのか?」
     そう尋ねられ、マロは肩をすくめて返す。
    「あいつらすぐ、俺を刑務所に放り込みよったからな。裁判無しで」
    「やったことがやったことだからね。公にしたくなかったんだろうな、きっと」
    「ソレが却って良かったな。もしドコかでアイツらのコトを一言でもしゃべってたら、その瞬間にポン、だ」
    「何がポンて?」
    「お前の頭と心臓だよ」
    「マジで?」
    「オレが嘘ついて、お前の背中ぺたぺた触ると思ってんのか?」
    「……せやな」
     マロは背中をさすりながら、一聖に顔を向ける。
    「でもあんた、解呪したっちゅうたけど、ホンマに? あいつら、生半可な魔術師やなさそうやねんけど」
    「フン、アイツがかけた術を解呪するくらいはワケねーよ。オレを誰だと思ってる?」
     一聖は自信満々に、胸を反らして見せる。
    「知らんがな」
     対するマロは、胡散臭いものを見るような目をしていた。

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    2015.10.07 修正
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    Re: NoTitle 

    大丈夫、意味は把握できてますよ。releaseではなくvomitですね。

    逆に20代前半の頃は自分の限界を弁えておらず、うっかりやってしまった記憶はありますが、
    ここ数年は自分の胃の体積をある程度把握しているので、惑わず適度に食べてますね。

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    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    NoTitle 

    なるほど……、これは失念していました。
    自分の感覚で書いてしまっていましたね。
    未だに食べ放題に入ると、限度一杯食べまくるもんで(;´∀`)

    内容を修正します。
    ご指摘、ありがとうございます。

    NoTitle 

    いやマークくん、そこは「豪華な食事」じゃなくて「栄養のある食事」のほうがいいのではないかと思います。

    こないだ試しに前から気になっていたランチタイム1時間999円のしゃぶしゃぶ食べ放題の店へ入り、肉とご飯をもう食えるだけ食った結果、胃にもたれて腹が苦しくなっていくらか戻してしまった経験からでありますが……マロくん大丈夫かなあ。
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