黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・掴雲抄 2

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    麒麟を巡る話、第557話。
    「克麒麟」とは?

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    2.
     マロが身柄を移されてから3日後、マークは現在自分たち一家が住んでいる屋敷、通称「貧乏神邸」へ皆を集めた。
    「ここなら本当の『フェニックス』の会議に持ってこいだ。色々と対策を施してあるし」
    「本当の、って? ちゅうか『フェニックス』って何や?」
     尋ねたマロに、一聖が答える。
    「表向きには、『フェニックス』は再生医療研究チームだ。既にある程度の実績を上げているし、その方面でも評判がある。君の恋人も知ってるはずだ。
     だけど裏の顔は、とある敵を追うために結成された精鋭部隊。ま、表のトップは僕、裏がルナさんだけどね」
    「精鋭部隊?」
    「そう。白猫党を、と言うよりもその中核にいる葵を止めるためのね」
    「アオイさんを、か……」
     名前を聞いた途端、マロの顔に影が差す。
    「そう言う言い方するっちゅうことは、アオイさんが普通やない、ちゅうことも知っとるんやな」
    「ああ。予知能力者で白猫にとって最大の従者。それが今現在の、僕たちの認識だ」
    「白猫、……って、ホンマにおるんか?」
     尋ね返したマロに、その場にいた全員がうなずく。
    「いるぜ。本当の名前は克麒麟。克大火の五番弟子だ」
    「カツミ……、え、カツミってあのカツミ? 黒炎教団の神様の?」
    「そのカツミだ。ちなみにここにいるカズセちゃんは、その娘さん」
    「は?」
     マロの目が点になる。
    「え……、いや、それは嘘やろ」
    「なんでだよ」
    「俺知ってんもん、テンコちゃんがタイカ・カツミの……」
    「アレはオレの、……ま、妹みたいなもんだ」
    「いもっ、……はあ!?」
     マロはよろよろと、椅子に座り込んだ。
    「お前らなあ……、そんなびっくり情報ばっかり聞かされたら俺、参ってまうわ」
    「こんなことでへたってたら、到底持たないわよ」
     呆れた目を向けつつ、ルナが話を続ける。
    「経緯はその一聖ちゃんが教えてくれるわ。
     どうして、その克麒麟が白猫になったのかをね」
    「あ、そう言や……」
     と、フィオをはじめとして数名が、異口同音に尋ねる。
    「僕もその辺、詳しく聞いてないな」
    「うんうん。あたしもそう言えば知らないなー」
    「右に同じく、ですわね」
    「あれ? 前に話さなかったっけか」
     とぼけた返答をした一聖に、「フェニックス」のほぼ全員が首を横に振った。
    「そっか。話した気になってたぜ。まあいい、そんじゃ今から詳しく説明するぜ。つっても、オレも親父からの又聞きなんだけどさ」



     双月暦――いや、そんなものが制定されるよりも、はるか昔。暦のみならず、世界にあらゆる規律・規範が無く、まだ何もかもが混沌の渦中にあった、無明の頃である。
     克大火にはこの頃、弟子が5名残っていた。欠番となった一番弟子、志半ばで倒れた二番弟子を除く、三番弟子から七番弟子までの5名である。
     しかしこの弟子たちもことごとく、師匠に牙を向き始めたのだ。

     そのうちの一名が、克麒麟である。混沌(カオス)に満ちたその世界において、麒麟は己を神と崇めさせるべく動き出した。あまりにも歪んだ志ではあったが、彼女にはそれを実現させられるだけの力があった。
     しかし師である克大火が、その野望を阻んできた。当然、戦いが起こり――何日もの長い時をひたすら戦い通し、結果、大火が勝利した。
     だが、大火はとどめを刺さなかった。いや、もしかしたら彼女の力の強大さ故に、刺すことができなかったのかも知れない。
     とにかく結果として、大火は彼女を殺さず、自身に魔力を転送させる装置、「システム」の核として彼女をそこに封印した。

     この「システム」により、大火は事実上、無尽蔵に魔力を得ることができていた。
     どれほど高出力の魔術を乱発しようとも、腕や足が千切れ飛ぶような致命傷を負おうとも、瞬時に魔力を回復し、万全の状態を保ち続けられるのだ。だが、あまりにも深手を負ってしまうと、その回復が追いつかなくなるのだ。
     4世紀、西方スカーレットヒルの工場において、大火は己の慢心と不注意から腹部を刺し貫かれ、何十メートルも落下して高温の液体が充満した溶鉱炉へ沈み、全身に大火傷を負った。どれ一つとっても致命傷であり、普通の人間であれば三度は即死するほどの、甚大なダメージである。
     そこでやむなく、大火は麒麟を封じていた「システム」を停止させ、装置の運用に使われていた膨大な魔力を、自身の回復へと転用した。それによって大火は九死に一生を得たものの、「システム」は完全には復旧せず、麒麟の封印に綻びが生じた。

     それが麒麟の精神のみを蘇らせることとなり――彼女は夢の世界に居座り、「白猫」として君臨し始めたのだ。

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    本日10月6日、当ブログは開設7周年を迎えました!

    本当に長いこと続けてるなぁ。
    しかし「双月千年世界」、7年で3作か……。
    このペースだと(現状で考えてる)予定を全うするのに、あと10年はかかりそう。
    それまで自分が生きてるかどうか、すごい不安。

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    2015.10.07 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    死ぬことは負けだとは思っていないんですが、
    死んで更新ができなくなったら困るなー、とは常々思っています。
    一応、書き溜めてはいるので、もしものことがあれば近しい人に更新を委託するかも知れません。

    去年だか一昨年辺りの誕生日の記事で、
    自分が無駄に危険と隣り合わせな気質であることに言及していましたが、
    僕は割りと死にかけてます。
    明日、通勤中に突然クルマが突っ込んでくるかも知れませんし、
    帰り道でビール瓶を持った酔っぱらいが、後ろから襲い掛かってくるかも知れません。
    「もしも」の時には、常に備えていないとならない宿命のようですので……。

    NoTitle 

    人間なんとかなるもんです。戦う前に負けることを考えてどうするんですか。と猪木イズムで(^^)
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