「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・掴雲抄 4
麒麟を巡る話、第559話。
大胆不敵な狼姫。
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4.
「ビッキー!? まさか君、僕たちの話を?」
顔をこわばらせて尋ねたマークに対し、ビッキーは平然と、ふるふると首を振って否定する。
「いいえ、何も」「嘘おっしゃい」
ルナがじろ、とにらみつける。
「扉にひっついて、聞き耳立ててたでしょ? まだ寒いし、扉に吐息がべったり残ってるわよ」
「あら」
ビッキーの視線が扉に向き、すぐにルナの方へと戻る。
「付いてないですよ」
「引っかかったわね」
「あら、やられました」
ビッキーは悪びれる様子もなく、部屋の中に入ってきた。
「ビッキー? 何のつもりだよ?」
マークが苦い顔をするのにもかまわず、ビッキーはひょい、と卓に付く。
「わたしも参加したいです」
「駄目だ」
「あら、お父様みたいなことを仰るんですね。今からそんな態度なさってると、20年後にはきっと顔つきから髪型から、そっくりにおなりでしょうね」
そう言って口を尖らせるビッキーに、マークは閉口する。
「ともかく。色々と秘密を聞いてしまった以上は、わたしも参加します。
それともまさか、このままわたしを放っておいて、わたしに口外される危険をみすみす冒してしまいますか?」
「お前って……」
ふてぶてしいとさえとれるビッキーの態度に、流石の一聖も憮然としていた。
「本っ当、食えねーヤツ」
「褒め言葉として受け取っておきますね、カズセちゃん」
「くっそ。……ああ、もういいや、入れちまうしかねーよ」
「カズセちゃんでどうこうできなきゃ、僕たちにだってどうもこうもできないからね。
でもビッキー、くれぐれも内緒にしててよ、ここでの話は」
「存じておりますわ。
ところで今しがた、アオイさんと言う方の話をされていたようですけれど」
「ああ。まあ、聞いてたから分かると思うけど、僕たちにとって最高の難関、最大の障壁は、アオイ・ハーミットだ。
彼女は言うなれば、敵陣最強の駒だ。いや、完全自律型の最終戦略兵器と言ってもいい。自陣に踏み込まれたら最後、ほぼ確実にどんな布陣も突破され、僕たちのあらゆる目論見は覆されてしまう。
だからこそ僕たちは、彼女の行動を読み切り、それを上回るような作戦を立てなきゃならないんだけど……」
「聞いてた通り、アオイの行動と思考は僕らの理解を超えてる。あいつが次にどんな手を打ってくるかさえ、僕たちにはこれっぽっちも見当が付かないんだよ」
意気消沈気味に説明したマークとフィオに対し、ビッキーは首を傾げる。
「フィオさんは未来人なのでしょう? それなのに分からない、と?」
「え、……ねえ、ビッキー? 君、いつから僕たちの話を盗み聞きしてたんだ?」
「かれこれ3年近くですね」
「さんっ、……ええ!?」
驚くマークに、ビッキーは淡々と説明する。
「カズセちゃんからご教授いただいた魔術とか工学技術とかを応用して、研究所に盗聴器を付けてました」
「マジかよ」
「ちょうど、ルナさんとカズセちゃんと、フィオさんご夫妻が長期にわたってご不在でいらした時がありましたので、その時に仕掛けました。
でもこちらでお話されるとは思っていなかったので、今回は急遽、自分の耳で聞きに参りました」
「全然気付かなかったわね……。パラも気付かなかったの?」
「ええ、全く」
「そんなわけで、わたしも大体の話は聞き及んでいます。
話題を元に戻しますけれど、フィオさんは未来の出来事をある程度存じているはずでは?」
「まあ……、確かに知ってる。でもそれは、『僕が元いた世界』での出来事であって、それがこの世界でも確実に起こるとは限らない。
もし何一つ、起こることが変わらないと言うのなら、君のお兄さんはこの世にいないことになる」
「それは、確かに。としても、そうそう全てががらりと変化しているとも思えません。
フィオさんの世界で猛威を振るっていた白猫党は、わたしたちの世界でも同様に猛威を振るっています。相似点は少なくないでしょう。例えばその侵攻の順番も、同じなのでは?」
「ん……、そうだな、それは確かにそうだ。確かに央北掌握から央中へ侵攻、そして西方、央南へと言う流れは、僕の世界と同じ順番になってる」
「であればかなり高い確率で、その終局も同じ流れをたどるのではないか、と思うのですが」
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「ビッキー!? まさか君、僕たちの話を?」
顔をこわばらせて尋ねたマークに対し、ビッキーは平然と、ふるふると首を振って否定する。
「いいえ、何も」「嘘おっしゃい」
ルナがじろ、とにらみつける。
「扉にひっついて、聞き耳立ててたでしょ? まだ寒いし、扉に吐息がべったり残ってるわよ」
「あら」
ビッキーの視線が扉に向き、すぐにルナの方へと戻る。
「付いてないですよ」
「引っかかったわね」
「あら、やられました」
ビッキーは悪びれる様子もなく、部屋の中に入ってきた。
「ビッキー? 何のつもりだよ?」
マークが苦い顔をするのにもかまわず、ビッキーはひょい、と卓に付く。
「わたしも参加したいです」
「駄目だ」
「あら、お父様みたいなことを仰るんですね。今からそんな態度なさってると、20年後にはきっと顔つきから髪型から、そっくりにおなりでしょうね」
そう言って口を尖らせるビッキーに、マークは閉口する。
「ともかく。色々と秘密を聞いてしまった以上は、わたしも参加します。
それともまさか、このままわたしを放っておいて、わたしに口外される危険をみすみす冒してしまいますか?」
「お前って……」
ふてぶてしいとさえとれるビッキーの態度に、流石の一聖も憮然としていた。
「本っ当、食えねーヤツ」
「褒め言葉として受け取っておきますね、カズセちゃん」
「くっそ。……ああ、もういいや、入れちまうしかねーよ」
「カズセちゃんでどうこうできなきゃ、僕たちにだってどうもこうもできないからね。
でもビッキー、くれぐれも内緒にしててよ、ここでの話は」
「存じておりますわ。
ところで今しがた、アオイさんと言う方の話をされていたようですけれど」
「ああ。まあ、聞いてたから分かると思うけど、僕たちにとって最高の難関、最大の障壁は、アオイ・ハーミットだ。
彼女は言うなれば、敵陣最強の駒だ。いや、完全自律型の最終戦略兵器と言ってもいい。自陣に踏み込まれたら最後、ほぼ確実にどんな布陣も突破され、僕たちのあらゆる目論見は覆されてしまう。
だからこそ僕たちは、彼女の行動を読み切り、それを上回るような作戦を立てなきゃならないんだけど……」
「聞いてた通り、アオイの行動と思考は僕らの理解を超えてる。あいつが次にどんな手を打ってくるかさえ、僕たちにはこれっぽっちも見当が付かないんだよ」
意気消沈気味に説明したマークとフィオに対し、ビッキーは首を傾げる。
「フィオさんは未来人なのでしょう? それなのに分からない、と?」
「え、……ねえ、ビッキー? 君、いつから僕たちの話を盗み聞きしてたんだ?」
「かれこれ3年近くですね」
「さんっ、……ええ!?」
驚くマークに、ビッキーは淡々と説明する。
「カズセちゃんからご教授いただいた魔術とか工学技術とかを応用して、研究所に盗聴器を付けてました」
「マジかよ」
「ちょうど、ルナさんとカズセちゃんと、フィオさんご夫妻が長期にわたってご不在でいらした時がありましたので、その時に仕掛けました。
でもこちらでお話されるとは思っていなかったので、今回は急遽、自分の耳で聞きに参りました」
「全然気付かなかったわね……。パラも気付かなかったの?」
「ええ、全く」
「そんなわけで、わたしも大体の話は聞き及んでいます。
話題を元に戻しますけれど、フィオさんは未来の出来事をある程度存じているはずでは?」
「まあ……、確かに知ってる。でもそれは、『僕が元いた世界』での出来事であって、それがこの世界でも確実に起こるとは限らない。
もし何一つ、起こることが変わらないと言うのなら、君のお兄さんはこの世にいないことになる」
「それは、確かに。としても、そうそう全てががらりと変化しているとも思えません。
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「ん……、そうだな、それは確かにそうだ。確かに央北掌握から央中へ侵攻、そして西方、央南へと言う流れは、僕の世界と同じ順番になってる」
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