「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第4部
蒼天剣・恋慕録 4
晴奈の話、第182話。
お姫様、はじめての野宿。
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4.
晴奈たちとフォルナが合流してから6時間ほどが経過し、流石に夕闇が濃くなってきた。
「コレ以上は進めそうに無いわねー。今日はココで休もっか」
「そうしましょう」
二人の会話を聞いたフォルナは驚いた顔をする。
「え? ここで、と言うと?」
晴奈は地面を指差し、フォルナの問いに答える。
「ここ、だ。野宿になる」
「の、野宿、ですの?」
「ああ」
フォルナはきょろきょろと辺りを見回し、眉を曇らせる。
「あ、あの。外ですわよ」
「そうだが?」
「そ、外でなんて……」「あのねーフォルナちゃん」
小鈴が胸の前で腕を組み、フォルナに言い放つ。
「あたしらの旅は野宿多いよ、徒歩で進んでるから。それが嫌ならー……」「い、いえっ! 大丈夫です!」
フォルナはブンブンと首を振り、慌ただしく袖をまくった。
「えっと、野宿の準備は、何をすればよろしいのかしら!?」
「よーしよし。んじゃ、そこら辺に落ちてる木の枝、拾ってきて。しけってるのはダメよ。乾いてるヤツね」
「はいっ」
小鈴は晴奈にも同じ指示を送る。
「晴奈も枝集めお願い。あたしは寝床確保するから」
「承知しました」
「さ、フォルナ。晴奈と一緒に集めてきて」
「あ……、はい! 頑張ります!」
フォルナは小鈴にぺこりと頭を下げ、晴奈の手を引く。
「さ、コウさま! 一緒に集めましょう!」
「あ、ああ」
晴奈はフォルナに手を引かれるまま、森の奥へと入っていった。
フォルナはずっとニコニコと微笑んだまま、晴奈の側を離れない。
「コウさま、こちらの枝はどうでしょう?」
「ああ、これなら使えそうだな。持っておいてくれ」
「はい」
フォルナはいそいそと枝をまとめる。
「ねえ、コウさま」
「うん?」
「コウさまは、あの、……えっと」
小鈴と付き合っているのか、と聞こうかと考えたが、率直に聞くのは少し怖い。
「どうした?」
「……その、独身、でいらっしゃいますか?」
「は?」
晴奈はけげんな顔をする。
「まあ、独り身だ。想っている相手もおらぬ」
「そうですか、良かった」
「良かった? ……何が?」
「あ、いえ。こちらの話ですわ」
独身と聞き、フォルナは嬉しくなった。
「あ、あのー」
「なんだ?」
「……コウさまって」「すまぬが、フォルナ」
晴奈がうざったそうな顔を向けてくる。
「様付けは勘弁願いたい。どうにも耳がかゆくなる」
そう言って、晴奈は猫耳をカリカリとかいた。
「あ、すみませんコウ……、さ、ん、でよろしいでしょうか」
「単に、コウと呼んでもらって構わぬ」
「あ、はい。……で、では、コウ」
「なんだ?」
「あの、コウはどのような異性が好みでしょうか?」
「はあ?」
晴奈がもう一度、けげんな視線を向けてきた。
「先ほどからお主、妙なことばかり聞くな?」
「あ、すみません」
「……まあ、答えるのにはやぶさかではない。そうだな、どちらかと言うと、粗暴で荒々しい奴は好まぬ」
「では、落ち着いた雰囲気の方が好み、と言うことでしょうか」
「まあ、そうなる」
「……わたくし、淑女として育てられて良かったと、今初めて教育係に感謝いたしましたわ」
「……?」
晴奈とはフォルナの想いに気付くことなく、そしてフォルナは晴奈の性別に気付くことなく、二人は微妙にずれた会話を続けていた。
枝集めも終わり、二人は小鈴のところに戻ってきた。
「おっ、おかえりー」
「ただいま戻りました。これくらいでいいでしょうか?」
「ん、よしよし。んじゃ早速、火を起こそうかなー」
そう言って小鈴は鞄からマッチを取り出した。それを見たフォルナが、不思議そうな顔で質問する。
「コスズさんって、魔術師でしたわよね?」
「ん? そーだけど?」
「魔術で、火を点けたりはいたしませんの?」
小鈴は「あー」と声を出し、額をポリポリかいた。
「あたし、火の魔術は苦手なのよ。得意なのは土と、風の術。後は幻術、そんだけかな」
「そうなのですか。わたくしも少々魔術はたしなんでおりますけれど、あまり詳しくありませんので……」
「まー、魔術は向き不向きがすっごく出るもんね。良かったら、あたしがちょっと教えたげよっか? こーゆー旅路で役に立つヤツとか」
「よろしいのですか?」
小鈴はマッチに火を点けながら、「いーよー」と返した。
「……ん、よし。くすぶってきた。……えいっ」
小鈴が早口で呪文を唱え、種火の点いたかまどに風を送る。空気を送られたかまどは、勢いよく燃え始めた。
「よしよし、コレで野宿の準備は完了っと。んじゃ、ご飯の用意しよっか」
晴奈は「はい」と短く答え、鞄の中から食糧を取り出した。
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晴奈たちとフォルナが合流してから6時間ほどが経過し、流石に夕闇が濃くなってきた。
「コレ以上は進めそうに無いわねー。今日はココで休もっか」
「そうしましょう」
二人の会話を聞いたフォルナは驚いた顔をする。
「え? ここで、と言うと?」
晴奈は地面を指差し、フォルナの問いに答える。
「ここ、だ。野宿になる」
「の、野宿、ですの?」
「ああ」
フォルナはきょろきょろと辺りを見回し、眉を曇らせる。
「あ、あの。外ですわよ」
「そうだが?」
「そ、外でなんて……」「あのねーフォルナちゃん」
小鈴が胸の前で腕を組み、フォルナに言い放つ。
「あたしらの旅は野宿多いよ、徒歩で進んでるから。それが嫌ならー……」「い、いえっ! 大丈夫です!」
フォルナはブンブンと首を振り、慌ただしく袖をまくった。
「えっと、野宿の準備は、何をすればよろしいのかしら!?」
「よーしよし。んじゃ、そこら辺に落ちてる木の枝、拾ってきて。しけってるのはダメよ。乾いてるヤツね」
「はいっ」
小鈴は晴奈にも同じ指示を送る。
「晴奈も枝集めお願い。あたしは寝床確保するから」
「承知しました」
「さ、フォルナ。晴奈と一緒に集めてきて」
「あ……、はい! 頑張ります!」
フォルナは小鈴にぺこりと頭を下げ、晴奈の手を引く。
「さ、コウさま! 一緒に集めましょう!」
「あ、ああ」
晴奈はフォルナに手を引かれるまま、森の奥へと入っていった。
フォルナはずっとニコニコと微笑んだまま、晴奈の側を離れない。
「コウさま、こちらの枝はどうでしょう?」
「ああ、これなら使えそうだな。持っておいてくれ」
「はい」
フォルナはいそいそと枝をまとめる。
「ねえ、コウさま」
「うん?」
「コウさまは、あの、……えっと」
小鈴と付き合っているのか、と聞こうかと考えたが、率直に聞くのは少し怖い。
「どうした?」
「……その、独身、でいらっしゃいますか?」
「は?」
晴奈はけげんな顔をする。
「まあ、独り身だ。想っている相手もおらぬ」
「そうですか、良かった」
「良かった? ……何が?」
「あ、いえ。こちらの話ですわ」
独身と聞き、フォルナは嬉しくなった。
「あ、あのー」
「なんだ?」
「……コウさまって」「すまぬが、フォルナ」
晴奈がうざったそうな顔を向けてくる。
「様付けは勘弁願いたい。どうにも耳がかゆくなる」
そう言って、晴奈は猫耳をカリカリとかいた。
「あ、すみませんコウ……、さ、ん、でよろしいでしょうか」
「単に、コウと呼んでもらって構わぬ」
「あ、はい。……で、では、コウ」
「なんだ?」
「あの、コウはどのような異性が好みでしょうか?」
「はあ?」
晴奈がもう一度、けげんな視線を向けてきた。
「先ほどからお主、妙なことばかり聞くな?」
「あ、すみません」
「……まあ、答えるのにはやぶさかではない。そうだな、どちらかと言うと、粗暴で荒々しい奴は好まぬ」
「では、落ち着いた雰囲気の方が好み、と言うことでしょうか」
「まあ、そうなる」
「……わたくし、淑女として育てられて良かったと、今初めて教育係に感謝いたしましたわ」
「……?」
晴奈とはフォルナの想いに気付くことなく、そしてフォルナは晴奈の性別に気付くことなく、二人は微妙にずれた会話を続けていた。
枝集めも終わり、二人は小鈴のところに戻ってきた。
「おっ、おかえりー」
「ただいま戻りました。これくらいでいいでしょうか?」
「ん、よしよし。んじゃ早速、火を起こそうかなー」
そう言って小鈴は鞄からマッチを取り出した。それを見たフォルナが、不思議そうな顔で質問する。
「コスズさんって、魔術師でしたわよね?」
「ん? そーだけど?」
「魔術で、火を点けたりはいたしませんの?」
小鈴は「あー」と声を出し、額をポリポリかいた。
「あたし、火の魔術は苦手なのよ。得意なのは土と、風の術。後は幻術、そんだけかな」
「そうなのですか。わたくしも少々魔術はたしなんでおりますけれど、あまり詳しくありませんので……」
「まー、魔術は向き不向きがすっごく出るもんね。良かったら、あたしがちょっと教えたげよっか? こーゆー旅路で役に立つヤツとか」
「よろしいのですか?」
小鈴はマッチに火を点けながら、「いーよー」と返した。
「……ん、よし。くすぶってきた。……えいっ」
小鈴が早口で呪文を唱え、種火の点いたかまどに風を送る。空気を送られたかまどは、勢いよく燃え始めた。
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