「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第4部
蒼天剣・恋慕録 5
晴奈の話、第183話。
歌劇団風な夢。
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5.
夕食も終わり、三人はちょっと話を交わしてから、すぐに眠った。
「寝冷えしちゃうといけないから、固まって寝ましょ」
「あ、はい」
「それでは、おやすみなさい」
焚き火に向かって左からフォルナ、晴奈、小鈴の順に座り込み、毛布に包まって目を閉じる。
「……すう」
すぐに小鈴の寝息が聞こえる。
「早いですね。旅慣れているからでしょうか」
「いや、小鈴殿はいつでも寝るのが早い。しかも長くて、寝起きが悪い」
「あら……」
苦笑する晴奈を見て、フォルナもクスクスと笑う。
「明日も多分、私が起こすことになる」
「コウは寝覚めが良いのですか?」
「ああ。睡眠自体も短い方でな、明日の4時には起きているだろう」
「まあ……。わたくし、いつも起きるのは、早くても7時くらいですわ。よく、そんなに早く起きられますわね」
驚くフォルナに、晴奈はまた苦笑しつつ返す。
「13の時から、早寝早起きが習慣だからな。それも修行の一環だった」
「へぇ……。サムライって、色んな修行がありますのね」
「それは少し違うな」
「え?」
晴奈はフォルナに顔を向け、静かに語る。
「私は侍の修行など、したことがない。やったのは、剣士としての修行だ。侍と剣士は似て非なるものだ」
「どう、違いますの?」
「剣士は単に、剣を学んだ者だ。侍と言うのは剣を学んだ上で、高い志と仁徳を得た者を言う、……と、私は思っている。
単に剣術の腕があると言うだけでは、ただの乱暴者。そこに礼儀、仁徳、その他正しいと信じられる、誇ることができる心情が胸のうちに無ければ、侍とは呼べぬ。
私は何度か、確かに剣の腕がある者と戦ったことがある。だが、侍と呼べる者はいなかった」
そうして晴奈は、師匠と央南を旅した時に出会った道場破りの話や、抗黒戦争で戦った「魔剣」の話を聞かせていた。
「……それでな、怪物たちを入れていた檻の間から、突然その剣士が、……おっと」
話の途中で、晴奈はフォルナがすうすうと寝息を立てていることに気付く。フォルナは眠ったまま、晴奈の手を握っていた。
「むにゃ……、コウさま……」
「……おやすみ」
晴奈も目を閉じ、護りは小鈴の杖、魔杖「鈴林」に任せて眠りに就いた。
夢の中。
フォルナは故郷、グラーナ王国の宮殿にいた。
「殿下……」
どこかで自分を呼ぶ声がする。
「陛下がお呼びですぞ、殿下」
「嫌ですわ。また、お小言でしょう?」
フォルナはその声に応じない。
「いいえ殿下」
声は止まらない。
「殿下にお会いしたい方がいると、陛下から託っております」
「わたくしに会いたいと? どなたかしら?」
フォルナは興味を持ち、その声のする方に歩いていく。
「どのような方ですの?」
「猫獣人の方です。央南人のようで……」
「まあ!」
フォルナの脳裏に晴奈の顔が浮かぶ。フォルナは思わずドレスの裾をつまみ、走り出していた(いつの間にか旅装から、おしとやかそうなドレス姿に変わっている)。
「ただいま参りました、父上!」
「おお、フォルナ」
玉座の間に着くと、父と央南風の猫獣人が向かい合っていた。
「コウさま!」
フォルナが呼ぶと、その猫獣人はくるりと振り返った(なぜか振り返った瞬間、騎士風の鎧姿に変わる)。
「ああ、フォルナ!」
猫獣人はフォルナの元に向かい、フォルナをひしっと抱きしめた。
「ああ、コウさま……」
フォルナも猫獣人を抱きしめ、そのままじっとしていた。すると――。
「さあ、婚礼の準備を!」
父が大きな声をあげ、臣下の者に命じる(なぜか天帝教の教会内に場面転換。フォルナは花嫁風のドレスを身にまとい、猫獣人は純白の礼服を着ている)。
「フォルナ殿下、おめでとうございます!」
城の者たちが皆集まり、フォルナと猫獣人を祝う(なぜか教会の建物が、どんどん広くなっている。城内のものすべてを集めれば絶対に入りきらないはずだが、きっちりと収まった)。
「ありがとう、みんな、ありがとう!」
フォルナは(なぜか衣装換えしている。今度は真っ赤で、とても派手なドレスだ)涙を流しながら、祝ってくれた皆にお辞儀をする(またドレスが変わる。今度は優雅な青いレースがついている)。そこでとなりにいた猫獣人が、フォルナの手首をつかんだ。
「え……」
「さあ、フォルナ。夫婦の誓いを……」
そう言って猫獣人(実際の晴奈よりもっと男らしく、それでいて耽美な顔立ちになっている)はフォルナの腰に手を回し、目を閉じて顔を近づけてきた(なぜか、なぜか……、辺りは色とりどりのバラの花で満ちあふれている)。
「は、はい……」
フォルナは顔を真っ赤にして(また衣装が変わる。今度はどこで知ったのか、央南風の振袖をまとっている)、猫獣人に顔を近づけ――。
「わわわわわわ、ちょ、ちょい待ち! フォルナ、起きて起きて起きてーっ!」
「……ふにゃ?」
目の前5センチのところに、小鈴の驚いた顔があった。
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夕食も終わり、三人はちょっと話を交わしてから、すぐに眠った。
「寝冷えしちゃうといけないから、固まって寝ましょ」
「あ、はい」
「それでは、おやすみなさい」
焚き火に向かって左からフォルナ、晴奈、小鈴の順に座り込み、毛布に包まって目を閉じる。
「……すう」
すぐに小鈴の寝息が聞こえる。
「早いですね。旅慣れているからでしょうか」
「いや、小鈴殿はいつでも寝るのが早い。しかも長くて、寝起きが悪い」
「あら……」
苦笑する晴奈を見て、フォルナもクスクスと笑う。
「明日も多分、私が起こすことになる」
「コウは寝覚めが良いのですか?」
「ああ。睡眠自体も短い方でな、明日の4時には起きているだろう」
「まあ……。わたくし、いつも起きるのは、早くても7時くらいですわ。よく、そんなに早く起きられますわね」
驚くフォルナに、晴奈はまた苦笑しつつ返す。
「13の時から、早寝早起きが習慣だからな。それも修行の一環だった」
「へぇ……。サムライって、色んな修行がありますのね」
「それは少し違うな」
「え?」
晴奈はフォルナに顔を向け、静かに語る。
「私は侍の修行など、したことがない。やったのは、剣士としての修行だ。侍と剣士は似て非なるものだ」
「どう、違いますの?」
「剣士は単に、剣を学んだ者だ。侍と言うのは剣を学んだ上で、高い志と仁徳を得た者を言う、……と、私は思っている。
単に剣術の腕があると言うだけでは、ただの乱暴者。そこに礼儀、仁徳、その他正しいと信じられる、誇ることができる心情が胸のうちに無ければ、侍とは呼べぬ。
私は何度か、確かに剣の腕がある者と戦ったことがある。だが、侍と呼べる者はいなかった」
そうして晴奈は、師匠と央南を旅した時に出会った道場破りの話や、抗黒戦争で戦った「魔剣」の話を聞かせていた。
「……それでな、怪物たちを入れていた檻の間から、突然その剣士が、……おっと」
話の途中で、晴奈はフォルナがすうすうと寝息を立てていることに気付く。フォルナは眠ったまま、晴奈の手を握っていた。
「むにゃ……、コウさま……」
「……おやすみ」
晴奈も目を閉じ、護りは小鈴の杖、魔杖「鈴林」に任せて眠りに就いた。
夢の中。
フォルナは故郷、グラーナ王国の宮殿にいた。
「殿下……」
どこかで自分を呼ぶ声がする。
「陛下がお呼びですぞ、殿下」
「嫌ですわ。また、お小言でしょう?」
フォルナはその声に応じない。
「いいえ殿下」
声は止まらない。
「殿下にお会いしたい方がいると、陛下から託っております」
「わたくしに会いたいと? どなたかしら?」
フォルナは興味を持ち、その声のする方に歩いていく。
「どのような方ですの?」
「猫獣人の方です。央南人のようで……」
「まあ!」
フォルナの脳裏に晴奈の顔が浮かぶ。フォルナは思わずドレスの裾をつまみ、走り出していた(いつの間にか旅装から、おしとやかそうなドレス姿に変わっている)。
「ただいま参りました、父上!」
「おお、フォルナ」
玉座の間に着くと、父と央南風の猫獣人が向かい合っていた。
「コウさま!」
フォルナが呼ぶと、その猫獣人はくるりと振り返った(なぜか振り返った瞬間、騎士風の鎧姿に変わる)。
「ああ、フォルナ!」
猫獣人はフォルナの元に向かい、フォルナをひしっと抱きしめた。
「ああ、コウさま……」
フォルナも猫獣人を抱きしめ、そのままじっとしていた。すると――。
「さあ、婚礼の準備を!」
父が大きな声をあげ、臣下の者に命じる(なぜか天帝教の教会内に場面転換。フォルナは花嫁風のドレスを身にまとい、猫獣人は純白の礼服を着ている)。
「フォルナ殿下、おめでとうございます!」
城の者たちが皆集まり、フォルナと猫獣人を祝う(なぜか教会の建物が、どんどん広くなっている。城内のものすべてを集めれば絶対に入りきらないはずだが、きっちりと収まった)。
「ありがとう、みんな、ありがとう!」
フォルナは(なぜか衣装換えしている。今度は真っ赤で、とても派手なドレスだ)涙を流しながら、祝ってくれた皆にお辞儀をする(またドレスが変わる。今度は優雅な青いレースがついている)。そこでとなりにいた猫獣人が、フォルナの手首をつかんだ。
「え……」
「さあ、フォルナ。夫婦の誓いを……」
そう言って猫獣人(実際の晴奈よりもっと男らしく、それでいて耽美な顔立ちになっている)はフォルナの腰に手を回し、目を閉じて顔を近づけてきた(なぜか、なぜか……、辺りは色とりどりのバラの花で満ちあふれている)。
「は、はい……」
フォルナは顔を真っ赤にして(また衣装が変わる。今度はどこで知ったのか、央南風の振袖をまとっている)、猫獣人に顔を近づけ――。
「わわわわわわ、ちょ、ちょい待ち! フォルナ、起きて起きて起きてーっ!」
「……ふにゃ?」
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