「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・上弦抄 3
麒麟を巡る話、第572話。
ワガママあしらい。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「研究員になりたいって?」
場所をフィオたちの家の居間に移し、ビッキーはルナに自分の希望を伝えた。
「ええ。必ずご期待に添えると思いますが」
「うーん」
ルナは短くうなり、こう尋ねる。
「ウチの目的、知ってて言ってる?」
「どっちのことでしょう?」
「オモテ」
「再生医療ですね」
「あなたの得意分野と違わない? 電気工学畑でしょ、あなた」
「今はそうですね」
「……どう言う意味に取ったらいいのかしら? 入ってからあなたの得意分野を変えるってこと? それとも入ってから、あなたの得意分野に合わさせるってこと?」
「どちらでもございません。再生医療研究に加え、いずれ電気工学研究もするようになる気がいたしましたので」
「マークの『作戦』のことを言ってるの?」
「兄の性格上、今回の作戦のためだけに『あれ』を作るとは思えませんもの」
「って言うか、むしろあなたが作戦終了後、あれを使いたいって気がするけどね」
「そう取っていただいても結構です。
どちらにせよ、わたしが参加する余地は今、ありそうですので」
そう返され、ルナは口をへの字に曲げた。
「あんた本当に図々しいわね。ワガママっぷりが度を越してるわ」
「よく言われます。直す気はございませんけれど」
この返答に、ルナは憮然とした顔をしつつ、ぼそっとつぶやく。
「……プレタの娘じゃなかったら引っぱたいてやりたいわ、マジ」
「はい?」
「何でもないわよ。……ま、現時点での結論としては、駄目ね。マークの言った通りのこともあるし、今のウチは再生医療研究一本に絞ってるもの」
「じゃあ、一旦引き下がります」
「じゃあって何よ」
「医療研究を学んでからまた、お願いしたいと思います」
「あんたねぇ……」
ルナは呆れた顔をしつつ、こう尋ねた。
「なんでそこまでして『フェニックス』に入りたいのよ? 自分で電気工学の研究室造ればいいじゃない」
「楽しそうですもの。カズセちゃんもいらっしゃいますし、フィオさんたちやカズラさんたちも入り浸ってますし」
「ウチはラウンジじゃないっての。……まあ、そう言うことであれば、もう入所許可証は発行してるんだし、気にせず入ってきていいわよ」
「でも……」
「あれを使いたいって言うなら、作戦完了してあれが必要無くなり次第、勝手に使っていいから。
後は他の研究員と研究の邪魔しなきゃ、大体何してもいいわよ」
「はあ」
一応の許可は出たものの、完全に自分の要求通りにはならなかったため、ビッキーはなんとなく程度の不満を感じていた。
「なんだか除け者にされてるみたいです」
「まーまー」
ビッキーは話し相手に葛を伴い、喫茶店に場所を移していた。
「今、色々大変じゃん? 大仕掛けの真っ最中なワケだしー」
「それはそうなのですけれど、だからこそわたしは、積極的に兄やルナさんを助けたいと思っておりますのに」
「仕方ないって。正直、あたしも今、ヒマだもん。『あなたが動くのはもっと後』って言われてるしー」
「それはカズラさんが『実働部隊』だからでしょう? わたしは頭脳面での助力しかできませんし」
「でもさー、実際ビッキーちゃんはお兄さんのコト結構、助けてると思うよー?」
葛にそう返され、ビッキーは首を傾げる。
「そうでしょうか?」
「うんうん。色々差し入れ持って行ったりしてるしー、『フェニックス』の怪しいトコをごまかしたりしてるし」
「その程度では……」
「もぉ。そんな風に言わないでほしいなー。あたしとかからしたら、特に何も助けてないワケだしさー。
自分では『大したコトしてない』って思っててもー、他の人から見たら『すっごく助かってる』ってコト、結構あるんだしー」
「……そうですね、そう言うこともあるかも知れませんね」
「だからさー、今はあの人たちが『助かる』って思ってくれるコトをやるのが一番なんじゃないかなー?」
「そうかも知れません。でも……」
「そんなに手伝いたいって言うならさー、あの子に相談してみたら?」
「あの子?」
「カズセちゃん。案外『じゃコレやってくんね?』みたいに返ってくるかも知れないよー?」
「……なるほど。一考の価値はございますね」
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「研究員になりたいって?」
場所をフィオたちの家の居間に移し、ビッキーはルナに自分の希望を伝えた。
「ええ。必ずご期待に添えると思いますが」
「うーん」
ルナは短くうなり、こう尋ねる。
「ウチの目的、知ってて言ってる?」
「どっちのことでしょう?」
「オモテ」
「再生医療ですね」
「あなたの得意分野と違わない? 電気工学畑でしょ、あなた」
「今はそうですね」
「……どう言う意味に取ったらいいのかしら? 入ってからあなたの得意分野を変えるってこと? それとも入ってから、あなたの得意分野に合わさせるってこと?」
「どちらでもございません。再生医療研究に加え、いずれ電気工学研究もするようになる気がいたしましたので」
「マークの『作戦』のことを言ってるの?」
「兄の性格上、今回の作戦のためだけに『あれ』を作るとは思えませんもの」
「って言うか、むしろあなたが作戦終了後、あれを使いたいって気がするけどね」
「そう取っていただいても結構です。
どちらにせよ、わたしが参加する余地は今、ありそうですので」
そう返され、ルナは口をへの字に曲げた。
「あんた本当に図々しいわね。ワガママっぷりが度を越してるわ」
「よく言われます。直す気はございませんけれど」
この返答に、ルナは憮然とした顔をしつつ、ぼそっとつぶやく。
「……プレタの娘じゃなかったら引っぱたいてやりたいわ、マジ」
「はい?」
「何でもないわよ。……ま、現時点での結論としては、駄目ね。マークの言った通りのこともあるし、今のウチは再生医療研究一本に絞ってるもの」
「じゃあ、一旦引き下がります」
「じゃあって何よ」
「医療研究を学んでからまた、お願いしたいと思います」
「あんたねぇ……」
ルナは呆れた顔をしつつ、こう尋ねた。
「なんでそこまでして『フェニックス』に入りたいのよ? 自分で電気工学の研究室造ればいいじゃない」
「楽しそうですもの。カズセちゃんもいらっしゃいますし、フィオさんたちやカズラさんたちも入り浸ってますし」
「ウチはラウンジじゃないっての。……まあ、そう言うことであれば、もう入所許可証は発行してるんだし、気にせず入ってきていいわよ」
「でも……」
「あれを使いたいって言うなら、作戦完了してあれが必要無くなり次第、勝手に使っていいから。
後は他の研究員と研究の邪魔しなきゃ、大体何してもいいわよ」
「はあ」
一応の許可は出たものの、完全に自分の要求通りにはならなかったため、ビッキーはなんとなく程度の不満を感じていた。
「なんだか除け者にされてるみたいです」
「まーまー」
ビッキーは話し相手に葛を伴い、喫茶店に場所を移していた。
「今、色々大変じゃん? 大仕掛けの真っ最中なワケだしー」
「それはそうなのですけれど、だからこそわたしは、積極的に兄やルナさんを助けたいと思っておりますのに」
「仕方ないって。正直、あたしも今、ヒマだもん。『あなたが動くのはもっと後』って言われてるしー」
「それはカズラさんが『実働部隊』だからでしょう? わたしは頭脳面での助力しかできませんし」
「でもさー、実際ビッキーちゃんはお兄さんのコト結構、助けてると思うよー?」
葛にそう返され、ビッキーは首を傾げる。
「そうでしょうか?」
「うんうん。色々差し入れ持って行ったりしてるしー、『フェニックス』の怪しいトコをごまかしたりしてるし」
「その程度では……」
「もぉ。そんな風に言わないでほしいなー。あたしとかからしたら、特に何も助けてないワケだしさー。
自分では『大したコトしてない』って思っててもー、他の人から見たら『すっごく助かってる』ってコト、結構あるんだしー」
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「だからさー、今はあの人たちが『助かる』って思ってくれるコトをやるのが一番なんじゃないかなー?」
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