黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・上弦抄 4

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    麒麟を巡る話、第573話。
    カミナリ。

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    4.
     他の研究員と同様に、一聖は王国の住宅街から通勤している。
     と言っても、2年前までは集合住宅に住んでいたのだが、大火と渾沌が王国に来て以降は一軒家に居を移し、彼らと共に暮らしていた。
    「んー」
     ビッキーからの相談を受け、彼女は腕を組んでうなる。
    「つってもなー、特にねーんだよな、今」
    「本当に、何もございません?」
    「いや、でもマジでさ、研究所のヤツらをごまかしてくれるだけでもありがたいってのは事実だぜ? マークは『アレ』に集中しなきゃならねーし、オレもルナも八方飛び回ってる状態だし。
     ソレにさ、……まー、いい機会だから一度言っとくか」
    「何をでしょう?」
     不満気な顔でそう尋ねたビッキーに、一聖は冷たい視線を向けた。
    「お前さん、『研究所に入りたい』とか『オレたちの助けになりたい』っつってたけど、実際のトコ、本心は違うよな?」
    「え」
    「ズバッと言うがお前さん、単純に自分が目立ちたいだけだろ。『みんなが活躍し、成功できたのは自分のおかげだ』って吹聴したいんだ」
    「い、いえ、そんなことはございませ……」「ございますわ、だ」
     チョコレートミルクを片手に持ち、一聖は左手でビシ、とビッキーの鼻先を指す。
    「オレが何年、お前さんのセンセーやってると思ってる? んなコトくらい、嫌でも気付くっての。
     コレを言っちまうとお前さんがプーっとむくれるだろうってコトは予測済みだが、あえて言う。お前さん、本っ当にワガママで図々しくて自分勝手だぜ?
     その素振りときたらいかにも世間知らずの、いいや、世間をなめてるお嬢様、『お姫様』だ」
    「……っ」
     一聖の言った通り、ビッキーはぷく、とほおを膨らませるが、一聖は構わず指摘を続ける。
    「口じゃ『王族なんて下らない』みたいなコトをほざいてるが、やってるコトはまんま、バカ丸出しの王侯貴族サマじゃねーか。
     自分の思い通りにならなきゃプンスカ怒って、何が何でも押し通そうとわめき散らす。なったらなったですぐ飽きて、また次のワガママを通そうとわめく。ソレは正に、あの腐れ外道の白猫党どもが打倒しろとほざく、『腐敗した王侯貴族』のモデルケースそのまんまだぜ、今のお前はよぉ?
     お前がこのまま次の王様にでもなっちまったら、3ヶ月と経たずに国は大混乱になるし、そうなりゃ白猫党の思う壺、気付いた時にゃあいつらの軍門に下ってるってワケだ。
     こりゃ『貧乏神邸』の呪いが大的中、ってコトだな。お前の代でトラス王家はおしまいだ」
    「あなた……ッ」
     ビッキーは顔を真っ赤にし、右手を振り上げる。
     しかしそれより一瞬早く、一聖はチョコレートミルクを机に置き、左手でビッキーの平手をつかみ、さらにもう一方の手が、ビッキーのほおを叩いていた。
    「きゃっ……」
     ビッキーが目を丸くし、自分のほおに手を当てたところで、一聖は元通りにチョコレートミルクを手に取った。
    「今言ったばっかりだぜ、おい?
     お前さんは相手が言うコト聞かなきゃ、なりふり構わずひっぱたくのか? 自分ん家のド真ん中ででけー音出して皆を引っかき回すのか? 電磁加速砲で親の頭フッ飛ばすのか?
     ソレもコレもぜーんぶ、お前のワガママから来る話じゃねーか。まず第一にソコ直さなきゃ、お前さんにゃ何にもさせられねーよ。マークだってルナだって他の皆だってな、自分の事情で動いてやしねーんだ。
     オレからルナとマークに言っとく。お前が自分のワガママを直さない限り、絶対に絶対、研究所にゃ一歩たりとも入れないようにしろって、な」
    「うー……ぐすっ……」
     散々に叱咤され、ビッキーは顔を伏せ、しくしくと泣き出してしまった。

     このやり取りを遠目に眺めていた葛と渾沌は、こそこそと耳打ちし合っていた。
    「きっついねー、カズセちゃん」
    「でもみんなが言って欲しかったことでしょ? マークやご両親も手を焼いてたみたいだし」
    「そーかなー」
    「少なくとも今回のこれで、ちょっとは反省したでしょ」
    「ま、多分ねー」
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