黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・上弦抄 6

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    麒麟を巡る話、第575話。
    Why done it?

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    6.
     葛とビッキーが帰った後で、一聖はマークとルナ、そしてフィオ夫妻を呼び寄せた。
    「確認したいコトがあるんだ」
    「って言うと?」
     首を傾げるルナに答えず、一聖はフィオに顔を向けた。
    「フィオ、お前さんが元いた世界じゃ、ビッキーが『コンチネンタル』を主導したっつってたな?」
    「ああ。577年に第3代国王に即位。その1年後に諸外国と連携を取り、さらにその翌年、『コンチネンタル』を発動した」
    「って話だったな。だが今日、ちょこっと気になったコトがあってな」
     一聖はビッキーが自分のところにも押しかけ、それを説教して帰した話を聞かせた。
    「結局、アイツはワガママなんだ。自分優位、自分中心、自分が輝いてなきゃ絶対ヤだってタイプだ」
    「まあ……、確かに」
     これを聞き、マークは苦い顔をする。
    「あの子はそう言うところがある。麦菓子事件も半分以上、周りを驚かして注目を集めたかったのが狙いだったんだろうし」
    「ソコでだ。そう言う自己中お姫サマが『フィオの世界』でどうして、『コンチネンタル』なんて面倒臭い大仕掛けをやったのか? ソレが気になるんだ」
    「何でって……、その話の流れで言ったら、目立ちたいからじゃ?」
     そう答えたフィオに、一聖はチッチッと人差し指を振って返す。
    「目立ちたいだけで、全世界規模の政争に首を突っ込むか?
     相手は世界最強かつ最悪と目される大軍勢だぜ? 下手打ったらどうなるか、予想できないワケでもないだろ?」
    「まあ、そう言われたら確かに。実際、『コンチネンタル』が失敗した後すぐに、彼女は一族もろともアオイに処刑されたらしいし」
    「実際にやる前から、誰だってそうなるだろうってくらいの想像は付くはずだ。だから――ドレほど目立ちたがりだからっつったって、ソレだけじゃ――そんなコトに首を突っ込むワケがねーんだ。
     よっぽど勝てるって目算があるか、ソレともそう吹き込まれてなきゃ、な」
    「どう言う意味?」
     尋ねたルナに、一聖は一瞬、部屋の端にいた渾沌に視線を向ける。
     渾沌が無言でうなずいたのを確認し、一聖はルナの猫耳に、ぼそ、とつぶやいた。
    「え? ……まさか!」
    「いいや、『アイツ』ならそう言う政争に嬉々として首を突っ込むし、使える『駒』がいるとなれば、なんだって使う。相手が王様だろうが将軍だろうが、オレの親父だろうが、な。
     ソレに、アイツが出張ってくる理由もちゃんとある。パラの姉ちゃんの話みてーに、どこかの国を操って滅亡させるなり成長させるなりすれば、カネが動く。とてつもない額のカネが、な。恐らく『コンチネンタル』が進行する裏で、アイツはソレを目論んでたはずだ。
     フィオ、お前さんが経済に詳しくないコトは承知だが、ソレでもそーゆー系のきな臭い話を聞いたコトは無いか?」
    「うーん……、母さんからは聞いてないけど、でも、新聞でそれっぽいのは読んだかも。白猫党のクラムとか、彼らが発行した公債とかが暴騰したって言うのは、チラっと見た記憶がある」
    「だろうな。オレもソコまで経済に明るくはないが、ある程度の流れは予想が付く。
     まず『コンチネンタル』で白猫党が揺らげば、ヤツらが発行したカネや手形の価値が大幅に落ち込むのは間違い無いだろう。
     ソコで『アイツ』が公債やら何やらをド安値で集め、その上で葵に戦況を盛り返させれば、とんでもない額の大儲けができるってワケだ。
     いかにも『アイツ』がやりそうな、薄汚い金儲けだ」
     一聖は立ち上がり、その場にいた全員を見渡した。
    「既に親父にも、この予想は伝えてる。向こうも『可能性としては十分ありうる、な』つってた。
     つーワケで、オレたちの作戦にはもう一つ、懸念すべき要素が生じた。『アイツ』を絶対に、この作戦に介入させるなってコトだ。
     味方なんてもっての外だ。『アイツ』はソレこそ、自分のコト以外は目に入らない、究極の自己中悪魔だ。引き入れたが最後、敵味方の区別無く皆殺しにされたっておかしくない。
     一方、『アイツ』が葵に加担するようなコトがあれば、オレたちにとっては相当、不利になる。下手すりゃ作戦の失敗、フィオの世界の二の舞になっちまう可能性もありうる。
     敵陣営にも味方陣営にも、絶対に『アイツ』が関わらないように、目を見張れ」
    「ええ、了解したわ」
    「分かった。最大限、気を付ける」
    「何か異常があれば、逐一報告するよ」
     うなずいたルナとフィオ、マークに対し、パラは青い顔で黙り込んでいる。
    「……」
     それを見たルナが、とん、と彼女の肩に手を置いた。
    「パラ。あなたは気にしないでいいわ。今回の件から、手を引いててもいいのよ」
    「……いえ」
     パラは顔をこわばらせたまま、強い声でこう返した。
    「我が主、いいえ、わたくしの母はルナ・フラウスただ一人です。それ以外に母や主を名乗る者がいたとしても、『人間の』わたくしとは何の関わりもありません。
     わたくしは、断固として戦います」
    「……そう」
     ルナはそれ以上何も言わず、ぎゅっとパラの手を握った。

    白猫夢・上弦抄 終
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