「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・偽計抄 2
麒麟を巡る話、第577話。
レジスタンス。
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2.
シエナが会議室に戻るなり、マロがニヤニヤと笑いながら声をかけてきた。
「用事、済みました? えらい音立ててはりましたけど」
「ええ。それじゃ、交渉を始めましょうか」
シエナはマロたちの向かいに座り、話を切り出した。
「あなたの話によれば、今回の電波ジャック犯の素性と居場所を知っている、とのことだったわね」
「ええ」
「ソレを教えてくれるかしら?」
「条件の話は?」
小馬鹿にした口ぶりで、マロがそう返す。
「俺に、白猫党における相応の地位をくれるっちゅう話はどうなりました?」
「幹部陣で協議した結果、党員管理部の央中方面顧問職を用意するコトでまとまったわ。ソレならどう?」
「どう、ちゅうても何とも言われませんわ。その顧問だか何だかは、党の中で何するとこです? それと報酬は?」
「当管理本部は統治下にある地域に対し、適切かつ相応した社会を提示および提供し、ソレにそって適切に指示・指導していくコトを職務としてる。でも万全にこなすには、その地域に対して十分な理解が無ければ難しいわ。
ソコであなたには顧問として、央中において我々がどのように指導すればいいか、情報を与えてもらおうと考えてるわ。
報酬については、年俸1千万クラムでどうかしら?」
「なかなか破格やないですか。そんなにええんですか?」
「無論、この額に見合う働きができないなら、どんどん下げるつもりではあるわ。以前にアンタがいた時みたいにね。
ソレで、どうなの? この条件を呑むの?」
「まあ、ええでしょ、異存なしですわ」
鷹揚にうなずいて見せたマロを見て、シエナの顔にまた、険が差す。
「じゃあいい加減、教えなさいよ。ジャック犯のコトを」
「分かりました、分かりました。
ほな、まずは首謀者の名前と種族から。名前はアレックス・トポリーノ。兎獣人の女です」
「トポリーノって、あのトポリーノ?」
「そのトポリーノですわ。詳しく言うたら金火狐商会の技術研究部主任、ノイン・トポリーノの従姪ですな。と同時に優れた技術者でもあり、俺たちの後輩――天狐ゼミの卒業生でもあります。テンコちゃんが関係しとるっちゅうてたんは、そこですわ。
彼女は現在、白猫党に対するレジスタンスみたいなことをしとるらしくて、電波ジャックはその一環ですわ」
「ちょっと待って。電波ジャックをしてる、と言うか、ラジオに出てるのは『Mr.コンチネンタル』と名乗る男性のはずだけど?」
「それは彼女の部下の一人ですわ。首謀者やっちゅう人間がそんな簡単に、のこのこ人前に出たり声を聞かせたりはせえへんですやろ?」
「そう、……ね。一理あるわね」
「ま、トポリーノ家は金火狐を支える技術者一族ですからな。白猫党の持っとるのんと同水準の技術を、彼らも持っとるわけです。総裁お得意の、通信技術に関しても。
その技術で白猫党にちょっかい出しとるわけですけども、それは同時に、金火狐財団にとってもあんまりよろしくないことになっとるんですわ。
そう、『ラジオ電波を勝手に流しとる』っちゅうその行為が、財団が持っとる計画にとっても邪魔なんですわ」
「なるほど。金火狐もいずれ、ラジオ事業に手を出そうとしてるってワケね」
「ご明察です。実際、今は下準備を整えとるところなんですけども、試験電波を放射しようにも、アレックスがびゅんびゅん妨害電波を出しまくってますからな。金火狐にとっても、邪魔でしゃあないんですわ。
かと言って、財団に軍事力はありまへん。わざわざ自国領外に出てアレックスを拿捕でけるような戦力は、あらへんのですわ」
「だからアタシたちに協力を要請、……ってトコかしら」
「そうです。で、どうですやろ? お願いでけますか?」
尋ねたマロに、シエナは冷たい視線を向けてきた。
「……」
「何です?」
「妙よね」
「へっ?」
シエナのその一言に、それまで斜に構えていたマロから、慌てたような声が漏れた。
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シエナが会議室に戻るなり、マロがニヤニヤと笑いながら声をかけてきた。
「用事、済みました? えらい音立ててはりましたけど」
「ええ。それじゃ、交渉を始めましょうか」
シエナはマロたちの向かいに座り、話を切り出した。
「あなたの話によれば、今回の電波ジャック犯の素性と居場所を知っている、とのことだったわね」
「ええ」
「ソレを教えてくれるかしら?」
「条件の話は?」
小馬鹿にした口ぶりで、マロがそう返す。
「俺に、白猫党における相応の地位をくれるっちゅう話はどうなりました?」
「幹部陣で協議した結果、党員管理部の央中方面顧問職を用意するコトでまとまったわ。ソレならどう?」
「どう、ちゅうても何とも言われませんわ。その顧問だか何だかは、党の中で何するとこです? それと報酬は?」
「当管理本部は統治下にある地域に対し、適切かつ相応した社会を提示および提供し、ソレにそって適切に指示・指導していくコトを職務としてる。でも万全にこなすには、その地域に対して十分な理解が無ければ難しいわ。
ソコであなたには顧問として、央中において我々がどのように指導すればいいか、情報を与えてもらおうと考えてるわ。
報酬については、年俸1千万クラムでどうかしら?」
「なかなか破格やないですか。そんなにええんですか?」
「無論、この額に見合う働きができないなら、どんどん下げるつもりではあるわ。以前にアンタがいた時みたいにね。
ソレで、どうなの? この条件を呑むの?」
「まあ、ええでしょ、異存なしですわ」
鷹揚にうなずいて見せたマロを見て、シエナの顔にまた、険が差す。
「じゃあいい加減、教えなさいよ。ジャック犯のコトを」
「分かりました、分かりました。
ほな、まずは首謀者の名前と種族から。名前はアレックス・トポリーノ。兎獣人の女です」
「トポリーノって、あのトポリーノ?」
「そのトポリーノですわ。詳しく言うたら金火狐商会の技術研究部主任、ノイン・トポリーノの従姪ですな。と同時に優れた技術者でもあり、俺たちの後輩――天狐ゼミの卒業生でもあります。テンコちゃんが関係しとるっちゅうてたんは、そこですわ。
彼女は現在、白猫党に対するレジスタンスみたいなことをしとるらしくて、電波ジャックはその一環ですわ」
「ちょっと待って。電波ジャックをしてる、と言うか、ラジオに出てるのは『Mr.コンチネンタル』と名乗る男性のはずだけど?」
「それは彼女の部下の一人ですわ。首謀者やっちゅう人間がそんな簡単に、のこのこ人前に出たり声を聞かせたりはせえへんですやろ?」
「そう、……ね。一理あるわね」
「ま、トポリーノ家は金火狐を支える技術者一族ですからな。白猫党の持っとるのんと同水準の技術を、彼らも持っとるわけです。総裁お得意の、通信技術に関しても。
その技術で白猫党にちょっかい出しとるわけですけども、それは同時に、金火狐財団にとってもあんまりよろしくないことになっとるんですわ。
そう、『ラジオ電波を勝手に流しとる』っちゅうその行為が、財団が持っとる計画にとっても邪魔なんですわ」
「なるほど。金火狐もいずれ、ラジオ事業に手を出そうとしてるってワケね」
「ご明察です。実際、今は下準備を整えとるところなんですけども、試験電波を放射しようにも、アレックスがびゅんびゅん妨害電波を出しまくってますからな。金火狐にとっても、邪魔でしゃあないんですわ。
かと言って、財団に軍事力はありまへん。わざわざ自国領外に出てアレックスを拿捕でけるような戦力は、あらへんのですわ」
「だからアタシたちに協力を要請、……ってトコかしら」
「そうです。で、どうですやろ? お願いでけますか?」
尋ねたマロに、シエナは冷たい視線を向けてきた。
「……」
「何です?」
「妙よね」
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