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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・偽計抄 3

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    麒麟を巡る話、第578話。
    マロのデタラメ。

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    3.
    「妙て、何がです?」
     尋ねたマロに、シエナは依然として冷たい目を向ける。
    「財団の要求が、あまりにも小さ過ぎるわ。あの業突張りの金火狐なら、もっと明確に、現時点で確実に利益が出るような要求を提示するわよね?
     例えば央中に駐留してる、アタシたち白猫党の撤退とか」
    「いや、それはあんまりにも吊り合わへん要求ですから」
    「だとしても、よ。その要求をコレっぽっちも提示しないなんて、変じゃない? 提示してみれば交渉の余地が生まれるでしょ?」
    「い、いや、まあ、そう言えなくもないですけど」
    「ソレにもう一点。いくら対外戦力を持たない金火狐といえど、そんな内々の揉め事をなんで、央中の人間ですらない、余所者のアタシたちにお願いするのかしら?
     そんなコトをお願いするって言うなら、もっと金火狐に近しい、央中内の国にするのが道理じゃないの?」
    「色々事情が……」
    「その事情って?」
    「そ、それは機密とかありますし、ここでは言われませんわ」
    「機密? 木っ端者のアンタが、どんな機密握ってるって言うのよ?」
    「いや、その、実は知らないって言うか、その」
    「知らないの? 知ってるの? どっちよ? ますます話が怪しいわね。
     何か裏があるんじゃないの? そう、例えばアタシたちが動いてくれなきゃまずい、何かの思惑が」
    「い、いや……、そんな」
    「正直に言いなさいよ。でなきゃただじゃ済まさないわよ? 状況を撹乱しようとしたアンタには、相応の報いを受けてもらう。ココから生きて返さないわよ」
    「待てや」
     と、天狐が立ち上がり、話に割って入る。
    「そんなコト、オレが見過ごすと思うのか?」
    「そうせざるを得なくするわよ。こっちにはアオイがいるってコト、忘れてない?」
    「アイツに何ができるってんだ」
    「あの子は強いわ。あなたよりもね」
    「ケッ、勝手に抜かして……」
     天狐が言い終わらないうちに、その場から弾かれる。
    「おまたせ」
     代わりにその場に立っていたのは、葵だった。

    「ありがと、アオイ。コレで『まともに』話ができるわね」
     壁にめり込んだ天狐を横目に見ながら、シエナが薄く笑う。
    「ぐ……っ、ぬ……」
     壁から抜けだそうとした天狐に葵が近付き、刀を向ける。
    「じっとしてて。動いたら、戦う気があるって見なすよ」
    「オレに勝てると思うのかよ」
    「勝てるよ。テンコちゃんはばーちゃんに勝ったこと、無いでしょ?」
    「は? 何のコトだ?」
     いぶかしむ天狐の目の前で、葵は「晴奈」に姿を変えた。
    「なっ……!?」
    《天狐。これでも勝算があると言うのか?》
    「姉(あね)さんだと!? バカな! んなコトあってたまるか!」
    《これが戯言かどうか、その身で試してみるか?》
     刀を構えた「晴奈」に、天狐は苦々しい顔を向ける。
    「……フン」
     もがくのをやめ、うなだれた天狐を見て、マロはうろたえた様子を見せる。
    「ちょ、テンコちゃん! 話がちゃうやないですか!」
    「うっせぇ。姉さんが相手じゃオレにゃ荷が重すぎるぜ、クソっ」
    「こんな土壇場でそんな、勘弁して下さいって、……う」
     会議室のドアが荒々しく開き、白猫軍の兵たちがなだれ込む。
    「拘束しなさい」
    「はっ」
     兵士たちはシエナの言葉に従い、一斉にマロへと小銃を向けた。

     天狐がどこかに連れて行かれた後、マロも城の地下へと連行され、椅子に縛り付けられた。
    「もう一度言うわ。正直に話しなさい、マロ」
    「な、何するつもりや?」
    「この部屋に来たら、分かるでしょ? あなたも何度か入ったコトがあるはずだけど」
     部屋の壁にはずらりと器具が並び、そのいずれにも血がこびり着いている。
    「俺を拷問して、吐かせようっちゅう肚か」
    「ご名答、よ。
     さあ、早く真実を言いなさい。でなきゃ、まずはアンタのその役に立たない左目から、抉り出すわよ」
     そう言いながら、シエナが手で兵士に指示し、壁にかけられていた金鋏(かなばさみ)を持って来させる。
    「わ、分かった! 言う! 言うって! 言うからんな物騒なもん、俺に近付けんな!」
    「結構」
     シエナはにやあっと笑い、受け取った金鋏を床に投げ捨てた。
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