「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第4部
蒼天剣・恋慕録 6
晴奈の話、184話目。
ようやく気付いたお姫様。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
「ふあ、あー……。ああ、ビックリした」
小鈴はまだ眠たそうにしながら、焚き火を片付けている。
「ごめんなさい、コスズさん」
「まあ、悪気があってやったワケじゃないから、いーけど。ところで、晴奈知らない?」
「コウですか? ……いませんね?」
フォルナの隣で眠っていたはずの晴奈の姿が無い。小鈴は巫女服の袖から懐中時計を取り出し、時刻を確認する。
「今は、6時ちょい前か。んじゃ、朝の修行でもしてるのかな」
「朝からですか?」
目を丸くするフォルナに、小鈴はち、ち、と指を振る。
「それが剣士ってもんよ。休日でも朝と昼、きっちり素振りしてるし」
「へぇ……」
感心しているフォルナに、小鈴はそっと耳打ちしてきた。
「ね、フォルナちゃん」
「はい?」
「アンタ、『麦穂狐』よね?」
小鈴の言葉に、今度は目を丸くする。
「え、えっと」
「アンタが盗賊に捕まってた時にさー」
小鈴は時計を出した袖口から、今度は通帳を取り出す。
「あ、それは……」
「そ、アンタの通帳。あの盗賊たちが3000万なんて言ってたけど、実際の残高は170万弱だったわね。ま、あいつらが変な勘定回してたんだろーけども、それでも普通の小娘が持つ額じゃないわよ、コレは。それに名義が『フォルナ・ブラウンテイル・グラネル』になってるし」
通帳をフォルナに返し、小鈴は話を続ける。
「グラネル家、通称『麦穂狐(ブラウンテイル)』一族。その起源は黒白戦争の英雄、ニコル・ゴールドマン3世の子供たちの造反にさかのぼる。主要産業は小麦を初めとする農業で、央中・央北の小麦市場に強い影響を持つ。
最近は豊作続きなのと、北方との戦争で物価が上がってるコトもあってかなり儲けてるみたいだけど、30年以上続くお家騒動はまだ収まる気配が無い。……で、間違いないかしら?」
「……ええ。概ね、相違ありませんわ」
フォルナは通帳をしまいながら、小鈴に答える。
「現在国王の座に就いている父上は真面目で厳格な方なのですが、先王、つまり私の祖父は非常に好色な方だったそうで、正室、側室合わせて7人の子が生まれました。当然、ここに後継者争いが起こったのですが、その時は何とか長男であり、正室の子だった父上が王位を継ぎました。
問題は、その次。父上ももうお年ですし、過去の後継者争いで対立した方たちはほぼ、自分が王位に就くことを放棄しています。その代わり、子供たちを就かせようとしていまして。各個に資産を蓄えたり、国内の主要産業と手を結んだりと、権益、利権を押さえようと画策しています」
「んー、つまり経済的に優位に立つコトで、王様が崩御した後に起きるであろう後継者争いを有利に進めたい、ってワケ?」
「その通りです。そして現在、傍家のいくつかは我々本家以上の財を蓄えている、と言ううわさも入るようになりまして。自分が亡くなった後の争いに不安を感じた父上は、央中各地の名家と太いパイプをつなぎ、対抗しようとしております」
「あー、そこは聞いたコトあるわね。こないだもネール家の誰かと見合いしたとか、そんな話も聞いたわ。んじゃ、アンタがゴールドコーストにいたのも……」
「ええ、一度お目通りをと言うことで。会ってはみたのですが、あまり品がよろしそうな方には見えなくて」
「アハハ……。んでその帰りに晴奈を見て、惚れちゃったワケね」
フォルナは顔を赤くして、コクリとうなずいた。
「わたくし、本当にあの方のことをお慕いしているのです。あの方と添い遂げられるのならば、家や財産など惜しくはありません」
「そっか……」
小鈴は流石に、心がチクリと痛んだ。
「(これ以上、だましちゃ悪いわよね)あのさ、フォルナちゃん……」
「はい?」
フォルナは顔を上げ、小鈴の目を見た。
そこに晴奈が戻ってきた。やはり朝の日課、素振りを終えたところらしく、髪を解き、手拭で顔を拭いている。
「ただいま戻りました」
「あっ、晴奈」
「え……?」
髪を肩まで垂らした晴奈の姿を見て、流石にフォルナも気付いたらしい。
「あれ、あの、……?」
フォルナは半信半疑の顔で、晴奈に近付く。
「どうした、フォルナ?」
「……嘘でしょう?」
フォルナは愕然とした顔で、晴奈の胸に手を当てた。
「な、何を?」
フォルナの手に鍛えられた筋肉の硬さと、男ではありえない脂肪の軟らかさが伝わる。
「……ッ!」
フォルナは顔を真っ青にして、晴奈の道着を無理矢理はだけさせた。
「わ、わっ!? 何をする!?」
「じょ……、じょ、女性では無いですかッ!」
わずかながらも道着の胸元に見えた谷間を見て、フォルナは硬直した。
「……お主、先ほどから一体何なのだ? わめくわ、剥くわ、……何を考えているのだッ!」
晴奈も顔を真っ赤にしながら、道着を着直す。
「わ、わたくし、何の、ため、に……」
フォルナはそのまま、仰向けに倒れた。
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ようやく気付いたお姫様。
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「ふあ、あー……。ああ、ビックリした」
小鈴はまだ眠たそうにしながら、焚き火を片付けている。
「ごめんなさい、コスズさん」
「まあ、悪気があってやったワケじゃないから、いーけど。ところで、晴奈知らない?」
「コウですか? ……いませんね?」
フォルナの隣で眠っていたはずの晴奈の姿が無い。小鈴は巫女服の袖から懐中時計を取り出し、時刻を確認する。
「今は、6時ちょい前か。んじゃ、朝の修行でもしてるのかな」
「朝からですか?」
目を丸くするフォルナに、小鈴はち、ち、と指を振る。
「それが剣士ってもんよ。休日でも朝と昼、きっちり素振りしてるし」
「へぇ……」
感心しているフォルナに、小鈴はそっと耳打ちしてきた。
「ね、フォルナちゃん」
「はい?」
「アンタ、『麦穂狐』よね?」
小鈴の言葉に、今度は目を丸くする。
「え、えっと」
「アンタが盗賊に捕まってた時にさー」
小鈴は時計を出した袖口から、今度は通帳を取り出す。
「あ、それは……」
「そ、アンタの通帳。あの盗賊たちが3000万なんて言ってたけど、実際の残高は170万弱だったわね。ま、あいつらが変な勘定回してたんだろーけども、それでも普通の小娘が持つ額じゃないわよ、コレは。それに名義が『フォルナ・ブラウンテイル・グラネル』になってるし」
通帳をフォルナに返し、小鈴は話を続ける。
「グラネル家、通称『麦穂狐(ブラウンテイル)』一族。その起源は黒白戦争の英雄、ニコル・ゴールドマン3世の子供たちの造反にさかのぼる。主要産業は小麦を初めとする農業で、央中・央北の小麦市場に強い影響を持つ。
最近は豊作続きなのと、北方との戦争で物価が上がってるコトもあってかなり儲けてるみたいだけど、30年以上続くお家騒動はまだ収まる気配が無い。……で、間違いないかしら?」
「……ええ。概ね、相違ありませんわ」
フォルナは通帳をしまいながら、小鈴に答える。
「現在国王の座に就いている父上は真面目で厳格な方なのですが、先王、つまり私の祖父は非常に好色な方だったそうで、正室、側室合わせて7人の子が生まれました。当然、ここに後継者争いが起こったのですが、その時は何とか長男であり、正室の子だった父上が王位を継ぎました。
問題は、その次。父上ももうお年ですし、過去の後継者争いで対立した方たちはほぼ、自分が王位に就くことを放棄しています。その代わり、子供たちを就かせようとしていまして。各個に資産を蓄えたり、国内の主要産業と手を結んだりと、権益、利権を押さえようと画策しています」
「んー、つまり経済的に優位に立つコトで、王様が崩御した後に起きるであろう後継者争いを有利に進めたい、ってワケ?」
「その通りです。そして現在、傍家のいくつかは我々本家以上の財を蓄えている、と言ううわさも入るようになりまして。自分が亡くなった後の争いに不安を感じた父上は、央中各地の名家と太いパイプをつなぎ、対抗しようとしております」
「あー、そこは聞いたコトあるわね。こないだもネール家の誰かと見合いしたとか、そんな話も聞いたわ。んじゃ、アンタがゴールドコーストにいたのも……」
「ええ、一度お目通りをと言うことで。会ってはみたのですが、あまり品がよろしそうな方には見えなくて」
「アハハ……。んでその帰りに晴奈を見て、惚れちゃったワケね」
フォルナは顔を赤くして、コクリとうなずいた。
「わたくし、本当にあの方のことをお慕いしているのです。あの方と添い遂げられるのならば、家や財産など惜しくはありません」
「そっか……」
小鈴は流石に、心がチクリと痛んだ。
「(これ以上、だましちゃ悪いわよね)あのさ、フォルナちゃん……」
「はい?」
フォルナは顔を上げ、小鈴の目を見た。
そこに晴奈が戻ってきた。やはり朝の日課、素振りを終えたところらしく、髪を解き、手拭で顔を拭いている。
「ただいま戻りました」
「あっ、晴奈」
「え……?」
髪を肩まで垂らした晴奈の姿を見て、流石にフォルナも気付いたらしい。
「あれ、あの、……?」
フォルナは半信半疑の顔で、晴奈に近付く。
「どうした、フォルナ?」
「……嘘でしょう?」
フォルナは愕然とした顔で、晴奈の胸に手を当てた。
「な、何を?」
フォルナの手に鍛えられた筋肉の硬さと、男ではありえない脂肪の軟らかさが伝わる。
「……ッ!」
フォルナは顔を真っ青にして、晴奈の道着を無理矢理はだけさせた。
「わ、わっ!? 何をする!?」
「じょ……、じょ、女性では無いですかッ!」
わずかながらも道着の胸元に見えた谷間を見て、フォルナは硬直した。
「……お主、先ほどから一体何なのだ? わめくわ、剥くわ、……何を考えているのだッ!」
晴奈も顔を真っ赤にしながら、道着を着直す。
「わ、わたくし、何の、ため、に……」
フォルナはそのまま、仰向けに倒れた。
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