「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・偽計抄 4
麒麟を巡る話、第579話。
シエナの尋問。
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4.
「俺にここへ行くよう指示したんは、財団や。それはホンマや。アレックスのことも、大体話した通りや。
ただ、ホンマのことを言うと、アレックスは財団の援助で動いとるんや」
「でしょうね。いくら技術力があっても、一介のレジスタンス如きが党を撹乱できるほどの設備を、自前で整えられるワケがないものね。
じゃあ動機は? アンタが言った話じゃ、財団の利益にならないでしょ?」
「まあ、ラジオ放送しようかっちゅう話はホンマや。でも邪魔に思とるんはアレックスやなくて、白猫党の方や。
いや、ラジオの話を抜きにしても、財団にとったら白猫党が央中に駐留したまんまちゅうこと自体、うっとおしいんや」
「ソレで話を作って、央中に駐留してる兵士をアレックス拿捕のために動かさせようってコト? なるほどね」
シエナはフン、と鼻を鳴らし、マロに蹴りを入れた。
「うげっ!?」
「よくもまあ、あんなチャチな作り話でアタシたちを騙せると思ったもんね? 身の程知りなさいよ、クズ」
「げほっ、げほ……」
椅子に縛り付けられたまま転がされ、マロは顔を真っ青にして咳き込んでいる。
その顔を踏みつけ、シエナは尋問を続けた。
「ソレで? 央中の駐留軍をアレックス拿捕に向かわせてる間に、アンタたちは何するつもりだったの?」
「捜査の過程で、仰山人手が、いるように、工作するつもり、やった。およそ、駐留軍の半数を、要するくらいは。
そんだけ、人が減れば、近隣の国と連携して、襲撃したら、どうにかなるやろ、って」
息を切らしつつも、マロはぺらぺらと答えていく。
「甘く見られたもんね。その程度でどうにかなるワケないでしょ。
ソレで、アレックスってのがいるって話は本当なのね?」
「ホンマや」
「居場所は?」
「央中の……」「あーっと」
シエナはぐりぐりと、マロを踏みつけた足を動かす。
「うっ、あっ、やめ、うっ」
「ココでウソついて翻弄しようとしたって、そうは行かないわよ。本当のコトを言いなさい」
「い、う、って」
「どうだか。アンタはクズだけど、抜け目がない。
仮に、普通にアンタの目論見通り、アタシたちがアレックスのところへ向かったとしても、アレックスの方にもアンタが情報を流して、返り討ちにさせようと画策するでしょうしね。
アンタがもし本当にアレックスの本拠地を教えても、どうせソコは罠だらけでしょ?」
「く……」
「やっぱりそう言う算段だったのね。なら、アンタにはこうしてもらうわ」
依然として拘束されたまま、マロは懐に隠していた通信機を耳に当てられる。
「確認するわよ。この通信機、アレックスのところにつながってるのね?」
「おう」
「いい? 平静を装って伝えるのよ。もしアレックスにこの状況を伝えたり、変なコトを言うようだったら、その瞬間に蜂の巣にするわよ」
「分かっとる」
通信機を握っていた兵士がスイッチを入れ、マロに話すよう促す。
「こちらMA、こちらMA、応答願います」
《……ザ……こちらAX。どうぞ》
女性らしき声が通信機から流れ、マロが話を進める。
「うまく行った。あいつら、俺の話を信じよったで」
《良かった。それで、白猫軍はいつこっちに?》
「それやねんけど、まあなんちゅうか話の都合でな、ある場所でお前と会うっちゅうことになってん」
《え?》
「そうせな怪しいっちゅうて聞かへんねや、あいつら。せやからな、お前が来てほしいんや。いや、勿論日にちは空くから、その間に伏兵やらなんやら仕掛けたったらええんやけどな」
《……分かりました。それで、時間と場所は?》
「こないだあいつらに見付けさせた、コールマインんとこや。1週間後の正午でええか?」
《了解です。……あの、マロさん、じゃない、MA?》
「何や?」
《変に無線が遠いみたいですが、どこにいるんですか?》
「地下や。あいつらの目を盗むには、ここしかあらへんかってな」
《そうでしたか。それじゃ、また1週間後に》
「おう」
そこで通信を切られ、シエナが刺々しい声を発した。
「地下なんて言わなくて良かったでしょ? 勘付かれたらどうするのよ」
「他に無線が遠い言い訳があるか? あれでええやろ、……ぐえっ!?」
マロは再度蹴られ、またも床に転がされる。
「こいつは1週間後、アレックスを拿捕するまで地下牢に入れておいて。その間、通信機は見える範囲に置いておくコト。ソレと、死なないように見張ってなさい。途中でアレックスから連絡が入って応答できないようじゃ、ソレこそ疑われるでしょうしね。
さっさと連れて行きなさい」
「はっ」
兵士はマロを椅子から引き剥がし、両脇を抱えて、そのまま淡々と引きずっていった。
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シエナの尋問。
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「俺にここへ行くよう指示したんは、財団や。それはホンマや。アレックスのことも、大体話した通りや。
ただ、ホンマのことを言うと、アレックスは財団の援助で動いとるんや」
「でしょうね。いくら技術力があっても、一介のレジスタンス如きが党を撹乱できるほどの設備を、自前で整えられるワケがないものね。
じゃあ動機は? アンタが言った話じゃ、財団の利益にならないでしょ?」
「まあ、ラジオ放送しようかっちゅう話はホンマや。でも邪魔に思とるんはアレックスやなくて、白猫党の方や。
いや、ラジオの話を抜きにしても、財団にとったら白猫党が央中に駐留したまんまちゅうこと自体、うっとおしいんや」
「ソレで話を作って、央中に駐留してる兵士をアレックス拿捕のために動かさせようってコト? なるほどね」
シエナはフン、と鼻を鳴らし、マロに蹴りを入れた。
「うげっ!?」
「よくもまあ、あんなチャチな作り話でアタシたちを騙せると思ったもんね? 身の程知りなさいよ、クズ」
「げほっ、げほ……」
椅子に縛り付けられたまま転がされ、マロは顔を真っ青にして咳き込んでいる。
その顔を踏みつけ、シエナは尋問を続けた。
「ソレで? 央中の駐留軍をアレックス拿捕に向かわせてる間に、アンタたちは何するつもりだったの?」
「捜査の過程で、仰山人手が、いるように、工作するつもり、やった。およそ、駐留軍の半数を、要するくらいは。
そんだけ、人が減れば、近隣の国と連携して、襲撃したら、どうにかなるやろ、って」
息を切らしつつも、マロはぺらぺらと答えていく。
「甘く見られたもんね。その程度でどうにかなるワケないでしょ。
ソレで、アレックスってのがいるって話は本当なのね?」
「ホンマや」
「居場所は?」
「央中の……」「あーっと」
シエナはぐりぐりと、マロを踏みつけた足を動かす。
「うっ、あっ、やめ、うっ」
「ココでウソついて翻弄しようとしたって、そうは行かないわよ。本当のコトを言いなさい」
「い、う、って」
「どうだか。アンタはクズだけど、抜け目がない。
仮に、普通にアンタの目論見通り、アタシたちがアレックスのところへ向かったとしても、アレックスの方にもアンタが情報を流して、返り討ちにさせようと画策するでしょうしね。
アンタがもし本当にアレックスの本拠地を教えても、どうせソコは罠だらけでしょ?」
「く……」
「やっぱりそう言う算段だったのね。なら、アンタにはこうしてもらうわ」
依然として拘束されたまま、マロは懐に隠していた通信機を耳に当てられる。
「確認するわよ。この通信機、アレックスのところにつながってるのね?」
「おう」
「いい? 平静を装って伝えるのよ。もしアレックスにこの状況を伝えたり、変なコトを言うようだったら、その瞬間に蜂の巣にするわよ」
「分かっとる」
通信機を握っていた兵士がスイッチを入れ、マロに話すよう促す。
「こちらMA、こちらMA、応答願います」
《……ザ……こちらAX。どうぞ》
女性らしき声が通信機から流れ、マロが話を進める。
「うまく行った。あいつら、俺の話を信じよったで」
《良かった。それで、白猫軍はいつこっちに?》
「それやねんけど、まあなんちゅうか話の都合でな、ある場所でお前と会うっちゅうことになってん」
《え?》
「そうせな怪しいっちゅうて聞かへんねや、あいつら。せやからな、お前が来てほしいんや。いや、勿論日にちは空くから、その間に伏兵やらなんやら仕掛けたったらええんやけどな」
《……分かりました。それで、時間と場所は?》
「こないだあいつらに見付けさせた、コールマインんとこや。1週間後の正午でええか?」
《了解です。……あの、マロさん、じゃない、MA?》
「何や?」
《変に無線が遠いみたいですが、どこにいるんですか?》
「地下や。あいつらの目を盗むには、ここしかあらへんかってな」
《そうでしたか。それじゃ、また1週間後に》
「おう」
そこで通信を切られ、シエナが刺々しい声を発した。
「地下なんて言わなくて良かったでしょ? 勘付かれたらどうするのよ」
「他に無線が遠い言い訳があるか? あれでええやろ、……ぐえっ!?」
マロは再度蹴られ、またも床に転がされる。
「こいつは1週間後、アレックスを拿捕するまで地下牢に入れておいて。その間、通信機は見える範囲に置いておくコト。ソレと、死なないように見張ってなさい。途中でアレックスから連絡が入って応答できないようじゃ、ソレこそ疑われるでしょうしね。
さっさと連れて行きなさい」
「はっ」
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今日の旅岡さん

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- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
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映画版の「ナバロンの要塞」のあれですね。
捕まる役には誤情報を信じ込ませておく、という……(^^;)
捕まる役には誤情報を信じ込ませておく、という……(^^;)
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ただ、丸っきりウソだと信じられないので、ある程度の真実は含まれています。
マロもその辺りのさじ加減を自分で量っています。
ただ利用されるだけの役ではありません。