黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・偽計抄 6

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    麒麟を巡る話、第581話。
    党首の正当性は?

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    6.
    「……と言うわけで、アレックス・トポリーノを筆頭とするレジスタンス組織の摘発に成功しました。
     これより一味を央中、カンバスボックス駐屯基地に移送します」
     トレーラーが基地へと移動する合間に、ロンダはシエナと通信を交わしていた。
    《分かったわ。コレで元通り、領民放送が行えそうね。アローサもほっとするでしょう》
    「そうですな。トポリーノ女史が懐柔できるかどうかですが……」
    《期待はしてないわ。電波ジャックしてくる時点で敵意は明確だし、ちょっとやそっと話し合って転んでくれるなんて、そんな都合のいい話は無いわ。
     仮に転んだとしても裏がありそうだし、信用できないわ》
    「同感ですな。では如何様に?」
    《とりあえず、本部へ連れてきてほしいわ。アタシ個人の興味があるから》
    「総裁個人の?」
    《天狐ゼミでは通信技術を研究してたもの。党で使ってる通信にも、アタシの技術が使われてるしね。
     そのアタシの技術を真っ向から打ち破ったヤツの顔を一度、拝んでみたいってコトよ》
    「なるほど。では一旦、基地へ移送後、渡航態勢を整え次第すぐに、そちらへ身柄を移すこととします」
    《そうしてちょうだい》
     そこで通信が切れ、ロンダは途端にため息を付いた。
    「ふう……、息つく暇も無く、また船旅か。忙しいものだ」
    「人使いが荒いですよね、本当」
    「まあ、仕方あるまい。総裁命令であるからな」
    「……閣下は総裁に、何の力があると?」
    「うん?」
     周囲にいた部下たちは一様に、不満の表情を浮かべている。
    「閣下も大変な日々を過ごされていること、重々承知しております。
     しかし自分にしても、今回の電波ジャック騒動でわざわざ西方から呼び戻され、先週まで片田舎を、拡声器片手に走り回っておりました。他の同輩も、似たり寄ったりです。
     その間、総裁と言えばただただ幹部陣にわめき散らし、消火器を投げ捨てた程度のことしかしていないではないですか! あれが総裁の仕事ですか?」
    「口が過ぎる。我々がこうして任務に当たっている間にも、総裁は総裁の仕事をされているのだ。自分が見ていないからと言って何もしていないなどと言う考えは、あまりに短絡ではないか」
    「確かに、自分が見ていないところでは何かしら、仕事をしているのかも知れません。
     ですが自分が知る限り、総裁は他人にわめき散らしてばかりであるように思われるのですが」
    「ん……、まあ、そのように見えることは否定できんな。私自身も、幾度と無く怒鳴り散らされている。
     だが彼女は、言わば党の顔、いや頭脳だ。彼女の意志は即ち、党の是である。我々はそれに従って動く手足であって……」「自分の意見は違います」
     と、ロンダに食って掛かっていた者とは別の部下たちが手を挙げる。
    「党の意志、党是とは預言者殿の言葉、啓示に依るものではないのですか? それこそが白猫党が白猫党である、何よりの理由では?」
    「右に同じです。預言者殿が党の中心であるならば納得が行きます。しかしチューリン党首が中心であることには、何の根拠も無い。彼女の存在意義が、私には分かりません」
     この言葉に、ロンダは神妙な顔をした。
    「……むむむ……いや……確かに私自身も、党の象徴かつ最高権威はアオ、……いや、預言者殿であると考えている。その見解に則って動いてきたつもりだ。
     しかし……、確かに今、総裁の意見、意向は預言者殿の意志を反映したものであるか、疑わしくなってきている。幹部会議にしても、預言者殿が出席するようになって久しい。預言者殿が一言も発さぬうちに、総裁が言葉を並べ立ててばかりであるし……。
     となれば……彼女は……ううむ……」
     ロンダは部下の問いに答えきれず、口ごもっていた。

     その時だった。
    《ロンダ司令へ緊急連絡! ロンダ司令へ緊急連絡!》
     通信機から、息せき切った声が発せられた。
    「む、む?」
     ロンダはがばっと顔を挙げ、通信機に応じる。
    「一体どうした? 所属と名前を答えよ」
    《自分は白猫軍海軍局第4師団総指揮官、オーランド・ディアス大佐であります!
     グリスロージュ帝政連邦が軍事蜂起し、西方方面本拠であるプラティノアール王国へと侵攻を開始しました!》
    「む……、む!? なんだと!?」
     無線の声はわなわなと、震えた声で情況を説明する。
    《現在、ローバーウォード東にて交戦中ですが、戦線はじりじりと後退しております!》
    「何故だ!? 何故今になって、彼奴らが襲ってくるのだ!?」
    《不明です! しかし敵勢力はかなり強大であり、現状の人員では到底、東側国境を維持できません!》
    「……ぬぬぬ、……了解した! 即刻、人員を送る! それまで迎撃や反撃を行わず、防衛に専心されたし!」
    《了解であります!》
     そこで通信が切れるが、トラック内は静まり返っていた。
    「まさか……、こんなタイミングで襲ってくるとは」
    「全くだ。急いで戻らねばな」
     ロンダ司令は椅子にどっしりと座り込み、深くため息を付いた。

     この時――トレーラー内の仕切り越しにこの騒ぎを聞いていたアレックスは、ロンダや彼の部下たちには分からないよう、うっすらと笑みを浮かべていた。
    「……始まったみたいね」

    白猫夢・偽計抄 終
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