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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・幾望抄 2

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    麒麟を巡る話、第583話。
    克大火の孫弟子。

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    2.
     ひと通りの協議を終え、フィッボ帝はルナたちの作戦に協力することを承諾した。
    「勝算があり、かつ、十分な意義があるならば、戦うことは吝かではない。
     それにカズラ君の祖国を取り戻せると言うことであれば、奮起してしかるべきだ」
    「ありがとうございます、陛下」
     フィッボ帝の快諾を得られ、葛は満面の笑みを浮かべて頭を下げる。
     それを見たフィッボ帝は、温かく微笑んで見せた。
    「やはり君には笑顔が似合う。君の祖父がそうであったようにな」
    「そうですか?」
    「ああ。今でも卿を省みる度、彼の笑顔を思い出すよ。
     そうだ、カズラ君。この戦いが終わり、プラティノアールを白猫党から奪還することに成功したら、君はどうする?」
    「どう、って言うと」
    「祖国に戻るか、それともこちらに残るかと言う意味だ。
     無論、私の希望としては帝国に残っていてくれた方が嬉しいがね。君のご両親も、既に帝国においては代え難い人材であるし、君もゆくゆくは卿の後継者となるだろうからな」
    「うーん……」
     葛は腕組みし、迷い迷い答える。
    「確かに戻りたいなって気持ちはあるんですけどー、でもこっちの生活にも結構慣れてきてたって言うかー、うーん」
    「ああ、いやいや。今答えを出してくれ、と言うわけでは無い。迷いがあるのも仕方無いことだ。
     ただ、君の人生にとってはとても重要なことだし、今のうちに考えておいた方がいい」
    「あ、はい」
     まごつく葛を置いて、フィッボ帝はルナに視線を戻す。
    「フラウス女史。この後の予定は空いているか? 折角こうして遠国からはるばる来られたのだから、多少のもてなしをさせていただきたいのだが」
    「ありがたいけれど、残念ながらすぐ央南に飛ばなきゃならないの。さっきの作戦の関係でね」
    「そうか、それは残念だ。カズラ君も?」
    「いいえ。折角親のいる国に戻ってきたって言うのに、会わずに帰らせるなんてあんまりでしょ?
     明日、迎えに来るわ」
    「うん? それなら今夜は貴君も滞在するのでは?」
    「あたし、『黒い悪魔』の孫弟子なの。飛ぶ、来るはあっと言う間よ」
    「なるほど、『兵は拙速を尊ぶ』か。多忙なことだ。
     では此度の作戦成功の暁には、祝勝会を催すこととしよう。そちらには参加してほしいのだが、如何かな?」
    「ええ、その時は是非。
     それじゃ葛、あたしは一旦帰るから。明日のお昼には迎えに来るから、城の前で待ってなさい」
     そう言って、ルナは「テレポート」でその場から消えた。
    「悪魔の孫弟子、か。今の術からすれば、本物なのだろうな。
     カズラ君。君はどうやら、私が想像している以上の、大変な事情に巻き込まれているようだな」
    「ふぇ?」
     話を振られ、葛はきょとんとする。
    「『黒い悪魔』タイカ・カツミと言えば、神話の存在だ。その弟子や孫弟子が走り回らねばならぬと言うのなら、それこそ世界全体を揺るがすほどの、とてつもなく大きな事情と言うことになる。
     今の協議にしても、彼女はすべてを話してはいないだろう?」
    「はい、……多分」
    「君にも知らされていない点がある、か。それも詮無きことだな」

     ルナの厚意に従い、葛は実家に足を運んだ。
    「2年ぶり、……だけど全然変わってないねー」
    「まあな」
    「大して事件も無かったし、こっちは平和だもん」
     両親がそう答えたところで、葛は辺りを見回した。
    「ばーちゃんは?」
    「ん?」
    「散歩に出てるけど、どしたの?」
    「あ、ううん。元気なら、うん」
    「おいおい、まさか死んだとか思ってたのか?」
     苦笑する秋也に、葛はプルプルと首を振って返す。
    「やだ、もぉ! ソコまでは思ってないって! でもさー、もう歳だし、元気してるかなーってくらいは思うでしょ?」
    「まあ、ソレは分かる。元気だよ、すごく。悠々自適って感じ」
     と、話している間に、玄関から声が聞こえてくる。
    「戻ったぞ」
    「あ、おかえりー」
     ベルが応じたが、ジーナは居間に足を踏み入れる前に、こう返してきた。
    「カズラがおるのか?」
    「へっ?」
     思わず声を上げた葛に、ジーナが嬉しそうに続けた。
    「やはりか。ベルの声が嬉しそうじゃったからな」
    「すっごいねー、ばーちゃん」
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