黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・幾望抄 3

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    麒麟を巡る話、第584話。
    豆殻で豆を煮ると美味しくない。

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    3.
    「なるほど、わしのことを尋ねたのはそのためか」
     夜になり、葛は密かにジーナの部屋を訪ね、渾沌から諭されたことを話した。
    「うん。……だってさ、『姉貴を助けるべきか殺すべきか』なんてコト、パパやママに聞けないからさー」
    「それはそうじゃろうよ。そんな話を二人が聞けば、いい顔はせんじゃろう。2年ぶりに戻ってきた娘としたい話では無い」
    「分かってるって。……で、さ」
    「うーむ」
     ジーナは杖を撫でながら、考え込む様子を見せる。
    「無論、わし個人の意見は『救うべき』以外に無い。
     じゃが一方で、アオイが白猫党の影に隠れてただならぬ悪行を重ねていると言う話も、コントンから直接聞いたり、ベルとシュウヤが新聞を読んで話しているのを又聞きしたりしておる。
     到底、人一人が犯しきれる量の罪を超えておると言うのは、確かな話なのじゃろう。最早、軽々と許されるような身では無い。わしら家族以外からは『罰すべし』と下されるじゃろうな。
     それにカズラ、お主個人も許せないと思っておるのじゃろう?」
    「……うん」
    「何があった? お主の肉親じゃし、そこまで憎むには相当の理由があるはずじゃ」
    「ソレは……、その」
    「言うてみい。内緒にしておく」
    「……」
     葛はジーナから目をそらし、恐る恐る打ち明けた。
    「カズセちゃんの術で忘れてるけど、パパ、……姉貴に、殺されかけたんだ。ソレも、パパを目一杯侮辱しながら、嬲り殺しにしようとした。
     ソレだけじゃないの。央北であたしと友達になった人も何人か、姉貴にひどいコトされたって言ってた。みんな、いい人たちなのに。ソレが、本当に、……許せないなって」
    「そうじゃったか。……なるほどのう、それもまた、小さからざる罪じゃな。しかも父親が嬲られる様を目の当たりにすれば、確かに許せなくもなろう。
     しかし、……それでも、もし、お主がアオイを裁くような立場に立つことがあれば、でき得る限り、許してやってはくれんか?」
    「……」
    「コントンはネロのことを引き合いに出したが、それを抜きにしてもカズラ、お主にはアオイを許してやってほしいんじゃ。
     あの子はお主にとって唯一の姉じゃろう? そしてアオイにとっても、お主は唯一の妹じゃ。その姉妹が殺し合いをするなど、わしら家族にとってはどれだけ悲しいことか」
    「まあ、うん」
    「きっとそう遠くないうち、お主とアオイは刃を交えることになるじゃろう。その時、これだけは心に置いておいてほしい。お主が戦っている相手は、自分の姉じゃと言うことをな。
     それを忘れずにおけば、コントンがお主に言うた『自分で考えるべき問題』にも、答えが見出せよう」
    「……うん」
     葛はジーナの顔を見て、しっかりとうなずいた。

     と――葛は大火から伝えられていた、ある言葉を思い出した。
    「あ、そう言やばーちゃん?」
    「うん?」
    「ママって一人っ子だよねー?」
    「ん? そうじゃ。それがどうかしたのか?」
    「いや、何かさー、タイカさんがあたしのコト、『叔母に似て人に好かれる性格だ』って言ってたんだけどさー」
     これを聞いて、ジーナは首を傾げる。
    「叔母? お主の? ……はて?」
    「でしょ? 母方はいないの確実だよね。でもパパに双子のお兄さんがいるって話は聞いたけどー、女の兄弟がいるって話は全然聞かないもん。
     ソレともまさか、じーちゃんかばーちゃんに隠し子がいたとか……」「阿呆」
     ジーナは顔を真っ赤にし、ぺち、と葛の額を叩く。
    「そんなもの、あってたまるか! あの朴念仁がわし以外に目を向けるものか。わしもネロ一筋じゃし、……や、何を言わすか」
    「だよねー」



     どうしても気になったため、葛は翌朝、秋也にも同じ話を向けてみた。
    「叔母だって?」
     ところが尋ねた途端、秋也は顔をしかめ、黙り込んでしまった。
    「……」
    「パパ?」
     声をかけられ、ようやく口を開くが、依然として表情は険しいままである。
    「……ああ。悪いな、葛。あんまりその話、したくねーんだ」
    「え? ……マジでいるの、あたしに叔母さんって?」
    「『いた』、だ。もういない」
     そう言うなり、秋也は葛と目を合わさなかった。
    「……」
     それ以上聞ける雰囲気では無くなったため、葛も口をつぐむしか無かった。
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