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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・幾望抄 6

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    麒麟を巡る話、第587話。
    似てる? 気のせい?

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    6.
     葛の場合とは違って、楓はすぐ、ルナと共に央北、トラス王国へと戻っていた。
    「計画が動くのは来月から。それまではしばらく、休養ね」
    「ええ、承知しておりますわ。……それでルナさん」
     楓がいぶかしげに、こう尋ねる。
    「あの難物で知られる黄大人を、どうやって説得なさったのかしら」
    「コネよ」
     笑って返したルナに、楓は面食らった顔をした。
    「コネ? ルナさん、あなた一体、黄家とどんなつながりが……?」
    「色々よ、色々。それよりお腹減ったわ。食べに行きましょ」
    「え? ええ、いいですわね。他にもどなたか、お招きしましょうか」
     楓がそう提案したが、ルナは肩をすくめて返す。
    「たまには二人っきりもいいじゃない」
    「はあ?」

     ルナに促されるまま、楓は市街地のカフェへと足を運んだ。
    「あたしはスズキとアンチョビのサンドイッチ。あなたは?」
    「それでは、エビとアボカドのサンドイッチで」
    「お酒呑む?」
    「昼からですの?」
    「一杯だけね。あなたもどう?」
    「では、お相伴に預かりますわ」
    「うふふ」
     ニコニコと笑いながらつい、と指でメニューをなぞり、ルナはこう続ける。
    「サンドイッチだけじゃ味気ないわね。串焼きも頼もうかしら」
    「しっかり呑む気満々に思えますけれど」
    「あはは、バレた?」
     他愛も無いことを話しながら、二人は昼食を楽しむ。
    「ふあー……、昼間の酒は効くわねー」
     その間にグラスを3杯開け、ルナの顔が赤くなる。
    「ルナさんって」
    「んー?」
    「お酒に弱いように見受けられるのですけれど」
    「あんまりねー」
    「なのに、そんなに何杯もきこしめされるの?」
    「下手の横好きみたいなもんよー」
     まだ1杯目のグラスをくるくる弄びながら、楓はこんなことを尋ねた。
    「あの、妙なことをお聞きするかも知れませんけれど。ルナさんの毛並みって、三毛ですわよね? 染めてらっしゃるのかしら」
    「地毛よー」
    「動物と違って、獣人で三毛と言う方は、あまり多くないと聞いておりますわ。大半が一毛で、あたくしみたいに『狐』や『狼』の方では二毛がほとんどだと」
    「へー。じゃああたしの先祖に『狐』かなんかがいたのねー、きっと」
    「央南人っぽい顔つきに見えますけれど、央南の血が?」
    「想像にお任せするわー」
    「……なんだか、似てるように思えるのですけれど」
    「んー……? 誰に?」
     楓はルナの顔や猫耳、上半身を一瞥し、こう続けた。
    「カズラさんに、ですわ。あの子も三毛で、央南人の血を引いているそうですし。おまけに言うと、あの子もお酒は強くない方だったと記憶しておりますわ。
     もっともアオイなどとは、似ても似つきませんけれど」
    「論拠に乏しいわね。もっと信頼性のあるデータを引っ張ってこなきゃ、説得力無いわ」
     とろとろとしゃべっていたルナは、そこで急に、はきはきと応答してきた。
    「……そうですわね。これだけでは、確かにあたくし自身も荒唐無稽としか思えません。すみません、変なことを聞いてしまって」
    「いいわよ、別にー」



     翌日、葛が戻ってきてすぐ、楓は同じ内容を彼女に尋ねた。
    「ねえ、カズラさん。あなたの毛並み、地毛よね?」
    「ん? うん、そだよー。レアな三毛」
    「お父様が央南人でしたわよね?」
    「うんうん」
    「……」
     首を傾げた楓に、葛も同じように首を傾ける。
    「どしたのー?」
    「ねえ、カズラさん。あなたに、……そうですわね、伯母がいると言うような話を聞いたことはございません?」
    「えっ」
     これを聞いた途端、葛は目を丸くした。
    「えーとね、その、叔母さんはいたっぽいよー。パパから聞いた」
    「へえ……?」
    「でもね、ソレ聞いた途端、パパすごく嫌な顔したんだよね。『もういない』つって」
    「あら? ……では、違うのかしら」
    「何が?」
    「いえ、単なる思いつきみたいなものですから」
     楓は軽く頭を振り、それ以上は話さなかった。

    白猫夢・幾望抄 終
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