「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第4部
蒼天剣・恋慕録 7
晴奈の話、第185話。
おうじょ フォルナが なかまになった!
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
フォルナはユラユラとした振動を感じ、目を覚ました。
(え……?)
「呆れましたよ、まったく」
「ホント、ゴメンね~」
すぐ前方で、晴奈と小鈴の声が聞こえる。
「しかし、ずっと男だと思われていたとは」
「今度からさ、ムネに詰め物しといたら?」
「勘弁してくださいよ。動きにくい」
「そーよね、アハハ」
どうやら、晴奈がフォルナを背負ってくれているらしい。
(コウ……。まさか、女だったなんて)
フォルナはあまりのショックで、目を覚ましても動けないでいる。
と、フォルナが目を覚ましたことに気付かず、晴奈がこんなことを言った。
「しかしフォルナを見ていると、何だか心配になります」
「なんで?」
(何故ですの?)
「小鈴殿も言っていたように、昔の自分に良く似ているからです。あの頃の私を省みると、よくもまあ情熱だけで旅立てたものだ、と呆れてしまう」
(あら、ひどいわね)
一向に背負ったフォルナの様子に気付くことなく、晴奈は話を続ける。
「心配になると言いましたが、同時に何と言うか、守ってやりたい気持ちにもなりますね」
「ふーん」
フォルナは薄目で小鈴の方を見てみると、小鈴と目が合った。が、小鈴は何も言わない。
「どうも私は、年下の者に弱いらしい。この子も何だか、妹のように思えてしまうのです」
(妹、ですって?)
「あー、うんうん。晴奈はお姉さんって感じだもんね」
どうやら、小鈴はまた黙殺するつもりらしい。
「ちょっとくらいなら、一緒に旅をするのも悪くないかも知れないですね」
(わたくしも、コウが男だったら一緒に旅を、と思っていたのに)
「あーら、日上を追うのに邪魔だなんて言ってたくせに」
「ええ、まあ。……つくづく思うのですが」
晴奈はため息混じりに答える。
「やはり、旅の仲間は多い方がいい。一人で黙々と進むより、二人で。二人で淡々と進むより、三人で。
フォルナの目が覚めたら、頼んでみようかと」
(お断りよ。わたくし、あなたが男だと思ったからここまで来たのよ)
フォルナは晴奈に分からないよう、ツンとそっぽを向く。
(……でも)
しかし背負われ、密着している背中からは、頼りになるぬくもりを感じる。
(いいかも知れないわね。どうせ、お城での生活にうんざりしていたもの。それに、悪い人たちでは無さそう。
そうね、楽しいかも知れないわ)
フォルナはぎゅっと、晴奈の肩を抱きしめた。
「ん? フォルナ、起きたか?」
「あっ、……はい。降ろしていただけます?」
「ああ」
晴奈はそっとしゃがみ、フォルナを降ろす。
「はい、コレあんたの荷物ね」
フォルナは小鈴から荷物を受け取りながら、晴奈に声をかける。
「コウ。……話は、聞いておりました。
その、まあ、一緒に行きたいと言うのであれば、わたくしもやぶさかではありませんわ。付いていっても、よろしいかしら?」
「ああ、こちらからもお願いする。よろしくな、フォルナ」
「ええ、よろしくコウ。……でも、女性にしては妙なお名前ね?」
「ああ、ソレなんだけどねー」
小鈴が割り込み、晴奈に耳打ちする。3秒ほどで、晴奈の顔が真っ赤になる。
「……そうでしたか。道理で」
「どうしたのですか?」
「あのね、このコウさんは名前と名字を逆に名乗っちゃってたのよ」
「まあ」
真相を聞き、フォルナは口に手を当てて笑い出す。
「うぅ、不覚だ。作法を間違えていたとは。……早く言って下さいよ、小鈴殿」
「クスクス……」
小鈴は最後までイタズラ心たっぷりに、晴奈をいじっていた。
蒼天剣・恋慕録 終
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7.
フォルナはユラユラとした振動を感じ、目を覚ました。
(え……?)
「呆れましたよ、まったく」
「ホント、ゴメンね~」
すぐ前方で、晴奈と小鈴の声が聞こえる。
「しかし、ずっと男だと思われていたとは」
「今度からさ、ムネに詰め物しといたら?」
「勘弁してくださいよ。動きにくい」
「そーよね、アハハ」
どうやら、晴奈がフォルナを背負ってくれているらしい。
(コウ……。まさか、女だったなんて)
フォルナはあまりのショックで、目を覚ましても動けないでいる。
と、フォルナが目を覚ましたことに気付かず、晴奈がこんなことを言った。
「しかしフォルナを見ていると、何だか心配になります」
「なんで?」
(何故ですの?)
「小鈴殿も言っていたように、昔の自分に良く似ているからです。あの頃の私を省みると、よくもまあ情熱だけで旅立てたものだ、と呆れてしまう」
(あら、ひどいわね)
一向に背負ったフォルナの様子に気付くことなく、晴奈は話を続ける。
「心配になると言いましたが、同時に何と言うか、守ってやりたい気持ちにもなりますね」
「ふーん」
フォルナは薄目で小鈴の方を見てみると、小鈴と目が合った。が、小鈴は何も言わない。
「どうも私は、年下の者に弱いらしい。この子も何だか、妹のように思えてしまうのです」
(妹、ですって?)
「あー、うんうん。晴奈はお姉さんって感じだもんね」
どうやら、小鈴はまた黙殺するつもりらしい。
「ちょっとくらいなら、一緒に旅をするのも悪くないかも知れないですね」
(わたくしも、コウが男だったら一緒に旅を、と思っていたのに)
「あーら、日上を追うのに邪魔だなんて言ってたくせに」
「ええ、まあ。……つくづく思うのですが」
晴奈はため息混じりに答える。
「やはり、旅の仲間は多い方がいい。一人で黙々と進むより、二人で。二人で淡々と進むより、三人で。
フォルナの目が覚めたら、頼んでみようかと」
(お断りよ。わたくし、あなたが男だと思ったからここまで来たのよ)
フォルナは晴奈に分からないよう、ツンとそっぽを向く。
(……でも)
しかし背負われ、密着している背中からは、頼りになるぬくもりを感じる。
(いいかも知れないわね。どうせ、お城での生活にうんざりしていたもの。それに、悪い人たちでは無さそう。
そうね、楽しいかも知れないわ)
フォルナはぎゅっと、晴奈の肩を抱きしめた。
「ん? フォルナ、起きたか?」
「あっ、……はい。降ろしていただけます?」
「ああ」
晴奈はそっとしゃがみ、フォルナを降ろす。
「はい、コレあんたの荷物ね」
フォルナは小鈴から荷物を受け取りながら、晴奈に声をかける。
「コウ。……話は、聞いておりました。
その、まあ、一緒に行きたいと言うのであれば、わたくしもやぶさかではありませんわ。付いていっても、よろしいかしら?」
「ああ、こちらからもお願いする。よろしくな、フォルナ」
「ええ、よろしくコウ。……でも、女性にしては妙なお名前ね?」
「ああ、ソレなんだけどねー」
小鈴が割り込み、晴奈に耳打ちする。3秒ほどで、晴奈の顔が真っ赤になる。
「……そうでしたか。道理で」
「どうしたのですか?」
「あのね、このコウさんは名前と名字を逆に名乗っちゃってたのよ」
「まあ」
真相を聞き、フォルナは口に手を当てて笑い出す。
「うぅ、不覚だ。作法を間違えていたとは。……早く言って下さいよ、小鈴殿」
「クスクス……」
小鈴は最後までイタズラ心たっぷりに、晴奈をいじっていた。
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~ Comment ~
NoTitle
「実はわたしは女なの」
「誰にでも欠点はある」
……という、「お熱いのがお好き」みたいな展開を期待していたのでちょっとがっかり(←するな!(笑))
しかし、フォルナちゃん、「さらわれ役」になるために生まれてきたみたいな娘ですなあ。これからどんどんさらわれるのでしょうか。楽しみであります。
「誰にでも欠点はある」
……という、「お熱いのがお好き」みたいな展開を期待していたのでちょっとがっかり(←するな!(笑))
しかし、フォルナちゃん、「さらわれ役」になるために生まれてきたみたいな娘ですなあ。これからどんどんさらわれるのでしょうか。楽しみであります。
NoTitle
晴奈は同性に好かれやすいキャラしてると思います。
作中でも程度の差はあれ、女の子の気を引く場面が。
ただ、(残念というか何と言うか)
「蒼天剣」のキャラに百合属性はほぼありません。
約一名を除いて。
竜冒険IVはおうじょが主役でも素寒貧でしたね。
今思い返してみると、ちょっと残念かも。
第5章お疲れさまでした!
最終章も楽しみにしてます。
作中でも程度の差はあれ、女の子の気を引く場面が。
ただ、(残念というか何と言うか)
「蒼天剣」のキャラに百合属性はほぼありません。
約一名を除いて。
竜冒険IVはおうじょが主役でも素寒貧でしたね。
今思い返してみると、ちょっと残念かも。
第5章お疲れさまでした!
最終章も楽しみにしてます。
NoTitle
やはりセイナはかっこいいんでしょうね。
今のご時世は百合も!!
……なんていっても仕方ないですね。
おうじょがなかまになった。
1000まんゴールドどうじにてにはいった!!
…なんて展開だったら、竜冒険も楽でいいんですけどね。
どうも、LandMです。
こちらごとですが、おかげさまで5章が終了いたしました!!これまで読んでいただきありがとうございます!!次から最終章になります。今まで以上に頑張る所存なので、これからもよろしくお願いします。
今のご時世は百合も!!
……なんていっても仕方ないですね。
おうじょがなかまになった。
1000まんゴールドどうじにてにはいった!!
…なんて展開だったら、竜冒険も楽でいいんですけどね。
どうも、LandMです。
こちらごとですが、おかげさまで5章が終了いたしました!!これまで読んでいただきありがとうございます!!次から最終章になります。今まで以上に頑張る所存なので、これからもよろしくお願いします。
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NoTitle
確かに、女の子の登場する割合は他の部に比べて大きいので、期待した人も少なくなかった様子。
しかし「蒼天剣」にそんな描写は、……数話しかありません。
某桃姫をはじめ、「さらわれ役」にはお姫様が良く似合います。
この後もう一回、さらわれます。