黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・弄党抄 4

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    麒麟を巡る話、第591話。
    切迫する無線連絡。

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    4.
    「ふっ、ふざけっ、……ふざけないでよッ!」
     シエナが明らかに狼狽した声を挙げたが、無線の向こうから聞こえる声に揺らぎは無い。
    《ふざけてなどおりません。これは実際に起こっている、緊急の事態であります。
     繰り返しお伝えいたしますが、央北・央中の各所において、反乱が起こっております。その反乱を先導しているのは、あの電波ジャック犯、『Mr.コンチネンタル』であるとの情報が入っております》
    「おかしいじゃない!? レジスタンスは捕まえたのよ!? だったらそんな放送、流れるワケ無いじゃない!」
    「陽動だったのでしょうな」
     背後にいたトレッドが、苦々しい顔でつぶやく。
    「囮のトポリーノ一味を捕らえ、我々の警戒が緩んだその隙を狙っていたのでしょう。……そう考えると、二地域侵攻も相手の計画の内だったのでしょう」
    「どう言うことかね?」
     流石のイビーザも、顔を青くしている。
    「我々を欺くほどの無線技術を有し、翻弄していたのは、央南か西方のどちらかだったと言うことです。でなければどの出来事も、これほどタイミング良く起こるはずが無い」
    「そんな、……馬鹿なッ……!」
    「心配なのはロンダ司令です。このような事態が起こり、流石の司令も対応に窮しているのではないかと思われるのですが。
     いや、それどころか駐屯基地が襲撃されているおそれもあります。至急、確認を取るべきでは?」
    「そうね。ココでロンダを失いでもしたら、事態は最悪だもの。つないでちょうだい」
     シエナの指示により通信機の周波数が切り替えられ、応答が返って来る。
    《こちら央中、カンバスボックス基地》
    「白猫党党首、チューリンよ。ロンダを呼んでちょうだい」
    《私はこちらにおります》
    「ロンダ、情況は聞いてるかしら?」
    《把握しております。現在も基地周辺にて、防衛戦が展開されております》
    「やっぱり……」
     シエナは一瞬、周囲に目配せし、誰もが顔色を悪くしているのを確認してから、ロンダへ問う。
    「撃退はできそう?」
    《粉骨砕身、努力しておりますが、なにぶん人員の少なさから、手が回りきっていないと言うのが現状であります。
     無論、撃退しなければ危うい状況にございますから、何としてでも基地を死守する所存ではありますが、万一のことも想定しなければならないとだけは、お覚悟下さい》
    「……っ」
     その悲惨な返答に、シエナはすぐには答えられず、黙り込んだ。
    《総裁?》
     相手に促され、どうにかシエナは言葉を吐き出す。
    「……その、万一の場合。あなたは、脱出できるの?」
    《それも難しいでしょう》
    「じゃあ、どうするのよ?」
    《私の執務室に後任候補や人員配置状況、その他重要な情報をまとめた文書があります。それを参照していただければ、ひとまずの対応は可能でしょう。
     極めて遺憾ですが、央中からは一旦、撤退せざるを得ないと、お覚悟の程を》
    「何言ってるのよ!? しゃんとしなさいよ、ミゲル・ロンダ! あなたがココで死んだら……!」
     シエナは怒鳴ったが、通信機からはもう、返事が返って来なかった。
    「……そんな……どうしろって……」
     呆然としているシエナの肩に、トレッドが手を置く。
    「重厚な防衛網が敷かれているとは言え、このヘブン王国、いや、首都クロスセントラルへも反乱の手が押し寄せてくるかも知れません。
     まずは司令の執務室にある文書を確認し、司令の代行を立てましょう」
    「……そ、そう、ね。……ええ、行きましょう」
     シエナはトレッドとイビーザを伴い、ロンダ司令の執務室へ走った。

     だが――。
    「……あった?」
    「いえ」
    「見当たりませんな」
     三人で執務室のあちこちを改めるが、無線で言っていたような文書はどこにも見当たらない。
    「あるって、言ってたわよね?」
    「ええ、確かに聞きました」
    「私も聞いております」
     三人、顔を見合わせ、そして同時にがばっと身を翻し、再度部屋を調べる。
    「文書よね?」
    「そう言っていました」
    「しかし、……それらしいものは、どこにも」
     三人の手が、ぴたっと止まる。
    「どう言うコト? ロンダが嘘をついたの?」
    「いや、まさか。あれほど差し迫った事態で、嘘など付くはずも……」「『あれほど』?」
     と、イビーザが顔を挙げる。
    「フリオン、君は見たのか?」
    「と言いますと?」
    「状況そのものをだよ。『あれほど』などと言うからには、その騒然たる状況を目にしたのか?」
    「いえ、言葉の綾と言いますか、無線からあれほど差し迫った声を聞いたわけですし」
    「それだ。我々は『聞いて』はいるが、『見て』はおらん。この目で状況を確認していないし、その現場に足を運んですらいない。
     あの無線は本当に――ロンダ司令につながっていたのか?」
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