黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・天魔抄 1

     ←2015年12月携帯待受 →白猫夢・天魔抄 2
    麒麟を巡る話、第594話。
    葵の想定外。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    《ちょっとまずいよ、アオイ》
    「……?」
     夢の中に誘われるなり白猫から告げられ、葵はけげんな顔をした。
    《580年に起こるはずだったコトが、何故か今、起こってる。
     予想外だったよ――ああ、また言っちゃった――この流れは変わるまいと思って、見直したりしなかったからねぇ》
    「何が起こってるの?」
    《反乱さ! 5年後に起きるはずだったアレが、今起こってしまってるんだ。
     だけどまだ、ボクの体の用意が整ってないよね?》
    「そうだね」
     答えた葵を、白猫はギロリとにらみつけた。
    《『そうだね』、じゃないよまったくさぁ!? そりゃ確かに580年に間に合うようにと予定してたし、そう簡単じゃないってコトは分かってるけどさ、起こっちゃってるんだからどうにかしなきゃいけないだろ!?》
    「うん」
     そう返し、葵は続けて尋ねる。
    「どうすればいい? あなたはどうしたいの?」
    《決まってるだろ? 反乱を止めろ。
     ボクの復活については、仕方ないけど後回しでいいよ。ホムンクルスなんか間に合いやしない。
     とにかく今は、シエナを生贄にして殺せ。その後はキミが党首を名乗れば、騒ぎは収まる。
     その後のコトは、ボクが次いで指示する。だからとにかく、まずは起きて行動するんだ》
    「分かった」

     葵が夢の世界から消えた後、白猫は一人、ほくそ笑んでいた。
    《く、ふふっ……、なーんてな! 予想通りさ、よ・そ・う・ど・お・り!
     まったくアオイめ、気付きもしなかったのか? いや、まあいいか。気付かないんなら、ソレはソレで。……あはは、くっ、くく、くふふふ、……ああっ、笑いが止まらない!
     いいぞアオイ、戦え! 戦って、戦って、死にかけて、そして窮して――いずれボクの前に、姿を見せるがいい! 本体の、ボクの前にね……!》



     葵は目を覚まし、がばっと起き上がった。
    「急がないと」
     さっと着替えを済ませ、刀を二振り腰に佩き、寝室を出る。
     その頃には、城内は既に修羅場と化しつつあった。
    「鬼畜シエナを許すなーッ!」
    「これ以上、あの独裁者を野放しにするなーッ!」
    「探せ探せぇ! 見つけ次第殺せーッ!」
     城の至るところで怒号と銃声が飛び交い、白亜城が赤く染まっていく。これまでの規律・統率が嘘のように、白猫兵たちが城内で叫び、殺戮を繰り返しているのだ。
    「いま気付かれたら面倒かな。……『インビジブル』」
     葵は術で姿を消し、狂乱状態の兵士たちに見付からぬように城内を回る。
     だが、シエナの部屋や党首の執務室、会議室、その他彼女がいそうな場所を回っても、シエナの姿が見当たらない。
    「……どこ?」
     散々、探し回ってみたが、シエナはおろか、彼女に付き従っていたトレッドや、こんな事態を逆手に取って台頭を企てそうなイビーザの姿も無い。
     その他の幹部については――。
    「オラース財務本部長! お前はシエナの味方か、敵か、どっちだ!?」
    「どちらでも無い。あくまで私にとっては、ビジネスパートナーでしか無い人間だ。
     私を拘束すると言うのならば、気の済むようにしたまえ。殺されるのは勘弁被るがね」
     オラースは早々に兵士の前に投降し、自ら捕らえられていた。
    「わ、私は、あいつの味方なんかじゃないわ!
     ええそうよ! 誰があんな奴、ええ、……ねえ、だから、助けてよぉ……」
     アローサも兵士に囲まれ、ボタボタと泣き崩れている。
    「……デリック博士もいない。逃げたのかな」
     昼が過ぎ、夕闇が迫る頃になっても、葵は依然としてシエナたちを見付けられなかった。
     と――兵士たちの会話が、耳に入ってくる。
    「ゴールドマン元部長と、……なんだっけ、ネコちゃん?」
    「テンコちゃんだ」
    「そう、それ。まだ二人とも釈放されてないよな?」
    「ああ」
    「さっきアローサ管理部長を地下に入れてきたんだけどさ、どっちも見当たらないんだよ」
    「へ?」
    「ゴールドマン元部長はともかく、ペンコちゃんは目立つから、見落とすはずも無いし」
    「テンコちゃんだっつーの」
    「まさか脱獄したのかな……? すげー魔術師だって聞くし、レンコンちゃんって」
    「いい加減にしろ、テンコちゃんだ。俺の兄貴が世話になったんだからマジで間違えんな」
     これを聞いて、葵は静かに地下牢へと向かった。
    関連記事




    blogram投票ボタン ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ  3kaku_s_L.png 琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    • 【2015年12月携帯待受】へ
    • 【白猫夢・天魔抄 2】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【2015年12月携帯待受】へ
    • 【白猫夢・天魔抄 2】へ