黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・天魔抄 4

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    麒麟を巡る話、第597話。
    レッドゾーン。

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    4.
     戻ってきた葵を見て、ルナの顔が強張った。
    「葛は……」
    「分かる、で、……しょ?」
     葵はそこで、がくんと膝を着いた。
    「カズラは、別次元の、どこか遠くへ、飛んで行った。もう、二度と、戻って来ない」
    「何てことを……!」
     仲間を助け起こしていた楓が、顔を真っ青にして叫ぶ。
    「ご自分の妹にまで、そんな惨い仕打ちをなさるの!?」
    「敵は、倒さなきゃ」
     葵はふらふらと立ち上がり、刀を構える。
     だが、すぐにまた体勢を崩し、四つん這いになって血を吐いた。
    「げほっ、……げほ、げぼっ」
    「葵……?」
     刀を構えたまま、ルナが――敵に向けるものでは、まったく無い――心配そうな顔をした。
    「まさか、その術って」
    「……かもね」
    「どう言うことですの?」
     尋ねた楓に、ルナが答える。
    「母さ、……黄晴奈に化ける、あの術。負荷が強過ぎるのよ」
    「負荷? いえ、それより今、黄晴奈を何と?」
     楓の問いには応じず、ルナは考察を続ける。
    「あの術は、普通の人間に使えるようなものじゃない。見た目だけじゃなく、その人が持つ能力や技術、精神構造までコピーするなんて術、大先生だって使えない。
     そんなのを使った人間が、無事に元のままでいられるとは思えない。ましてや楓、あなたにも1年前に、あの術を使ったんでしょ? これまで使った回数、1回や2回とは思えないわ。
     もう相当、体が変異してるんじゃないかしら」
    「……! ではアオイは、まさか?」
    「ええ、筆舌に尽くし難い程の無茶を重ねたんでしょうね。自分で死にかけてるのよ」
    「げほっ……げほっ……」
     コップ一杯分は血を吐き、ようやく葵が立ち上がる。その胸元は、自分の血で染まっていた。
    「関係、無いでしょ?」
    「あるわね」
    「さっき、言いかけて、ごまかしたこと?」
    「……」
     答えないルナに、葵が続けて尋ねた。
    「まさか、あたしの叔母さんだなんて、言ったりしないよね?」
    「そうだと言ったら?」
    「……あんまり関係無い。やっぱり、敵だもの」
    「そうでしょうね」
     ルナは間合いを一歩詰め、葵をにらむ。
    「まだ、やる気かしら」
    「やるよ。あなたたちを放っておいたら、また、こうやって邪魔してくる。シエナの居場所も聞かなきゃいけないし」
    「やれやれね」
     ルナの刀に火が灯る。
    「来なさい、葵。あたしが相手するわ。葛の仇よ」
    「焔流、……やっぱり、そうだったんだね」
     葵は――先程まで血反吐を吐いて転がっていたとは思えないほど――静かで冷淡な声で、こう続けた。
    「あなたには焔流剣士としての借りがある。だからこの技で、仕留める」
     葵は再び、「晴奈」に変化した。

    「やめなさい」
     その姿を見て、ルナはかぶりを振る。
    「それ以上使ったら、あなた本当にここで死ぬわよ」
    《敵の心配か? 随分と余裕を見せるものだな、月乃》
    「月乃? あたしはルナよ。そしてあんたも母さんじゃない。ただの葵・ハーミットよ」
    《ふ……》
    「晴奈」の刀に火が灯る。
    《その余裕が命取りだ。容赦はせんぞ、月乃ッ!》
    「偽者に何ができるッ!」
     両者が駆け出し、間合いを一気に詰める。
    「『炎剣舞』ッ!」《『炎剣舞』ッ!》
     同じ技が繰り出され、その場が真っ赤に照らされる。
    「まぶ、しっ……!」
     楓の声も、爆音でかき消された。
    「威力は、同じか……!」
    《あら。そう思うの、ルナ?》
     その声を聞いた瞬間、ルナの顔が凍りついた。
    「……師匠!?」
    《この術は『晴奈』に化けるだけじゃないのよ。わたしにだって化けることができる。
     だから勿論、わたしの技も使えるのよ》
    「晴奈」から「渾沌」に姿を変えると共に、その両腕は炎と化していた。
    《『人鬼・火術』。これに『炎剣舞』の炎を加えれば……》
     周囲に巻き起こった炎は「渾沌」に集約され、一層激しく燃え上がる。
    《かつて晴奈とわたしが一度だけ協力して出したこの大技も、簡単に使えるってわけ》
    「……~ッ!」
     炎は赤を超えて真っ青に、そして白色に近付き――ルナを飲み込んだ。
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