「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第4部
蒼天剣・湯治録 1
晴奈の話、第186話。
軽くSな小鈴。
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1.
晴奈たちとフォルナが共に旅をするようになって、早3日目。
2日かけて森を抜けた晴奈一行は現在、小高い丘を越えていた。
「この丘を越えたトコが、リトルマインよ」
「ふむ」
「意外と早く着きますのね」
小鈴は杖をつきながら、ゆっくりと坂を上っていく。
「もう3日くらいかかるかなーと思ってたけど、意外にフォルナちゃん、脚が強いのね」
「ええ。セイナほどではありませんが、わたくしも毎日運動していますもの」
フォルナは晴奈の素性を理解してから、「セイナ」と呼ぶようになった。
「それは感心だな」
三人の中で最も体力のある晴奈は、何の苦もなく坂道を上っている。他の二人が額に汗を浮かべているのに比べ、晴奈は息切れすらしていない。
「この分だと、大体あと1時間くらいで着きそうね。ちょうど、お昼時ってトコかしら」
「美味しいご飯が、いただけそうですわね」
「そうだな」
「んふふー、それはどーかなぁ」
同意する晴奈に対して、小鈴はニヤニヤしながら答えを濁す。
「鉱山の近くにある温泉地だから、水はかなりの硬水よ。オマケに地下水の大半は炭酸入り。何にも考えずに飲んだら……」
「ごぶ、ゲホッ!? し、舌が割れる!」
「んひゃ、ひゃ、……鼻が痛ぁい!」
「だーから言ったでしょ、んふふふ」
リトルマインの南側に沸いていた炭酸水の鉱泉を見つけ、晴奈とフォルナは一気にあおってみた。結果は前述の通りである。
「はー、はーっ、……くは、のどがただれるようだ」
「涙が出てきてしまいますわ……」
「あたしもちょっとくらいパチパチする程度の、軟水の炭酸水なら好きだけど、コレはやり過ぎよね。あたしも昔飲んでみて悶絶したわ。……んふふふふふ」
小鈴は悶える晴奈たちを見て、口に手を当てて笑っている。
「ひどい方、コスズさん」
フォルナはハンカチを鼻に当てながら、グスグスと涙を流している。晴奈も腹と口に手を当てながら、げっぷを押さえようとする。
「げふ、失敬。……ゲプ」
「んふふふ、アハハハ……」
二人の真っ赤な顔を見て、小鈴は笑い転げていた。
「……くっくく、くく。あー、ゴメンねぇ、ホントに。おわびにさ、この街で美味しいご飯ご馳走したげるから」
「げふ、……あるのですか?」
「水が悪いと、グス、言っていたのに」
「ま、普通に飲むのはきついけど、料理に使うと美味しいのよ、硬水って」
「ほう、……げふ」
「ま、付いてきて付いてきて」
小鈴はまだ涙目の二人に手招きし、街の中心へと歩いていった。
三人はリトルマインの食堂に入り、小鈴が注文する。
「ミートソースのパスタ、3人前」
「かしこまりましたー。ミート3、お願いしまーす」
田舎に似合わない、フリルつきのエプロンをかけた短耳のウエイトレスがきびきびと注文をメモし、厨房へ指示を送る。
「ぱすた、とは?」
「麺類のことですわ、セイナ」
「ほう。そばとか、うどんと似たようなものか」
「ま、そんな感じ。ココはさっきの炭酸水を使って、麺をゆでてるの」
晴奈とフォルナは先ほどの激痛を思い出し、揃って鼻を抑える。
「それは……、また口や鼻が痛くなりそうな」
「本当に、美味しいんですの?」
「ま、食べてみて食べてみて」
10分ほどして運ばれてきたパスタを見て、晴奈とフォルナは顔を見合わせる。
「……」「……」
「ほら、食べなって」
「は、はい」「では、いただきます」
二人は恐る恐る、パスタを口に運ぶ。
「……あら?」「お?」
ちゅるりと飲み込み、二人は目を輝かせた。
「美味しい!」「驚いたな、確かにうまい」
「でしょー? 硬水で麺をゆでると、超美味しいのよ」
「へぇ……、知りませんでしたわ」
「同じく。これほどうまいとは」
晴奈はもう一口、パスタを口に運ぶ。と、そこで小鈴が唖然とした。
「……晴奈ぁ。もうちょっと教えなきゃいけないコト、あるわね」
「ずずー。……え?」
「セイナ、音を立てては……」
ズルズルと音を立てて麺をすする晴奈に、小鈴とフォルナは小声で注意した。
「まずいのか?」
「ええ」「うん」
晴奈がふと店の奥に目をやると、先ほどのウエイトレスが背を向けて笑っていた。
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軽くSな小鈴。
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晴奈たちとフォルナが共に旅をするようになって、早3日目。
2日かけて森を抜けた晴奈一行は現在、小高い丘を越えていた。
「この丘を越えたトコが、リトルマインよ」
「ふむ」
「意外と早く着きますのね」
小鈴は杖をつきながら、ゆっくりと坂を上っていく。
「もう3日くらいかかるかなーと思ってたけど、意外にフォルナちゃん、脚が強いのね」
「ええ。セイナほどではありませんが、わたくしも毎日運動していますもの」
フォルナは晴奈の素性を理解してから、「セイナ」と呼ぶようになった。
「それは感心だな」
三人の中で最も体力のある晴奈は、何の苦もなく坂道を上っている。他の二人が額に汗を浮かべているのに比べ、晴奈は息切れすらしていない。
「この分だと、大体あと1時間くらいで着きそうね。ちょうど、お昼時ってトコかしら」
「美味しいご飯が、いただけそうですわね」
「そうだな」
「んふふー、それはどーかなぁ」
同意する晴奈に対して、小鈴はニヤニヤしながら答えを濁す。
「鉱山の近くにある温泉地だから、水はかなりの硬水よ。オマケに地下水の大半は炭酸入り。何にも考えずに飲んだら……」
「ごぶ、ゲホッ!? し、舌が割れる!」
「んひゃ、ひゃ、……鼻が痛ぁい!」
「だーから言ったでしょ、んふふふ」
リトルマインの南側に沸いていた炭酸水の鉱泉を見つけ、晴奈とフォルナは一気にあおってみた。結果は前述の通りである。
「はー、はーっ、……くは、のどがただれるようだ」
「涙が出てきてしまいますわ……」
「あたしもちょっとくらいパチパチする程度の、軟水の炭酸水なら好きだけど、コレはやり過ぎよね。あたしも昔飲んでみて悶絶したわ。……んふふふふふ」
小鈴は悶える晴奈たちを見て、口に手を当てて笑っている。
「ひどい方、コスズさん」
フォルナはハンカチを鼻に当てながら、グスグスと涙を流している。晴奈も腹と口に手を当てながら、げっぷを押さえようとする。
「げふ、失敬。……ゲプ」
「んふふふ、アハハハ……」
二人の真っ赤な顔を見て、小鈴は笑い転げていた。
「……くっくく、くく。あー、ゴメンねぇ、ホントに。おわびにさ、この街で美味しいご飯ご馳走したげるから」
「げふ、……あるのですか?」
「水が悪いと、グス、言っていたのに」
「ま、普通に飲むのはきついけど、料理に使うと美味しいのよ、硬水って」
「ほう、……げふ」
「ま、付いてきて付いてきて」
小鈴はまだ涙目の二人に手招きし、街の中心へと歩いていった。
三人はリトルマインの食堂に入り、小鈴が注文する。
「ミートソースのパスタ、3人前」
「かしこまりましたー。ミート3、お願いしまーす」
田舎に似合わない、フリルつきのエプロンをかけた短耳のウエイトレスがきびきびと注文をメモし、厨房へ指示を送る。
「ぱすた、とは?」
「麺類のことですわ、セイナ」
「ほう。そばとか、うどんと似たようなものか」
「ま、そんな感じ。ココはさっきの炭酸水を使って、麺をゆでてるの」
晴奈とフォルナは先ほどの激痛を思い出し、揃って鼻を抑える。
「それは……、また口や鼻が痛くなりそうな」
「本当に、美味しいんですの?」
「ま、食べてみて食べてみて」
10分ほどして運ばれてきたパスタを見て、晴奈とフォルナは顔を見合わせる。
「……」「……」
「ほら、食べなって」
「は、はい」「では、いただきます」
二人は恐る恐る、パスタを口に運ぶ。
「……あら?」「お?」
ちゅるりと飲み込み、二人は目を輝かせた。
「美味しい!」「驚いたな、確かにうまい」
「でしょー? 硬水で麺をゆでると、超美味しいのよ」
「へぇ……、知りませんでしたわ」
「同じく。これほどうまいとは」
晴奈はもう一口、パスタを口に運ぶ。と、そこで小鈴が唖然とした。
「……晴奈ぁ。もうちょっと教えなきゃいけないコト、あるわね」
「ずずー。……え?」
「セイナ、音を立てては……」
ズルズルと音を立てて麺をすする晴奈に、小鈴とフォルナは小声で注意した。
「まずいのか?」
「ええ」「うん」
晴奈がふと店の奥に目をやると、先ほどのウエイトレスが背を向けて笑っていた。
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