黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・伏傑抄 3

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    麒麟を巡る話、第604話。
    一縷の望み。

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    3.
     病院へ向かう途中、葛は大火に色々と質問をぶつけていた。
    「魔力はもう戻ったの?」
    「本来の3~4割と言ったところだな。『テレポート』程度であれば問題無く使用できるが、あまり高出力なものは乱発できん」
    「コントンさん、ずっとこっちにいるけど、いなくて寂しくない?」
    「特に思わんな。寂しがるのはむしろ、向こうの方だろう」
    「そっかなー。ま、いいや。
     あ、そだ、姉貴がセイナばーちゃんの刀を使ってたんだけどさ」
    「『蒼天』を? 不可能だろう。あれは晴奈以外には使えんように設定してある」
    「さっき言ってた変化術でばーちゃんに変身して、無理矢理使えるようにしてたみたい」
    「ふむ……。見た目だけでなく、遺伝子や魂まで操作したのか?
     とすれば相当危険性の高い術だな。人格崩壊や自己免疫疾患を誘発しそうなものだ。癌と言っていたのは恐らく、それに類する症状なのだろう、な」
    「いで、ん、……んー? ……えっと、まあ、危ない術だって言うのは、ホントそう思う。
     でさ、姉貴と戦った時に、あたしソレ折っちゃって」
    「『蒼天』をか?」
     淡々と答えていた大火が、そこで細い目を見開いた。
    「う、うん。無我夢中だったとは言え、折角タイカさんが作ってくれた刀だったのに、悪いコトしちゃったなーって。ごめんなさい、タイカさん」
    「まあ、過ぎたことは仕方無い。……が、よもや俺の神器を折るとは。相当に腕を上げているようだ、な。
     となると、『星剣舞』も完全に会得したのか?」
    「多分。……あ、ソレでね。戦ってる最中、あたし、変なトコに飛ばされちゃって。ソコでセイナばーちゃん的な人に――その人はばーちゃん本人じゃないって言ってたけど――コツみたいなのを教えてもらってー」
    「要領を得んな。それも詳しく聞いてみたいところだが……」
     話しているうちに、一行は病院に到着した。

     葵の病室の前まで来たところで、ドアがすっと開く。
    「あれ?」「あ、……と」
     中から出てきたのは、ルナとマークだった。
    「ルナさん、……も、姉貴のお見舞い?」
    「ええ、そう、ね。もう帰ろうかと思ってたけど、……大先生に診てもらうの?」
     葛の背後に目を向けたルナに、葛が応じる。
    「うん。もしかしたらって」
    「そう。じゃあ、一緒に見ててもいいかしら? 後学のために」
    「タイカさん、いい?」
     振り向いて尋ねた葛に、大火は短く答えた。
    「構わん」
    「ありがとう。……えーと、マーク。あんたも見とく?」
    「はい、是非」
     どことなくぎこちない空気の中、全員が病室に入った。
    「あ、タイカさん。その『狼』の人が、姉貴を診てくれた人だよー」
    「そうか」
     大火はマークに向き直り、淡々と会話を交わす。
    「診断書はあるか?」
    「え、ええ。これです」
    「ふむ……。骨格の異常、内臓と筋肉の癒着、神経系の混乱・迷走、……よくもここまでダメージが蓄積されたものだ」
    「正直、生きてるのが不思議に思えます」
    「葵が本来持っている身体能力に起因するのだろう。一聖から聞いたが、黄家の血を引く人間には超回復力が備わっているそうだから、な」
    「『超回復力』と言うと?」
    「致命傷を負い死の淵にあっても、そこからほぼ完全に回復できる、驚異的な自然治癒力の持ち主だと言うことだ。
     とは言え症状は相当に重篤だ。その力を以ってしても、こうしてどうにか小康状態を保てる程度にしか回復できないらしい」
    「何と言うか、……想像を絶する世界ですね。改めて人体の神秘を痛感します」
    「あのー」
     と、葛がおずおずと手を挙げる。
    「ソレで、どうなの? 姉貴、治せそう?」
    「少し待て」
     大火は診断書をマークに返し、それから葵の額に手をかざして、そのまま黙り込んだ。
    「……」
    「何してる感じ?」
     微動だにしない大火に不安を覚え、葛はこそっと一聖に耳打ちする。
    「探ってんだよ。魔術的な感じで」
    「どう言うコト?」
    「葵があんな風になってんのは、魔術の影響だ。だったらその魔術を解析して解除できれば、病状も回復するってワケだ」
    「対象の魔術を使用した期間が短いか、あるいは影響が小さければ、な」
     と、大火が顔を挙げた。
    「だが状況は、それで対応できる域を越えている。
     既に物理的な変質を起こして長いために、魔術の影響に関係無く病状が進行しているのだ」
    「……つまり?」
     不安げに尋ねる葛に、大火は残酷な返事を返した。
    「俺に治療はできん」
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