黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・再儡抄 1

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    麒麟を巡る話、第609話。
    いがみ合う最高幹部。

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    1.
    「……」「……」「……」
     マーク一家の屋敷、通称「貧乏神邸」。
     使われていなかった一室にまとめて放り込まれたシエナ、イビーザ、トレッドの3人は、互いに背を向けて椅子に座っていた。
    「シエナ。エルナンド」
     と、トレッドが二人の方を向き、口を開く。
    「なによ」「なんだ」
     二人に揃ってにらまれるが、トレッドは臆さず続ける。
    「既に拘束されてから1週間は経とうとしています。党の状況がどうなっているか……」
    「さあね。新聞もラジオも無し。テンコちゃんにもマークにも会わせてもらえない。アオイも来ない。コレじゃ何にも分かんないわ」
    「いや、アオイ嬢が来ない時点で、党が最悪の状況に至っていることは明白ではないか?」
     憮然顔ながらも、イビーザが応じる。
    「彼女の力と知恵を以ってすれば、我々がここにいることは容易に予測できるはずだ」
    「ああ、以前にそんな話を聞いたような覚えがありますな。とは言え、その意見はいささか悲観的過ぎる気もします。
     詳しい話は聞いていませんが、今回のケースとは大きく異なるでしょうし。何しろ、今回はテンコ氏やその姉が関与しているのですから」
    「それもそうか。相手が相手だ、痕跡を残さず消えることも可能だろう」
    「そんな話が何になるって言うのよ」
     シエナは再び、トレッドたちに背を向ける。
    「机上の空論もいいところじゃない。『テンコちゃんが爆発したとすれば』とか論じれば、テンコちゃんが本当に爆発するワケ?」
    「……シエナ、落ち着いて下さい」
    「フン。やるコト無いんだから、落ち着くより他に無いでしょ?」
    「痴話喧嘩はよそでやってくれませんかな、総裁殿」
     イビーザも背を向ける。
     が、逆にシエナがくるりと振り向いた。
    「痴話喧嘩? アンタ、まだアタシとフリオンが付き合ってるとでも思ってるの?」
    「違うとは言わせませんぞ。会議やら相談やら、何かにつけて政務部長と一緒にいるではないですか。それで恋愛関係が無いとは到底……」「待って下さい、エルナンド」
     トレッドもイビーザに向き直る。
    「それは誤解です。根拠としても乏しい」
    「『客観的に見て』かね? 自分のことだと言うのにか?」
    「そうです。主観的に見ても、事実と違うと断言します」
    「どうだかな。仮に私が一緒に拘束されていなければ、二人っきりで何かしら……」
    「やめてよ。考えたくもないわ」
     一週間に渡る拘留で、三人とも平静を半ば失っているのが、言葉の端々に垣間見える。
     特に普段から感情的なシエナは、あからさまに苛立っていた。
    「くそじじいの妄言なんか聞き飽きたわ。もっと建設的な話が聞きたいのよ」
    「く、くそじじい、ですと?」
     あからさまな罵倒に、普段から斜に構えているイビーザも面食らった様子を見せる。
    「シエナ、今のはあんまりでしょう」
    「アンタもアンタよ、いっつもいっつも日和見してばっか。女の腐ったヤツってアンタみたいなのを言うのね」
    「ちょ、ちょっと……」
    「いい加減にしていただけませんかな、総裁、いや、シエナ。
     機会があれば一度言っておこうと思っておりましたが、あなたの放言、暴言に我々は何度、嫌な思いをさせられたことか! まるで思慮が無い! それに品性も、機知もだ!
     到底、大政治結社の長となる器ではありませんぞ!」
    「何よソレ、お小言? それともやっかみ? 自分なら器だって言いたいの?」
    「……ええ、そうですとも! 少なくとも白昼堂々、消火器を投げ捨てるような野蛮人よりもずっと私が適任だと、皆もそう思っております! そうだろう、フリオン!?」
    「えっ、ええ、……あー、いや」
     急に話を振られ、反射的にうなずきかけたトレッドを見て、シエナは目を吊り上がらせる。
    「何ですって!? もう一度言ってみなさいよ、アンタたちッ!」
    「聞きたければ何度でも言ってやりますぞ!?」
    「やめて下さい、本当に、二人とも……」
     三者三様、苛立ちが臨界点に達しようとした、その時だった。
    「クスクスクスクス」
    「……!?」「な……」「だ、誰だ!?」
     唐突に割り込んできた笑い声に、三人は同時に振り返った。
    「ああ、これは失礼をばいたしました。どうぞ、お続け下さい」
     そこには白いローブを深く被った、気味の悪い女が立っていた。
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