黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・再儡抄 3

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    麒麟を巡る話、第611話。
    白猫党の新体制。

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    3.
     新たに総裁となったロンダには、白猫軍からは言うに及ばず、軍との関係が無い党員のほとんどからも、多くの支持が寄せられていた。
     前総裁の情緒不安定気味な振る舞いと対比されたことも一因だが、それを差し引いても、ロンダ自身の人柄が尊敬され、慕われるに値するものだったからである。

     それに加えて彼自身の手腕と度量、采配もまた、総裁の器に適うものだった。
    「停戦交渉は問題無くまとまりそうだ。総裁の思い切ったご英断が、功を奏したと言うところですな」
    「うむ」
     まずロンダは、それまで旧幹部陣の背後で暗躍し続け、反乱の折にはひらりと雲隠れして難を逃れていたヴィッカー博士に、「これ以上裏でこそこそと工作されては気に障って仕方が無い。どうせ画策するなら、表で堂々と振る舞ってほしい」と申し入れ、新たな幹事長に抜擢したのだ。
     その他、投獄されていたオラースとアローサについても以前と同様の地位に就かせ、空いた軍司令と政務部長のポストについても次官をスライドさせ、穏便に人事をまとめた。
     結果、党内にさらなる混乱を起こすことも無く、ロンダ体制は早期に軌道に乗ることができた。
    「当初の予定通り、統治および兵站の限界と考えられていた西方および央南の二地域については、全面的に撤退。今後の関係は軍事および内政による干渉を伴わないものとすることで、両地域の統治者と合意した」
    「結構。央中については?」
    「こちらも総裁のお心通り、と言ったところかな。
     これまで支配下においていた12の国および都市については、カンバスボックス基地のあるアイゼン王国と周辺の小国以外は全て撤退すると言うことで、一両日中に話はまとまるだろう。ついでに言えば、件の電波ジャック犯らも無罪放免。そのまま丁重に、市国へ返すことになった。
     しかし金火狐も現金なものだ」
    「うん?」
    「当初は央中全域からの撤退を要求していたと言うのに、いざ取引が活発だった友好国が戻ってくると見るや、『ほな、それ以外のとこは白猫さんにお任せします』と意見を翻すとは。いやいや、19代目はやり手と聞いていたが、なかなかドライな手の打ち方をする女のようだ。
     もしかすれば、相手方にも交渉の長期化を避ける狙いがあったのかも知れんがね。こちらとしても、整理を早々に付けるためには長々話している暇など、無いことであるし。向こうも協議に精を出すより、商売に力を注ぎたいのだろう」
    「ふむ……。初見の限りでは、温和な雰囲気の強い女性だったが。人は見かけによらんと言うことか。
     いや、まあいい。我々の思い描いた通りに進んでいると言うのであれば、何の文句も無い。よくやってくれた、幹事長」
     これまで邪険にされていたロンダから率直にほめられ、ヴィッカーは苦笑して返す。
    「いやいや、私は大した働きなどしていない。総裁の思い切りの良さが幸いしたのだ。
     くどいようだが、やはり央南やら西方やらにまで手を伸ばしたことは、前総裁の最大の失敗、愚にもつかん悪手に他ならない。あれをこうした形ですっきり挽回できたことは、何より大きい手柄だ」
    「ああ、確かにくどい。分かっているとも。分かっているからこそ、こうして手を引っ込めさせたわけだ。
     ところで……」
     一転、ロンダは顔を曇らせる。
    「アオイ嬢は見つかったか?」
    「いいや、まったく。央北、央中と捜索させているが、未だに何の情報も得られていない。……あまり総裁が考えたくない事態に至っているのかも知れんな」
    「と言うと?」
    「第一の可能性として、あの反乱のどさくさに紛れ、殺害されてしまったか。第二、何らかの思惑があってアオイ嬢は前総裁ら3名を連れ、どこかへ居を移したか。
     そして――私としては、最も現実ではあってほしくない可能性だが――アオイ嬢が自らあの反乱を企て、その最中に自ら去ってしまったか」
    「確かに三番目は考えたくないことだ。もしもあれがアオイ嬢の企みであったならば、今こうして私が就いた地位は仮のもの、泡沫も同然だと言うことになる。
     いや、私のことだけに留まらん。あれだけ大勢の党員と兵士の血が、あろうことかこの本拠、本営で流されたと言うのに、その地獄絵図がアオイ嬢の描いた図面だったと言うのか、……と」
    「いくら敬愛する預言者殿であったとしても、確かにあれが彼女の仕業であったとするならば、その敬愛も吹き飛んでしまう」
    「うむ……。
     しかしアオイ嬢がおらず、痕跡も無い今、何をどう論じたとて虚しいだけだ。我々が論じるべきは何を置いても、これからの現実だ」
    「ああ、承知している。……それを踏まえ、先程の仮説を今一度、論じねばならないだろう」
    「うん?」
     けげんな顔を向けたロンダに、ヴィッカーは新聞を差し出した。
    「これを見てくれ。あの三人組がこの期に及んで、まだ良からぬ画策をしているらしい」
    「あの三人組? ……まさか?」
     受け取った新聞の見出しには、こう書かれていた。

    「『反乱を企てたのはロンダ氏陣営』 チューリン元党首語る」
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