黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・再儡抄 6

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    麒麟を巡る話、第614話。
    悪魔と妖魔の代理戦。

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    6.
     その時だった。
    「クスクスクスクス」
     わざとらしい、耳障りな笑い声が、ドアの外から聞こえてきた。
    「こんなところまでご足労様です」
    「……難訓か」
     大火は刀を抜き、三人にその場を離れるよう、手で指示を送る。
    「何度言わせるおつもりですか。その名前には返事をしない、と」
     三人が奥の部屋に移ったところで、大火はため息混じりに言い直した。
    「では白雪」
    「はい、あなた」
     ドアが開き、氷細工のような絶世の美女が、その場に現れた。
    「今度はどんな御用でいらしたのですか」
    「これまでと同じ用事だ。即ち、お前の目論見を打ち砕く」
    「それは方便でしょう」
     難訓は一歩前に進み、どこからか魔杖を取り出した。
    「わたくしの目論見を潰すことだけが目的であるならば、初手であの三人を屠れば終わること。あれ以外にわたくしは、此度の騒ぎに対して有効な駒を持っていないのですから。
     こうしてわたくしが来るまで、のんびり話をしている理由にはなりません」
    「では何が目的だと?」
    「わたくしに会いに、……いえ、それはあり得ませんか。正確に言うなれば、わたくしがここに来るまで待っていた、と言うところでしょうか」
    「そうだ」
     大火も一歩、難訓に詰め寄る。
    「お前をここに引き寄せ、足止めするためだ」
    「ふむ。それは即ち、わたくしを拘束、あるいは封印するおつもりである、と」
    「そうだ」
    「あらあらあらあら」
     難訓もさらに一歩、前に進む。
    「わたくしと何度戦おうと、絶対に決着が付かぬことはご承知のはず。結果は分かりきっていると言うのに何故、そんなことをなさるのです」
    「俺が戦うと言ったか?」
     大火も一歩、踏み込む。
     握り拳ひとつ分まで互いに近付き、二人はなおもにらみ合う。
    「では誰が戦う、と」
    「弟子たちだ」
     次の瞬間――大火と難訓の、それぞれの背後に線が走り、2階にあった部屋は屋敷ごと、ぶつ切りにされた。

     柱や梁から切り離され、二人が立っていた床は当然、地面へと落下していく。
     それでも二人は、にらみ合いをやめない。互いに魔術で宙に浮き、互いを牽制し合う。
    「弟子如きがわたくしに、何をしようと言うのです」
    「お前も元は俺の弟子だ。序列も実力も、お前と同然だ」
    「わたくしと同然?」
     作ったような笑顔を浮かべていた難訓の顔に、険が差す。
    「そんな者は、この世に居りはしない。あなたを除いては」
    「つくづく、歪んだ奴め。未だに俺に憧れ、そして俺を嘲るのか」
    「それがあなたに対する、わたくしの最大限の礼儀であり、そして同時に、最大限の侮辱だからです」
     難訓が言い放つとほぼ同時に、四方八方から火術と風術の槍が、難訓を目がけて飛んでくる。
    「『リヴァイアスキン』」
     しかし難訓は事も無げに防御術を発動させ、その槍を防ぎ切る。
    「あなた御自らが戦わぬと言うのに、わたくしが戦う道理があるものですか。あなたが手先を向けると言うのならば、わたくしもわたくしの手先に、相手をさせましょう。
     フュージョン。セリカ。カムリ。コロネット。チャージャー。始末なさい」
     難訓が呼ぶと同時に、周囲にドレス姿の人形たちが現れる。
    「かしこまりました、主様」
     一瞬のズレも無く、5人がまったく同じ言葉を口にする。
     大火も難訓から目を離さず、周囲に命じた。
    「応戦しろ。こいつは俺が止めておく」
    「了解よ、大先生」
     青と黒のドレスを着た人形――フュージョンの前に、ルナが現れる。
    「こちらは引き受けました!」「あたくしもご一緒します」
     赤と白、そして青と白のドレス――セリカとカムリの前に、ウォーレンと楓が立ちはだかる。
    「相手を務めさせていただきます」「同じく」
     そして赤と灰色、そして青と灰色のドレスの二人には、パラとフィオが相対した。
    「……」
     難訓は一瞬、周囲を見渡し、ふたたび大火に目線を戻した。
    「このまま浮いているおつもりですか」
    「この程度で音を上げるのか?」
    「まさか。わたくしの心配は」「目立ちたくない、か?」「その通りでございます」
     大火は元から細い目をさらに細め、うなずく。
    「お前と違って、俺は他人へいたずらに苦しみを与えることを趣味にはしていない。
     お前を無意味にいたぶる気は無いし、落ち着いて様子を眺めていたいと言うのならば、応じよう」
    「ご厚情、痛み入ります」
     二人は互いをにらんだまま、地上へ降りていった。

    白猫夢・再儡抄 終
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