「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・封魔抄 3
麒麟を巡る話、第617話。
三魔女の策略。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「策を仕掛ける?」
尋ね返した渾沌に、ルナは「ええ」とうなずく。
「魔力の無い状態で大先生が接近すれば、難訓は罠があるものと警戒するわ。そうなれば難訓はあたしたちの手を探るため、人形を差し向けてくる。
ここまでは、容易に予想が付くわ」
「そうね。そこでわたしたちが出張り、機を見計らって先生の魔力を復旧させる。人形たちを一掃し、難訓一人になったところを囲み、首尾よく行くなら拘束および封印、うまく行かなくとも撤退させる、……そう言う手筈だけど」
「でもその作戦、人形のことを軽視してると思うんだけど。確かに大先生が本調子に戻れば、人形が10体いようと100体いようと一掃できるでしょうね。
でもその前に先生が拘束されるか、もしくは重傷を負ったら?」
「……そうね。確かに前科があるわね、先生。神話にされるレベルで」
「でしょ? あの人いつも自信満々だけど、時々とんでもないポカするじゃない。魔力無くしたのだって、白猫の研究所に無警戒でホイホイ飛び込んだからだし」
「言えてるわね。わたしもとばっちり受けたし。
となると先生をフォローする形で、もう少し策をひねっておいた方がいいわね」
と、二人で話し合っているところに、一聖がやって来た。
「さっきパラと話してたんだが、いい手を思い付いたぜ。お前らが話してたコトと絡めれば、とことん難訓をコケにできるかも知れねー」
「え?」
「いいか、こーゆー手だ」
一聖はルナと渾沌を引き寄せ、こしょこしょと耳打ちした。
フュージョンが剣を振り上げ、ルナとの距離を詰める。
「しぇあッ! りゃあああッ!」
ルナも刀を抜き、フュージョンの攻撃を弾く。
「なかなかいい剣さばきじゃない」
「わたくしの本領は、データの収集にございます故」
「……?」
フュージョンの言葉の意味を図りかね、ルナはわずかに首を傾げた。
「どう言う意味かしら」
「わたくしは様々なデータを集め、この身に蓄積して参りました。フュージョン(融合)の名は、それに因みます。
わたくしたちの前世代が集めた、対克大火様を含めた戦闘データ。わたくしたち世代が集めた、あなた方のデータ。
故にわたくしは、あなた方のことを知り尽くしていると言っても、過言ではございません」
そう言って、フュージョンは剣を構え直す。
「ちなみに申しますと、あなた方が破壊したトリノ、シェベル、そしてインパラのデータも、わたくしの中に蓄積されております。
3人の恨みもまた、わたくしの中に……」「シェベルとインパラの恨み?」
それを聞いて、ルナは鼻で笑う。
「もしかしてあんた、データの転送が止まったら、そいつが死んだものって思ってるの?」
「結果的には相違が無いものと思われますが」
「結果から言えば、全然違う話よ。……ま、聞きたいならその辺り、きっちり説明してあげてもいいけど?」
「不要でございます」
フュージョンはそう返し、ふたたび剣を振り上げて襲いかかってきた。
「あー、なるほどね」
それを見たルナはかわしざまに体勢を落とし、足払い気味に蹴りを放つ。
「昔のパラの癖があるわ。上段から振り下ろして、次は横に薙ぐって言う、二段構えの斬り方。
それだと二太刀目、どうしても左脚の荷重が抜けるから、そこ蹴飛ばされたら体勢崩すわよっつって、やめさせたのよね。
あの子は見た目より重たいから、体勢崩すと転びやすいし。あんたもよね?」
「えっ……」
ルナの言う通り、左脚を蹴飛ばされたフュージョンは、後方に大きくのけぞっている。
その隙を狙い、ルナは肘鉄をフュージョンの鳩尾に叩きつけた。
「あわっ!?」
人形である故に、人体の急所がそのまま弱点とはならないが――それでものけぞったところに後押しされ、フュージョンは完全に倒れた。
「う、く……」
上半身を起こしかけたところで、ルナの右足がフュージョンの胸を押し付ける。
そして彼女の鼻先に刀が突きつけられたところで、ルナはニヤッと笑った。
「なんでそんなこと知ってるのか、って言いたげね。それとも、もう何かしら気付いてるんじゃない?
丁度今、あんたのご主人様は別のことに気を取られてる真っ最中だから、戦ってる振りしてくれればその間に全部教えてあげるけど、どうする?」
「……」
フュージョンはルナの脚をつかみ、押し返しながらも、小声で返事した。
「応じます。ご教授をお願いいたします」
「よしよし」
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3.
「策を仕掛ける?」
尋ね返した渾沌に、ルナは「ええ」とうなずく。
「魔力の無い状態で大先生が接近すれば、難訓は罠があるものと警戒するわ。そうなれば難訓はあたしたちの手を探るため、人形を差し向けてくる。
ここまでは、容易に予想が付くわ」
「そうね。そこでわたしたちが出張り、機を見計らって先生の魔力を復旧させる。人形たちを一掃し、難訓一人になったところを囲み、首尾よく行くなら拘束および封印、うまく行かなくとも撤退させる、……そう言う手筈だけど」
「でもその作戦、人形のことを軽視してると思うんだけど。確かに大先生が本調子に戻れば、人形が10体いようと100体いようと一掃できるでしょうね。
でもその前に先生が拘束されるか、もしくは重傷を負ったら?」
「……そうね。確かに前科があるわね、先生。神話にされるレベルで」
「でしょ? あの人いつも自信満々だけど、時々とんでもないポカするじゃない。魔力無くしたのだって、白猫の研究所に無警戒でホイホイ飛び込んだからだし」
「言えてるわね。わたしもとばっちり受けたし。
となると先生をフォローする形で、もう少し策をひねっておいた方がいいわね」
と、二人で話し合っているところに、一聖がやって来た。
「さっきパラと話してたんだが、いい手を思い付いたぜ。お前らが話してたコトと絡めれば、とことん難訓をコケにできるかも知れねー」
「え?」
「いいか、こーゆー手だ」
一聖はルナと渾沌を引き寄せ、こしょこしょと耳打ちした。
フュージョンが剣を振り上げ、ルナとの距離を詰める。
「しぇあッ! りゃあああッ!」
ルナも刀を抜き、フュージョンの攻撃を弾く。
「なかなかいい剣さばきじゃない」
「わたくしの本領は、データの収集にございます故」
「……?」
フュージョンの言葉の意味を図りかね、ルナはわずかに首を傾げた。
「どう言う意味かしら」
「わたくしは様々なデータを集め、この身に蓄積して参りました。フュージョン(融合)の名は、それに因みます。
わたくしたちの前世代が集めた、対克大火様を含めた戦闘データ。わたくしたち世代が集めた、あなた方のデータ。
故にわたくしは、あなた方のことを知り尽くしていると言っても、過言ではございません」
そう言って、フュージョンは剣を構え直す。
「ちなみに申しますと、あなた方が破壊したトリノ、シェベル、そしてインパラのデータも、わたくしの中に蓄積されております。
3人の恨みもまた、わたくしの中に……」「シェベルとインパラの恨み?」
それを聞いて、ルナは鼻で笑う。
「もしかしてあんた、データの転送が止まったら、そいつが死んだものって思ってるの?」
「結果的には相違が無いものと思われますが」
「結果から言えば、全然違う話よ。……ま、聞きたいならその辺り、きっちり説明してあげてもいいけど?」
「不要でございます」
フュージョンはそう返し、ふたたび剣を振り上げて襲いかかってきた。
「あー、なるほどね」
それを見たルナはかわしざまに体勢を落とし、足払い気味に蹴りを放つ。
「昔のパラの癖があるわ。上段から振り下ろして、次は横に薙ぐって言う、二段構えの斬り方。
それだと二太刀目、どうしても左脚の荷重が抜けるから、そこ蹴飛ばされたら体勢崩すわよっつって、やめさせたのよね。
あの子は見た目より重たいから、体勢崩すと転びやすいし。あんたもよね?」
「えっ……」
ルナの言う通り、左脚を蹴飛ばされたフュージョンは、後方に大きくのけぞっている。
その隙を狙い、ルナは肘鉄をフュージョンの鳩尾に叩きつけた。
「あわっ!?」
人形である故に、人体の急所がそのまま弱点とはならないが――それでものけぞったところに後押しされ、フュージョンは完全に倒れた。
「う、く……」
上半身を起こしかけたところで、ルナの右足がフュージョンの胸を押し付ける。
そして彼女の鼻先に刀が突きつけられたところで、ルナはニヤッと笑った。
「なんでそんなこと知ってるのか、って言いたげね。それとも、もう何かしら気付いてるんじゃない?
丁度今、あんたのご主人様は別のことに気を取られてる真っ最中だから、戦ってる振りしてくれればその間に全部教えてあげるけど、どうする?」
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