「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・封魔抄 4
麒麟を巡る話、第618話。
謀り合い。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
大火と二人で地上に降り、そのままにらみ合っていた難訓が、不意に口を開いた。
「それで、あなたの策は?」
「策だと?」
尋ねた大火に、難訓は嘲った笑みを向ける。
「見たところ、あなたは現在、魔力の大部分を失っているご様子。ですがそんな状態で、何の策も持たず、わたくしの前に現れるとは考え辛い。
であれば何らかの策を弄し、わたくしに一泡吹かせてやろうと考えていらっしゃるのでしょう」
「そんな策があるとして、俺がそれを実行する前に、お前に詳(つまび)らかに説明すると思うのか?」
「あなたは年甲斐もなく悪戯を好まれ、また、恥知らずな程に自意識過剰であり、他人を喜々として陥れ、その罠に嵌った者を嘲ることに喜びを見出す、幼稚で下品で卑劣なお方。
そんなあなたが罠に嵌める対象であるわたくしに、何の説明もされぬわけがありません。されぬままでは、折角の愉悦も半減すると言うもの。
むしろ、今もご自身が組み立てた策について、話したくて話したくて仕方が無いはず」
「……ククク、なるほどなるほど。そう思うか」
大火はニヤッと笑い、語り始めた。
「では順を追って説明してやろう。
確かに今の俺は、魔力の大半を失っている。しかし回復手段を準備しており、その実行を今、進めている最中だ。
じきに俺の魔力は、元通りとは行かぬまでも、8割方回復する見込みだ」
「回復した後、どのように行動するおつもりでしょう」
「魔力を回復し次第、弟子たちはここから退避する。同時に、俺はここを中心に大規模な攻撃魔術を放つ。お前の人形はその攻撃により、全て破壊されるだろう。
お前の手駒が無くなると同時に、弟子たちはこの場に戻ってくる。そして一人になったお前を囲み、一斉に攻撃する。俺からの一切の捕捉、妨害、攻撃が無効化されるお前であっても、俺の弟子からの攻撃であれば、その無効化は起こりえない。
集中攻撃によりお前を撃破し、可能ならば封印する。それが俺の作戦だ」
「なるほどなるほど。なんと考えの浅いこと」
難訓は目を細め、嘲った笑みを浮かべる。
「その浅はかな企み、既に潰しております。
わたくしの方でも、あなたが『麒麟の山』に人をやり、『システムF5』の封印を解くことで魔力を転送・回復しようとしていることは把握および推理しております。
ですがわたくしとしても、今更あんな小娘に復活されてはたまりません。ですので前もって、『麒麟の山』には大量のゴーレムを配置しております。大方、送った者たちはことごとく、ゴーレムにすり潰されておりましょう。
よしんばゴーレムを一つ残らず撃破し、あまつさえ封印が解かれてしまったとしても、その前にあなたの駒は無力化し、わたくしとあなたの二人きりの状況にいたします。そのためにわざわざ、人形たちをここに集めたのですから。
そして見たところ、まだあなたは魔力を回復させていらっしゃらない。どうやらあなたの目論見は、潰えてしまったご様子。
一方で、駒同士の戦いもまだまだ終わりが見えない。そのような状態で、あなたはどうやって駒たちの支援に回ろうというおつもりでしょうか」
「……」
答えない大火に、難訓はにやあっと笑いかける。
「魔力の無いあなたなど、何ら恐るるに足りません。
さあ、そろそろわたくしが動くといたしましょう。わたくしたちの間にかかった呪い故、わたくしはあなたに、そしてあなたはわたくしに、何の干渉もできない。
一方わたくしは、わたくしの駒がどうなろうと何ら関係の無い、秘策を有しております。それを止めることも、今の今までこうしてわたくしの目の前にいたあなたには、到底できぬ話。
この戦いは最初から、わたくしの勝ちが決まっていたのです」
やがて難訓の笑みに、嘲りの色が混じり始めた。
「そろそろ終わらせるといたしましょう。あなたはここで、指をくわえてご覧になっていて……」「やっぱりね」
と――大火の方向から、彼のものとは明らかに違う、女の声が聞こえてきた。
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謀り合い。
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4.
大火と二人で地上に降り、そのままにらみ合っていた難訓が、不意に口を開いた。
「それで、あなたの策は?」
「策だと?」
尋ねた大火に、難訓は嘲った笑みを向ける。
「見たところ、あなたは現在、魔力の大部分を失っているご様子。ですがそんな状態で、何の策も持たず、わたくしの前に現れるとは考え辛い。
であれば何らかの策を弄し、わたくしに一泡吹かせてやろうと考えていらっしゃるのでしょう」
「そんな策があるとして、俺がそれを実行する前に、お前に詳(つまび)らかに説明すると思うのか?」
「あなたは年甲斐もなく悪戯を好まれ、また、恥知らずな程に自意識過剰であり、他人を喜々として陥れ、その罠に嵌った者を嘲ることに喜びを見出す、幼稚で下品で卑劣なお方。
そんなあなたが罠に嵌める対象であるわたくしに、何の説明もされぬわけがありません。されぬままでは、折角の愉悦も半減すると言うもの。
むしろ、今もご自身が組み立てた策について、話したくて話したくて仕方が無いはず」
「……ククク、なるほどなるほど。そう思うか」
大火はニヤッと笑い、語り始めた。
「では順を追って説明してやろう。
確かに今の俺は、魔力の大半を失っている。しかし回復手段を準備しており、その実行を今、進めている最中だ。
じきに俺の魔力は、元通りとは行かぬまでも、8割方回復する見込みだ」
「回復した後、どのように行動するおつもりでしょう」
「魔力を回復し次第、弟子たちはここから退避する。同時に、俺はここを中心に大規模な攻撃魔術を放つ。お前の人形はその攻撃により、全て破壊されるだろう。
お前の手駒が無くなると同時に、弟子たちはこの場に戻ってくる。そして一人になったお前を囲み、一斉に攻撃する。俺からの一切の捕捉、妨害、攻撃が無効化されるお前であっても、俺の弟子からの攻撃であれば、その無効化は起こりえない。
集中攻撃によりお前を撃破し、可能ならば封印する。それが俺の作戦だ」
「なるほどなるほど。なんと考えの浅いこと」
難訓は目を細め、嘲った笑みを浮かべる。
「その浅はかな企み、既に潰しております。
わたくしの方でも、あなたが『麒麟の山』に人をやり、『システムF5』の封印を解くことで魔力を転送・回復しようとしていることは把握および推理しております。
ですがわたくしとしても、今更あんな小娘に復活されてはたまりません。ですので前もって、『麒麟の山』には大量のゴーレムを配置しております。大方、送った者たちはことごとく、ゴーレムにすり潰されておりましょう。
よしんばゴーレムを一つ残らず撃破し、あまつさえ封印が解かれてしまったとしても、その前にあなたの駒は無力化し、わたくしとあなたの二人きりの状況にいたします。そのためにわざわざ、人形たちをここに集めたのですから。
そして見たところ、まだあなたは魔力を回復させていらっしゃらない。どうやらあなたの目論見は、潰えてしまったご様子。
一方で、駒同士の戦いもまだまだ終わりが見えない。そのような状態で、あなたはどうやって駒たちの支援に回ろうというおつもりでしょうか」
「……」
答えない大火に、難訓はにやあっと笑いかける。
「魔力の無いあなたなど、何ら恐るるに足りません。
さあ、そろそろわたくしが動くといたしましょう。わたくしたちの間にかかった呪い故、わたくしはあなたに、そしてあなたはわたくしに、何の干渉もできない。
一方わたくしは、わたくしの駒がどうなろうと何ら関係の無い、秘策を有しております。それを止めることも、今の今までこうしてわたくしの目の前にいたあなたには、到底できぬ話。
この戦いは最初から、わたくしの勝ちが決まっていたのです」
やがて難訓の笑みに、嘲りの色が混じり始めた。
「そろそろ終わらせるといたしましょう。あなたはここで、指をくわえてご覧になっていて……」「やっぱりね」
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「策はある。まず可能な限り相手に接近し、反撃が来るよりも早く全戦力を一点に集中させて正中線に沿って攻撃」
「それってあさりよしとおのネタでは……ただ突進して力任せに殴るだけ……」
「それってあさりよしとおのネタでは……ただ突進して力任せに殴るだけ……」
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