「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・封魔抄 5
麒麟を巡る話、第619話。
最大級の罵倒と侮辱。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「……え?」
全くの予想外だったのだろう――難訓の口から、虚を突かれたような声が漏れた。
「自爆でもさせるつもりだったのかしら? それともゴールドコーストの時みたいに『データ集め』をさせて、強化した人形に殲滅させようって?」
「お、お前は? あの方では……!?」
「見事に引っかかってくれたわね。わたしが先生じゃないって、全然気付いてなかったでしょ?
流石は葵が作った術だわ。あなたすら、こんなにあっけなく騙せるほどだもの」
「お前は誰だ!?」
難訓の声色が変わる。
そして同時に――大火も渾沌に、姿を変えた。
「克渾沌。克大火の九番弟子よ」
「あの方はどこにいる!? いつから、お前と……!?」
「入れ替わったのは、あなたへ最初に攻撃を仕掛けた時。
いくらあなたでも、あれだけ撃ち込まれれば、どうしても意識はそっちに向かうし、どんなに短時間でも魔術を発動させるには、集中しなきゃならない。
先生から目を離したその一瞬で、わたしと先生は入れ替わってたのよ。後はずっとあなたをにらんで、気を引いてたってわけ。
ついでに言うと、もう既に先生の魔力は回復したわよ。ご自慢のゴーレム部隊も、葵たちの敵じゃなかったみたいね」
「質問に答えろ! あの方はどこにいるのだ!?」
「いまさらそれを聞いても、仕方無いんじゃないかしら?
もう手遅れよ。あなたの勝ちは、もうあり得ない」
難訓の顔に、ふつふつと怒りが満ち始める。
「貴様あああああ……ッ!」
「もう一つ教えてあげる。あなたの可愛いお人形さんたちは、わたしたちが掌握したわよ」
「馬鹿を言うな! そんなことができるはずが無い!」
「何の自信があってそんなこと言えるのかしら? 自分が創ったものだから、無条件で自分を愛してくれるとでも? だとしたら無様ね。病的なナルシストだわ。
はっきり言ってあげる。あの子たち全員、あなたのことが心底、大嫌いですって。よっぽど普段からひどいことばっかりしてたのね、あなた」
「ふざけたことを! いいだろう、ならば報いを受けさせてやる!」
「あら、自爆させるの? もうできないわよ」
渾沌の言った通り、難訓は呪文を唱えたり、手で印を結んだりするが、周囲に爆発音が轟くことも、火柱が上がることも無い。
その様子をニヤニヤと笑いながら見ていた渾沌が、馬鹿にしたように続ける。
「何故先生がここにいないか、そして今までどこにいたのか。ここまで言ってあげたらいい加減、分かるでしょ?」
「……~ッ」
青白かった難訓の顔は、今は真っ赤に染まっていた。
「先生からあなたをとことん馬鹿にしてやれって言われてるから、存分にさせてもらうわ。
克難訓、あなたは自分が創ったモノからとことん嫌われる、最低最悪の創造主よ。実の娘からは唾を吐きかけられ、人形たちからは揃ってそっぽを向かれる。
そんなあなたがこの世界を支配しよう、自分の創造物で世界を満たそうですって? あはは、いい妄想ね! 寝言もいいところだわ!
おかしくってたまらないわ、あーっははははははははっ!」
「死ねええええええーッ!」
難訓が絶叫し、渾沌に向けて魔術を放とうとする。
だがその瞬間――大量のナイフ、槍、剣、グレネード弾、そしていくつもの魔術が、彼女に直撃した。
「げぼあっ、がふっ、ぐ、あがぁ……っ!?」
人形たち全員からの、城一つ落とせる程の攻撃を一身に受け、難訓は彼方へと弾き飛ばされた。
「全弾命中いたしました。ですが」
そう告げて、フュージョンは深々と、大火に頭を下げた。
「ああ、どうやら逃げたようだな」
「残念ながら、行動を停止させるまでには至りませんでした。申し訳ございません」
「構わん。少なくとも奴に対して、可能な限りのダメージを与えることはできただろう。よくやった」
「精神的ダメージも含めて、ね」
横に現れ、そう付け足したルナに、大火はニヤッと口角を上げて見せた。
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最大級の罵倒と侮辱。
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5.
「……え?」
全くの予想外だったのだろう――難訓の口から、虚を突かれたような声が漏れた。
「自爆でもさせるつもりだったのかしら? それともゴールドコーストの時みたいに『データ集め』をさせて、強化した人形に殲滅させようって?」
「お、お前は? あの方では……!?」
「見事に引っかかってくれたわね。わたしが先生じゃないって、全然気付いてなかったでしょ?
流石は葵が作った術だわ。あなたすら、こんなにあっけなく騙せるほどだもの」
「お前は誰だ!?」
難訓の声色が変わる。
そして同時に――大火も渾沌に、姿を変えた。
「克渾沌。克大火の九番弟子よ」
「あの方はどこにいる!? いつから、お前と……!?」
「入れ替わったのは、あなたへ最初に攻撃を仕掛けた時。
いくらあなたでも、あれだけ撃ち込まれれば、どうしても意識はそっちに向かうし、どんなに短時間でも魔術を発動させるには、集中しなきゃならない。
先生から目を離したその一瞬で、わたしと先生は入れ替わってたのよ。後はずっとあなたをにらんで、気を引いてたってわけ。
ついでに言うと、もう既に先生の魔力は回復したわよ。ご自慢のゴーレム部隊も、葵たちの敵じゃなかったみたいね」
「質問に答えろ! あの方はどこにいるのだ!?」
「いまさらそれを聞いても、仕方無いんじゃないかしら?
もう手遅れよ。あなたの勝ちは、もうあり得ない」
難訓の顔に、ふつふつと怒りが満ち始める。
「貴様あああああ……ッ!」
「もう一つ教えてあげる。あなたの可愛いお人形さんたちは、わたしたちが掌握したわよ」
「馬鹿を言うな! そんなことができるはずが無い!」
「何の自信があってそんなこと言えるのかしら? 自分が創ったものだから、無条件で自分を愛してくれるとでも? だとしたら無様ね。病的なナルシストだわ。
はっきり言ってあげる。あの子たち全員、あなたのことが心底、大嫌いですって。よっぽど普段からひどいことばっかりしてたのね、あなた」
「ふざけたことを! いいだろう、ならば報いを受けさせてやる!」
「あら、自爆させるの? もうできないわよ」
渾沌の言った通り、難訓は呪文を唱えたり、手で印を結んだりするが、周囲に爆発音が轟くことも、火柱が上がることも無い。
その様子をニヤニヤと笑いながら見ていた渾沌が、馬鹿にしたように続ける。
「何故先生がここにいないか、そして今までどこにいたのか。ここまで言ってあげたらいい加減、分かるでしょ?」
「……~ッ」
青白かった難訓の顔は、今は真っ赤に染まっていた。
「先生からあなたをとことん馬鹿にしてやれって言われてるから、存分にさせてもらうわ。
克難訓、あなたは自分が創ったモノからとことん嫌われる、最低最悪の創造主よ。実の娘からは唾を吐きかけられ、人形たちからは揃ってそっぽを向かれる。
そんなあなたがこの世界を支配しよう、自分の創造物で世界を満たそうですって? あはは、いい妄想ね! 寝言もいいところだわ!
おかしくってたまらないわ、あーっははははははははっ!」
「死ねええええええーッ!」
難訓が絶叫し、渾沌に向けて魔術を放とうとする。
だがその瞬間――大量のナイフ、槍、剣、グレネード弾、そしていくつもの魔術が、彼女に直撃した。
「げぼあっ、がふっ、ぐ、あがぁ……っ!?」
人形たち全員からの、城一つ落とせる程の攻撃を一身に受け、難訓は彼方へと弾き飛ばされた。
「全弾命中いたしました。ですが」
そう告げて、フュージョンは深々と、大火に頭を下げた。
「ああ、どうやら逃げたようだな」
「残念ながら、行動を停止させるまでには至りませんでした。申し訳ございません」
「構わん。少なくとも奴に対して、可能な限りのダメージを与えることはできただろう。よくやった」
「精神的ダメージも含めて、ね」
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- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
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NoTitle
古代ギリシアのグノーシス派が諸悪の根源として忌み嫌う、「邪悪で愚劣な創造神」デミウルゴスいうのは、考えてみれば哀れなやつなのかもしれん、と、難訓さんを見て思いましたであります。
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NoTitle
突き詰めていくと結局、それは無理難題を言われていることに他ならないんですけどねぇ……。
ただ、それ故に作った本人が「自分は完璧だ」なんてことを言っちゃダメですね。