黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・封魔抄 6

     ←白猫夢・封魔抄 5 →2016年1月携帯待受
    麒麟を巡る話、第620話。
    解放された人形、閉じ籠もる難訓。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
     時間は、ルナとフュージョンが戦っていた時間に戻る。

     武器を競り合わせながら、しかし互いに極力ダメージを与えぬよう、ルナとフュージョンは会話を交わしていた。
    「では、インパラは今も稼働していると、そう仰るのですか」
    「ええ。あっちで灰赤のドレスと戦ってる子がそうよ」
    「確かにわたくしたちに似た顔立ちですが、解析したところ、人間であるとしか思えません」
    「そりゃ、人間になったもの。それ以外の解析結果が出たらあんたがバグってるのよ」
     その言葉に、フュージョンの剣が止まる。
    「本当ですか」
    「本当よ。聞いてみたら? あんた、仲間のデータを集められるって言ってたし、他の子と話することもできるんでしょ?」
    「可能です。少々お待ちください」
     そう返し、フュージョンは一瞬、無言になる。
    「……確かにコロネットは、そう聞いたとのことです」
    「でしょ? ……ねえ、ここで一つ、話があるんだけど」
    「何でしょうか」
    「取引ってやつよ。あんたたち、人間になりたいって思ったことは無い?」
    「……」
    「言い換えるわ。あの頭と性根の腐った創造主から解放されたいって思ったことは?」
    「それは……」
    「今、あいつは元師匠っぽいのをにらむのに必死で、あんたたちの会話を聞いてる余裕は無さそうよ。本音言ってもバレないわよ。
     シェベルだってあいつがいないとこで、ぶっちゃけてたし」
    「ほ、……本音を言うのならば、その、……はい」
    「はいって言うのは?」
    「……解放されたいです」
     消え入りそうなその声に、ルナは微笑んで見せた。
    「だったらいい考えがあるのよ」

     ルナはフュージョンを通して他の4名に同じことを尋ね、全員から了承を得た。
     その直後、葵から手に入れた变化術「ポゼッション」によって大火に扮していた渾沌に難訓が気を取られていた隙に、姿を潜めていた本物の大火が彼女らの自爆装置を解除して回っていたのだ。
    「無論、居場所を自動であいつに知らせる機構も外しておいた。
     これであいつがお前たちの前に再び現れ、回収や報復に出るようなことはあるまい。お前たちは全員、自由の身だ」
    「……」
     戦いが終わり、フュージョンたち5名は無言で顔を見合わせていたが、喜んでいる様子は伝わってくる。
    「ま、あんたたちとガチで戦うって選択肢もあったけど、こっちだって無事じゃいられないでしょうし、そんなら懐柔した方が全然いいしね。
     何よりあんたたちを全部やっつけちゃったら、パラが悲しむわ」
    「ご厚情、誠にありがとうございます、お母様」
     ぽたぽたと涙を流しながら頭を下げるパラに、ルナはにっと笑って返す。
    「いいって、そんなの」
     と、フュージョンたちもパラの背後に回り、同じように頭を下げてきた。
    「ありがとうございます、克大火様、そしてルナ・フラウス様」
    「いいってば。……で、これからどうするの?」
    「どう、と申しますと」
     きょとんとした表情で尋ねたフュージョンに、ルナがこう続ける。
    「ここでうろうろしてるわけにも行かないでしょ? 流石にここでじっとしてたら、また難訓が戻って来るかも知れないし」
    「仰る通りです。まずはどこかに移動しなければ」
    「と言って、同じ顔のドレス姿が5人も揃って集まっていては、不審に思われるだろう」
     と、大火が口を挟んでくる。
    「しばらくは俺のところにいればいい。そのうち役割を決めて俺に使役されるなり、何かしらの交換条件を以って人間となるなり、好きに選べ」
    「重ね重ね、ありがとうございます」
     5人は再度、深々と頭を下げた。



    「……はっ……はっ……」
     某所――どこか遠くの、誰も知らない場所。
     辛うじてあの場から脱出したものの、難訓の全身はズタズタになっており、歩くことさえままならない状態にあった。
    「……おのれ……かず……またも……またしても……わたくしを……こけに……っ……」
     ずるずると、這うようにして床を移動しながら、彼女は呪詛のように言葉を撒き散らしていた。
    「……ゆるさない……ゆるすものか……」
     床を血だらけにしつつも、彼女はどうにか、その装置の中にずるりと体を入れる。
    「……つぎこそ……つぎの……ときこそは……」
     装置は自動で動き出し、彼女を包み込む。
    「……みなごろしに……してくれる……」
     それきり――難訓が言葉を発することは無くなった。

     後にはただ、装置が発する微弱な振動音だけが残った。

    白猫夢・封魔抄 終
    関連記事




    blogram投票ボタン ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ  3kaku_s_L.png 琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    • 【白猫夢・封魔抄 5】へ
    • 【2016年1月携帯待受】へ

    ~ Comment ~

    NoTitle 

    ある意味、ろくでもないモノですね。
    また後世に戦いを引き延ばすこととなります。

    NoTitle 

    「最終兵器」か「ちきゅう破壊爆弾」か「バスターマシン3号」か、双月世界の平和にとってろくでもない機械のような気がするのはきのせいでしょうか(^^;)
    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【白猫夢・封魔抄 5】へ
    • 【2016年1月携帯待受】へ