「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・獲麟抄 2
麒麟を巡る話、第622話。
一聖と天狐の思い出。
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2.
何度目かになるゴーレムの群れを撃退したところで、葵がぼそ、とつぶやいた。
「あと2回倒せば、もうゴーレムは終わりだよ」
「ゴーレム『は』?」
「そこから少し歩けば、目的地に着く。克麒麟が封印されてる、『システム』に到着するよ」
「そうか」
それを聞いて、一行の間に緊張が走る。
「……ついに、なんだね」
「うん。夢の中で何度も、何度も会ってきたけど、実物に会うのはあたしも、初めて」
「オレは何千年か前にある。姉弟子だったからな」
そう返した一聖に、葛が尋ねた。
「どんなヤツだったの?」
その問いに、一聖と天狐が交互に答える。
「どんな? そうだな……、オレからすれば、ある意味、憧れの人だったな」
「ああ。魔力は克一門の中じゃピカイチ。顔立ちも体つきも中性的で、まだ幼かったオレは、ファンタジックだなって思って尊敬してた」
「マコトさん……、親父の友達にすごく気に入られてた。麒麟の姉(あね)さんもマコトさんにべったりでさ、自分のコトを『ボク』って呼んだりするのは、マコトさんの影響なんだよ」
「だけど性格はマコトさんと似なかった。ソコもちょっとくらい似りゃ良かったのにな」
「そーそー。マコトさんは本当に同じ人間なのかって信じられないくらい優しい、聖人みてーな人だったけど、姉さんは自分勝手っつーか、ワガママっつーか、自己中っつーか」
「あー、確かに。人のおやつ盗み食いするクセして、自分のを取られたらマジギレしてたよな。んで親父に叱られて、すっげー拗ねてた」
「あったあった。他にもさ、窮奇の兄(あに)さんが読んでた雑誌の応募ハガキ切り取ったり、虹龍の兄さんが持ってた時計くすねたり、……本っ当、自分勝手でさ。
そう言や時計ん時は、流石にマコトさんからめっちゃくちゃ怒られてたな」
「でも、……今の姉さんからしたら想像できないかも知れねーけど、優しいトコもちゃんとあったんだよな。
予知能力を、オレたち一門のために使ってくれてた。『敵が来るよ』とか、『危険が迫ってる』とか、ちょくちょく教えてくれたんだ」
「ソレが何で、あんな風になっちまったのかな……」
「いや、元からあんな風だったんだろーな。
だって何度か、『ボクはタイカさんより強いんだぞ』って、冗談めかして言ってたの、覚えてるぜ。
今にして思えばアレ、マジで言ってたんだろうな」
「ああ、……で、世界が終わっちまった時に、親父を出し抜くチャンスだって思っちまったんだろうな。昔のオレみたいに」
「世界が……『終わった』?」
ただならぬ言葉に、葛が目を丸くする。
「どう言うコト? 何があったの、昔?」
尋ねられるが、一聖も天狐も肩をすくめるばかりで、答えようとはしなかった。
「ソレを説明するのは時間がかかる。とりあえず今は、姉さんのところに急ごうぜ」
「……きっと教えてよ。すっごく気になるし」
「ああ。覚えてたら、な」
葵が予言した通り、それからゴーレムを二度撃退したところで、一行は祠のような建造物の前に到着した。
「コレが……、『システム』?」
「そうだ。本来ならココから、親父に魔力を送り込むようになってる。今だって、送られてるはずなんだが……」
「ああ、変だな。全然、魔力を感じねー」
揃って首を傾げる一聖と天狐に、葵が答えた。
「多分、ナンクンの仕業だよ。ゴーレムがあんなにうようよしてたし、彼女がここに寄っていじったんだと思う。昔もここに来たらしいし」
「なるほどな。……となると、このまま封印を解いたとしても、親父の元に転送されねーんじゃねーか?」
「かもな。ヘタすると藪蛇が出るだけ損、みたいなコトになりかねねーな」
「だよなぁ。ちゃちゃっと修理できりゃいいんだが……」
「アイツが関わってるとなるとなぁ。面倒なコトになってなきゃいいんだけど」
と、モールが両腕をさすりながら口を挟む。
「とにかくさ、中に入った方がいいんじゃないね? ココで立ち止まって凍えてるのもなんだしね」
「……そだね」
モールの提案に、全員がうなずいた。
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2.
何度目かになるゴーレムの群れを撃退したところで、葵がぼそ、とつぶやいた。
「あと2回倒せば、もうゴーレムは終わりだよ」
「ゴーレム『は』?」
「そこから少し歩けば、目的地に着く。克麒麟が封印されてる、『システム』に到着するよ」
「そうか」
それを聞いて、一行の間に緊張が走る。
「……ついに、なんだね」
「うん。夢の中で何度も、何度も会ってきたけど、実物に会うのはあたしも、初めて」
「オレは何千年か前にある。姉弟子だったからな」
そう返した一聖に、葛が尋ねた。
「どんなヤツだったの?」
その問いに、一聖と天狐が交互に答える。
「どんな? そうだな……、オレからすれば、ある意味、憧れの人だったな」
「ああ。魔力は克一門の中じゃピカイチ。顔立ちも体つきも中性的で、まだ幼かったオレは、ファンタジックだなって思って尊敬してた」
「マコトさん……、親父の友達にすごく気に入られてた。麒麟の姉(あね)さんもマコトさんにべったりでさ、自分のコトを『ボク』って呼んだりするのは、マコトさんの影響なんだよ」
「だけど性格はマコトさんと似なかった。ソコもちょっとくらい似りゃ良かったのにな」
「そーそー。マコトさんは本当に同じ人間なのかって信じられないくらい優しい、聖人みてーな人だったけど、姉さんは自分勝手っつーか、ワガママっつーか、自己中っつーか」
「あー、確かに。人のおやつ盗み食いするクセして、自分のを取られたらマジギレしてたよな。んで親父に叱られて、すっげー拗ねてた」
「あったあった。他にもさ、窮奇の兄(あに)さんが読んでた雑誌の応募ハガキ切り取ったり、虹龍の兄さんが持ってた時計くすねたり、……本っ当、自分勝手でさ。
そう言や時計ん時は、流石にマコトさんからめっちゃくちゃ怒られてたな」
「でも、……今の姉さんからしたら想像できないかも知れねーけど、優しいトコもちゃんとあったんだよな。
予知能力を、オレたち一門のために使ってくれてた。『敵が来るよ』とか、『危険が迫ってる』とか、ちょくちょく教えてくれたんだ」
「ソレが何で、あんな風になっちまったのかな……」
「いや、元からあんな風だったんだろーな。
だって何度か、『ボクはタイカさんより強いんだぞ』って、冗談めかして言ってたの、覚えてるぜ。
今にして思えばアレ、マジで言ってたんだろうな」
「ああ、……で、世界が終わっちまった時に、親父を出し抜くチャンスだって思っちまったんだろうな。昔のオレみたいに」
「世界が……『終わった』?」
ただならぬ言葉に、葛が目を丸くする。
「どう言うコト? 何があったの、昔?」
尋ねられるが、一聖も天狐も肩をすくめるばかりで、答えようとはしなかった。
「ソレを説明するのは時間がかかる。とりあえず今は、姉さんのところに急ごうぜ」
「……きっと教えてよ。すっごく気になるし」
「ああ。覚えてたら、な」
葵が予言した通り、それからゴーレムを二度撃退したところで、一行は祠のような建造物の前に到着した。
「コレが……、『システム』?」
「そうだ。本来ならココから、親父に魔力を送り込むようになってる。今だって、送られてるはずなんだが……」
「ああ、変だな。全然、魔力を感じねー」
揃って首を傾げる一聖と天狐に、葵が答えた。
「多分、ナンクンの仕業だよ。ゴーレムがあんなにうようよしてたし、彼女がここに寄っていじったんだと思う。昔もここに来たらしいし」
「なるほどな。……となると、このまま封印を解いたとしても、親父の元に転送されねーんじゃねーか?」
「かもな。ヘタすると藪蛇が出るだけ損、みたいなコトになりかねねーな」
「だよなぁ。ちゃちゃっと修理できりゃいいんだが……」
「アイツが関わってるとなるとなぁ。面倒なコトになってなきゃいいんだけど」
と、モールが両腕をさすりながら口を挟む。
「とにかくさ、中に入った方がいいんじゃないね? ココで立ち止まって凍えてるのもなんだしね」
「……そだね」
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