黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・獲麟抄 3

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    麒麟を巡る話、第623話。
    「システムF5」、ふたたび。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     祠の中に入った途端、葛は寒さを感じなくなった。それどころかほんのりと温かみすら感じ、思わず一聖の袖を引いて尋ねる。
    「ねー、カズセちゃん。さっきの話からするとさー、ココって何千年も前にできたんだよねー?」
    「ああ」
    「ソレからずっとココに建ったまま、……なんだよねー?」
    「だろうな。移設とかは考えられねーし」
    「隙間風とか、全然感じないんだけど。ソレどころかすごい快適」
     そんな感想を述べた葛に、天狐と一聖は揃って、ニヤッと笑って返す。
    「そりゃ、簡単に崩れたらまずいだろ。
     ソレにココは、親父の工房の一つでもある。ガタガタ凍えながら作業なんて、親父だってしたがらねーよ。って言うか手元狂うし」
    「でも、何千年も持つものなの?」
    「神器化処理をなめんな。親父が組んだ術なら千年レベルの年月が経とうと、核の部分が破壊や停止でもしねー限り、経年劣化なんざコレっぽっちも起こりゃしねーよ。
     本当の本気で術を組めば、マグマの中に飛び込もうが宇宙に飛び出そうが何ら影響を受けない、金やダイヤモンド並の、いいや、ソレを凌駕するレベルの、完全無欠の安定性すら確立できるんだぜ。
     ……つっても理論上だけどな。マジでやろうとすると、市国やトラス王国が一週間は停電するレベルの魔力がいる計算になる」
    「すっごいスケールの話だねー……」
     その間に、天狐とモールが周囲を見渡し、状況を確認する。
    「どうやら、仕掛けは魔力送信の妨害だけみたいだね。コレくらいなら簡単に解けるね。
     恐らくゴーレム仕向けるだけで十分と思ったんだろうね。……本当、葵がいて良かったもんだね」
    「ああ、確かにな。何も知らずにあのまま襲撃を受けまくってたら、流石にまずかっただろうぜ。
     よし、ソレじゃまずは、送信妨害の方から片付けちまおう」
    「おう」
     一聖も交え、三人で難訓の術を解除している間、葛は横たわった葵に水を飲ませる。
    「楽になった?」
    「うん……、少し」
    「……ねえ」
    「なに?」
    「……ううん、何でもない」
    「言いなよ」
    「……その、さ。言ってたコト、本当だよね?」
    「何が?」
    「白猫を倒せば、姉貴の治療法が分かるって話」
     葛に問われるが、葵は答えない。
    「……」
    「本当だよね?」
    「あたしがあんたに嘘ついたこと、あった?」
    「あるじゃん。結構」
    「……あったっけ」
    「一番の嘘は、あたしに白猫のコト、ずっと黙ってたってコト。
    『言ってないから嘘じゃない』とか言わないでよ? あたしや、パパたちに対する態度が丸っきり、嘘だったじゃん」
     葛の言葉に、葵は目をそらす。
    「そう言う言い方されたら、否定できないね」
    「もうさ、いい加減秘密とか内緒とか、全部無しにしてよ」
     背けた葵の顔を、葛がぐいっと引っ張って戻す。
    「痛いよ」
    「あ、ゴメン。……じゃなくて、ごまかさないでよ」
    「……ん」
    「はっきり教えて。白猫の話は、本当なの?」
    「……それは」「待たせたな」
     と、問い詰めていたところで、天狐が声をかける。
    「装置は解除した。コレで元通り、親父に魔力が供給される。ただし……」
    「ただし?」
    「結論から言うと、事態は悪化したってコトだね」
     モールが苦々しい表情を浮かべながら説明する。
    「本来の『システム』の過程としては、ここら一帯から麒麟の体に集めさせた魔力を吸い上げて、ソレを克に転送する仕組みだった。
     だけど魔力転送装置が止まってたコトで、送られなかった魔力は麒麟に逆流してるだろうね」
    「じゃあ、もしかしてキリンは……」
    「ああ。そりゃ満タンとは行かないだろうけど、魔力を回復してる可能性が非常に高いね。魔力無しの状態の麒麟を襲うって言う、君らの所期の計画は頓挫したってワケさ。
     どうする? ソレでも君たちは、『システム』を停止させるかね?」
     心配そうな顔をするモールに対し、葵は依然として、頑なにこう答えた。
    「……もう、後には引けないよ」



     一行は祠の中を奥へと進み、途中の分かれ道を左に曲がる。
     まもなく地下深くへ達する立坑と、そこに掛かる螺旋階段を見付け、ひたすらそれを下っていく。
    「長いね……。ドコまで降りるんだろ」
    「お前さんは見たコト無いだろうが、『システム』ってのは相当デカい装置なんだ。何しろ、周囲から大量に魔力を吸い込むからな。地表に建ててたんじゃ、全然追っつかねー。
     葵は見たコトあったよな」
     一聖に尋ねられ、葵はこくっとうなずく。
    「うん。カズセちゃんが封印されてたところのは、見たことある。地下神殿って感じだった」
    「ココの『システム』も、ソレくらいの規模だと思えばいい。
     オレもココへ来るのは初めてだが、恐らく地下50メートルは下るだろうな。仮に地表で祠を破壊できるクラスの爆撃を受けたとしても、ココまで深けりゃ影響は無い。
     逆に言えば、親父がソコまで手間をかけなきゃならない位、この施設は危険度が高いってコトでもある」
     天狐は立ち止まって振り返り、葵に尋ねた。
    「最終確認だ。本当にお前は、ココの『システム』を停止させるつもりなんだな?」
    「うん」
    「もしも麒麟の姉さんを止められなかったら、どうするんだ?」
    「止める。止めてみせる」
    「ガキの言い合いかよ。できなかったら、って聞いてんだよ」
    「……命に換えてでも、あたしが何とかする」
    「強情なヤツだな。もういい」
     天狐はぷい、と背中を向け、ふたたび歩き出した。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    渾沌「だって『とことん馬鹿にしてやれ』って言われたしー、
    全部明かしちゃった方がよりそれっぽいしー」
    大火「結果的にその目的は達成された。俺個人としては不満は無い」
    渾沌「また何かあったら何とかするわよね?」
    大火「ああ」
    ルナ「だからね? 先生たち?
    そーゆー揉め事、何遍起こすつもりなの?」
    渾沌(そっぽを向く)
    大火(同上)
    ルナ「……この人たちは、もう」

    人形たち「(なんでしょうか……この不安は)」



    ちなみにこの時、まだ大火側はシエナたちとコンタクトを取り、
    人形たちと戦ってる辺りの状況。同時進行中です。
    明かしたのはこっち側の戦いが終わってからくらい。
    当然、魔力供給も復活してる頃になりますし、この時には難訓の敗北も確定しています。
    「勝った」、「これ以上、少なくとも向こう数十年は、相手が何もできないくらいボコボコにした」
    と言う確信がある状態なので、これくらいは余裕を見せてもいいんじゃないかと。
    後でルナたちにかかる手間と迷惑はどうあれ。

    NoTitle 

    ……ってことは、さっきの対決の時、余裕ぶっこいて講釈なんかしたらまずかったんじゃないですか大火さんたち。

    気づかないのなら気づかないままいさせたほうが有利だったと思いますし。

    今の能力なら傷が一つ二つ増えるだけで大差はない、という考えなのかもしれませんが、人間ってものは傷がひとつふたつ増えるとなにより痛いですし。

    ……ちょっと大火さん神様だけあって将棋でいう「詰めろ」のところで悪手をさしちゃったと思います。
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