黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・獲麟抄 7

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    麒麟を巡る話、第627話。
    Beated the Oracle...;克麒麟の最期。

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    7.
    「……た、倒せた? あたし、……倒せたの?」
     まだ半分、意識が飛んだままの葛に尋ねられ、モールはぎこちなくうなずいた。
    「みたい、……だね」
    「倒せたんだよ、……ね?」
     と、葛は大事なことを思い出し、足元に顔を向けた。
    「姉貴! まだ生きてる!?」
    「……だい……じょう……ぶ……まだ……生きてるよ……」
    「良かった……! モールさんお願い、手当てしたげて!」
    「お、おうっ」
     慌ててモールが駆け込んでくる間に、葛は目を見開いて仰向けに倒れたままの麒麟から刀を抜き取った。
    「まさか……死んじゃった?」
    「かも分からんね。私としちゃ、死んでてほしいけどね」
    「で、でも、ソレじゃ姉貴が……」「いいんだよ。これが本当の目的だった」
     横になったまま、葵が口を開く。
    「姉貴!」
    「あたしの本当の目的は、キリンから治療法を聞くことじゃなかったんだよ」
    「え……? どう言うコトよ?」
    「……! カズラ、後ろ!」
     答える代わりに、葵が叫ぶ。
     言われるまま後ろを向いた葛は、絶句した。
    「……ッ!」
     血まみれの麒麟が、立っていたからだ。

    「……ひ……はっ……くふ……ふふ……あはは……」
     だが、彼女は葛にも、葵にも目を向けない。虚空をにらみ、乾いた笑いを垂れ流している。
    「ボクの『見た』未来じゃ……キミたちは死んでたはずなんだ……死んでなきゃいけないんだよ……?
     なんで……ボクがアレだけ……散々ぶちかまして……なのに……なんで……二人とも……生きてるのさ……?」
    「はっきり言ってやる」
     葛は一歩踏み出し、麒麟を指差した。
    「アンタの『見た』って未来なんて結局、ただの妄想だったってコトよ。アンタに都合のいい、自分勝手な予想だったってだけじゃないの。
     もっかい言ってやる。アンタなんか、予知能力者でも預言者でも、ましてやカミサマなんかでも無い。自分の妄想を無理矢理現実にしようとしてるだけの――ただのバカだ!」
    「ボクが……バカ……だって……!?」
     麒麟の顔に険が差し、両手に双剣を構える。
     だがそのどちらも、鍔元から先がぽっきりと折れ、使い物にならなくなっていた。
    「ボクは……ボクは……ボクはっ」
    「納得行かないなら、もっかい叩っ斬ってやるわよ? どうするの、キリン!?」
     そう怒鳴り、刀を向けた途端、麒麟は後ずさった。
    「もう沢山だ……こんな世界のコトなんか……ボクの知ったこっちゃない……こんな世界……こんな……こんな……こんなっ……」
     みぢっ、と異様な音を立て、何も無いはずの空間に亀裂が走る。
    「こんな世界、ボクの方から見限ってやる! 勝手に成長して勝手に発展して勝手に停滞して勝手に戦争して勝手に荒廃して勝手に滅亡して、いつか勝手に消し飛んで、宇宙の塵にでもなっちまえば良いんだ!
     勝手にしろ! 勝手にしろ! 勝手にしろおおおお……ッ!」
     そう叫んで、麒麟は歪みの向こうへと姿を消した。

    「今の……なに?」
     尋ねた葛に、モールが唖然とした表情を浮かべながら答えた。
    「次元移動術……だね。まさかあんなものまで使えるなんて」
    「じげん……いどう?」
    「もう、キリンはこの世界にいないってことだよ」
     葵がよろよろと上半身を起こし、説明を継いだ。
    「キリンは自分の予知能力を解析・強化する一環で、次元や時空に関する魔術を研究してたことがある。そしてそのいくつかは、実現させてた。次元移動術もその一つ。
     でも使うことなんて無いと思ってた。この世界へのアンカー(標)も無しに別の世界へ行っちゃったら、理論的に戻って来られないし。
     目印も付けずに適当にドアを開けた先に進んで、そこから戻ろうと思って振り向いたら、今通ったのと同じようなドアが無数に並んでて、どこから来たか分かんなくなっちゃうようなものだから」
    「話がよく分かんない。……でも、つまり、ソレって、もう」
    「うん。キリンは二度と、この世界には戻って来られない。もう二度と、白猫が誰かの夢に出てくることも無いよ」
    「……で、でも」
     葛はもう一度、確認する。
    「キリンは治療法を知ってたんじゃないの? だからあたしたち、ココまで来たんじゃ?」
    「ううん」
     そしてそれを、葵はもう一度否定した。
    「キリンがそんなの、知ってるわけ無いよ。あの術は、本当はあたしが自分で、一から組み立てたんだし。
     そのあたしに治療法が分からないなら、他に誰も、治せたりしないよ」
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