黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・望月抄 2

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    麒麟を巡る話、第630話。
    大立役者の引退と今後。

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    2.
    「大事な話があるの」
     そう言ってルナは、「フェニックス」の全員を招集していた。
     研究所の休憩室に集められた皆を前に、ルナはこう切り出した。
    「今年末で、あたしはここの所長をやめるわ。次の所長はマークよ」
    「ええっ!?」
     この発言にマーク以下、所員全員が驚いた。
    「ど、どうして?」
    「皆は薄々気付いてたと思うけど、この研究所は再生医療研究って言うオモテの目的と、そして白猫党の野望を砕くって言う、ウラの目的があったの。
     皆、この新聞読んだわよね?」
     そう前置きし、ルナは傍らの新聞を手に取り、一面記事を皆に見せる。
    「もう白猫党は、世界征服を企む大政治結社ではなくなったわ。
     党は二つに分裂し、内輪で争い続けるだけの小悪党に成り下がった。恐らくこの戦争が終わってまた一つになったとしても、央北から他地域へ侵略するようなことは、二度と無いでしょうね。
     つまりウラの目的も達成したし、オモテの目的もマークがいれば今後、十分達成できるはず。と言うことで、あたしがここにいる意義は無くなった。それが理由よ」
    「で、でも所長がいないと」
     所員の何名かは、引きとめようと口を開きかける。
     しかしそれを制し、ルナは話を切り上げた。
    「あたしの役目はここまでよ。それにこう見えて、あたしはいい歳だもの。
     隠居ってやつよ」
     その後、マークが何度か慰留したが、ルナは頑なにそれを拒否し、彼女の退職は確実となった。



    「あの……、お母さん」
     所内で自宅として使っていた部屋を整理していたルナを手伝いながら、パラが尋ねた。
    「どしたの?」
    「家具はフィオたちに、わたくしたちの家に運んでもらいました。そのまま、一緒に住まわれるのでしょうか?」
    「あら、嫌なの?」
    「いえ、そんな! 一緒に住んでいただけるのなら、わたくしもフィオも歓迎いたします」
    「それもいいかも知れないけどね。ま、部屋だけは置いといてほしいのよ」
     ルナの返事に、パラは悲しそうな顔をした。
    「それはつまり、住んではいただけないと言うことでしょうか」
    「一緒に住みたくないってわけじゃないわ。
     実はね、また旅に出ようかなって、そう考えてるところなのよ」
    「旅に?」
    「そう。10年もこの国に長居しちゃったけど、あたしはやっぱり、好き勝手に放浪してた時の方が気楽なんだなって。
     だからしばらく、留守にするつもりよ。……でも安心して」
     ルナはパラを、ぎゅっと抱きしめた。
    「今までしてきた旅は、帰れるところが無かったから、どうしても心許無かったし、どこか寂しかった。
     でもこれからの旅は、いつでもここに帰って来られる。あんたとフィオが帰りを待ってくれてる。それだけで、あたしは安心できる。それだけで十分なのよ。
     約束するわ。あたしはちゃんと、帰って来るから」
    「……お母さん」
    「ね、パラ。次に帰って来る時は」
     パラから離れ、ルナはにこっと笑って見せる。
    「家族、増えてるかしらね?」
    「……わたくしも、期待しております」
     パラは顔を真っ赤にし、小さくうなずいた。

     と――部屋のドアが、とんとんと叩かれる。
    「ルナさん、いるー?」
    「葛? ええ、いるわよ。どうぞ」
     ルナに促され、葛が部屋に入ってきた。
    「あれ? 引っ越し、もうほとんど終わっちゃった感じ?」
    「ええ。大体、みんなが運んでくれたわ。残りの作業はもう、パラと掃除するだけって感じね」
    「じゃ、あたしも掃除手伝うねー」
    「ありがとうございます、カズラ」
     ぺこっと頭を下げたパラに、葛はにこっと笑って返した。
    「いーって、そんなの。あたしとパラ、従姉妹なんでしょ? 気ぃ使わなくていーよ」
    「……」
     そう言った葛に、ルナもパラも、一言も返せないでいる。
     その微妙な空気を察し、葛が続けた。
    「ま、今日来たのはソコら辺をはっきりさせるためだったんだよね。あたしもそろそろ、国に帰らなきゃだし。
     ソレにルナさん、もしかしたらこのまんま、どっか行っちゃうかも知れないしー」
    「……読まれちゃったわね」
     ぺろっと舌を出したルナに、葛はまた、クスクスと笑った。
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