「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第11部
白猫夢・望月抄 3
麒麟を巡る話、第631話。
打ち明け話。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「と言うワケで、きちっと教えてね?」
場所を休憩室に移し、葛は改めてルナに尋ねた。
「ズバリ聞くけどさ、ルナさんって、あたしの叔母さんなんだよねー?」
「……ええ」
うなずいたルナに、葛はにこっと笑う。
「やっぱ、そーだったんだ。言ってくれたらいいのに。何で黙ってたの?」
「だって、……あたし結構、悪人なのよ? 央南と焔流を引っ掻き回した張本人だし」
「みたいだね。カエデさんから教えてもらった」
けろっとした顔の葛を見て、珍しくルナが、虚を突かれたような顔をする。
「怒らないの?」
「なんで? ……まあ、そりゃ悪いコトしたって話だけどさ、もう20年も前じゃん」
「まあ、そうだけど」
「ソレにさー、白猫党関係で、結果的に央南を助けたワケだし、ソレでチャラじゃないの?」
「そう思ってくれない人もいるから、あんまり大っぴらに主張はできないわね」
「その考えも分かるけどさ。でもあたしはそう思わないもん」
葛は席を立ち、ルナの背後に回り込んで、後ろから抱きしめた。
「だからさー、あたしに対しては素直に、『ルナ叔母さん』でいてほしいなーって」
「葛……?」
「……姉貴がいなくなっちゃったから、さ。寂しいんだよね、あたし。家族がいなくなるのって、ホント、体が千切れそうなくらい、辛いもん。
しかも二度だよ? 姉貴、二度もあたしの前からいなくなった。どんだけあたしを泣かせたいのって話だよ」
葛の声に、涙が混じってくる。
「……あー、もう」
ルナは葛に抱きつかれたまま、器用に席を立って振り向き、抱き返した。
「分かった分かった、じゃあ存分に胸貸してあげるわよ。このルナ叔母さんがね」
「……ありがと……」
葛はそのままルナに抱きつき、しばらく泣いていた。
ようやくルナから離れた葛は、まだグスグスと鼻を鳴らしながら、こんな提案をした。
「ルナさん。旅のついでにさ、いっぺん、あたしん家来てみる?」
「……いや、だからね?」
苦い顔を向けたルナに、葛が畳み掛ける。
「パパ、前に会った時はしかめっ面して『話したくねー』って言ってたけど、会って話してみたら、もしかしたら許してくれるかも知れないよ?」
「そうは思えないわね。秋也兄さん、頑固者だったし」
ルナの言葉に、葛はまだ目を赤くしながらも、楽しそうに笑った。
「……あはは、そっかー」
「え?」
「そう呼んでたんだね、パパのコト」
「あー、うん。そうね、何十年振りかしら。……調子狂うわね、まったく」
口をとがらせるルナを見て、パラも笑い出す。
「……クスっ」
「何よ、あんたまで」
「とても、嬉しいのです。お母様とフィオの他に、わたくしに家族がいたことが」
「そーそー。さっきも言ったけど、従姉妹だもんね、パラ」
「ええ。実は血もつながっています」
「え、そなの? 人形だったのに?」
パラの言葉に、葛が驚く。
ルナも、娘がその話を知っているとは思わなかったらしく、慌てて口を挟んできた。
「ちょ、パラ? その話、誰から聞いたの?」
「カズセちゃんからです。『内緒にしてくれって言われたワケでもねーから』とのことでしたが、……言わない方が良かったみたいですね」
「くっそ、あんの若作り少女ババア! よりによってそんな、恥ずかしいこと、本人にさあ、……ああ、もおっ!」
尻尾を怒らせ、顔を真っ赤にしたルナを見て、葛とパラはまた、クスクスと笑い合った。
ルナが落ち着いたところで、葛はもう一度、同じ提案をした。
「で、さ。マジであたしん家、来てみてよー。パラも連れて」
「なんでよ」
「折角だし、パラのコトも紹介したいなーって。
ソレにさー、ルナさん一人よりパラと一緒の方が、ルナさんも話しやすいんじゃない? もしかしたらパパもだけど」
「……そんなもんかしら?」
ルナはまだ逡巡した様子ではあったが、やがてうなずいた。
「いいわ。覚悟決めた。……多分会うなり『帰れ』って言われるだろうけど、ダメ元でいっぺん会ってみるわ」
「やった~」
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「と言うワケで、きちっと教えてね?」
場所を休憩室に移し、葛は改めてルナに尋ねた。
「ズバリ聞くけどさ、ルナさんって、あたしの叔母さんなんだよねー?」
「……ええ」
うなずいたルナに、葛はにこっと笑う。
「やっぱ、そーだったんだ。言ってくれたらいいのに。何で黙ってたの?」
「だって、……あたし結構、悪人なのよ? 央南と焔流を引っ掻き回した張本人だし」
「みたいだね。カエデさんから教えてもらった」
けろっとした顔の葛を見て、珍しくルナが、虚を突かれたような顔をする。
「怒らないの?」
「なんで? ……まあ、そりゃ悪いコトしたって話だけどさ、もう20年も前じゃん」
「まあ、そうだけど」
「ソレにさー、白猫党関係で、結果的に央南を助けたワケだし、ソレでチャラじゃないの?」
「そう思ってくれない人もいるから、あんまり大っぴらに主張はできないわね」
「その考えも分かるけどさ。でもあたしはそう思わないもん」
葛は席を立ち、ルナの背後に回り込んで、後ろから抱きしめた。
「だからさー、あたしに対しては素直に、『ルナ叔母さん』でいてほしいなーって」
「葛……?」
「……姉貴がいなくなっちゃったから、さ。寂しいんだよね、あたし。家族がいなくなるのって、ホント、体が千切れそうなくらい、辛いもん。
しかも二度だよ? 姉貴、二度もあたしの前からいなくなった。どんだけあたしを泣かせたいのって話だよ」
葛の声に、涙が混じってくる。
「……あー、もう」
ルナは葛に抱きつかれたまま、器用に席を立って振り向き、抱き返した。
「分かった分かった、じゃあ存分に胸貸してあげるわよ。このルナ叔母さんがね」
「……ありがと……」
葛はそのままルナに抱きつき、しばらく泣いていた。
ようやくルナから離れた葛は、まだグスグスと鼻を鳴らしながら、こんな提案をした。
「ルナさん。旅のついでにさ、いっぺん、あたしん家来てみる?」
「……いや、だからね?」
苦い顔を向けたルナに、葛が畳み掛ける。
「パパ、前に会った時はしかめっ面して『話したくねー』って言ってたけど、会って話してみたら、もしかしたら許してくれるかも知れないよ?」
「そうは思えないわね。秋也兄さん、頑固者だったし」
ルナの言葉に、葛はまだ目を赤くしながらも、楽しそうに笑った。
「……あはは、そっかー」
「え?」
「そう呼んでたんだね、パパのコト」
「あー、うん。そうね、何十年振りかしら。……調子狂うわね、まったく」
口をとがらせるルナを見て、パラも笑い出す。
「……クスっ」
「何よ、あんたまで」
「とても、嬉しいのです。お母様とフィオの他に、わたくしに家族がいたことが」
「そーそー。さっきも言ったけど、従姉妹だもんね、パラ」
「ええ。実は血もつながっています」
「え、そなの? 人形だったのに?」
パラの言葉に、葛が驚く。
ルナも、娘がその話を知っているとは思わなかったらしく、慌てて口を挟んできた。
「ちょ、パラ? その話、誰から聞いたの?」
「カズセちゃんからです。『内緒にしてくれって言われたワケでもねーから』とのことでしたが、……言わない方が良かったみたいですね」
「くっそ、あんの若作り少女ババア! よりによってそんな、恥ずかしいこと、本人にさあ、……ああ、もおっ!」
尻尾を怒らせ、顔を真っ赤にしたルナを見て、葛とパラはまた、クスクスと笑い合った。
ルナが落ち着いたところで、葛はもう一度、同じ提案をした。
「で、さ。マジであたしん家、来てみてよー。パラも連れて」
「なんでよ」
「折角だし、パラのコトも紹介したいなーって。
ソレにさー、ルナさん一人よりパラと一緒の方が、ルナさんも話しやすいんじゃない? もしかしたらパパもだけど」
「……そんなもんかしら?」
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