黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第11部

    白猫夢・望月抄 5

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    麒麟を巡る話、第633話。
    スタッグパーティ。

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    5.
    「……ヒック……思うんだ……私の人生は……ヒック……本当にこれで良かったのかと」
    「まあ、まあ」
     マークとフィオ、そしてウォーレンの男3人が、街のバーに集まっていた。
    「おめでたいじゃないですか。あんな綺麗な人が奥さんになってくれるなんて」
    「しかし……そのために……ヒック……私は教団の地位を……棒に振ってしまった……」
     ウォーレンが楓と結婚することが決まり、彼の独身最後の夜を共に過ごしているのだ。
    「こっちでの職は決まったんでしょう?」
    「ああ。僕と同じく、護衛官になったんだ。と言っても相手は王族じゃなく、カズセちゃんとかの、王国の要人だけどね。実質、今までと変わらない」
    「だが……ヒック……私は僧兵長だったと言うのに……」
    「そんなに未練があるなら、こっちで黒炎教団を広めたら、……あー、いや。難しいかなぁ」
    「まあ、……呑んで呑んで! 明日が結婚式なんだから、暗い顔してちゃカエデさんに失礼だって!」
     フィオに酒を注がれ、ウォーレンはそれを一気に飲み干す。
    「……くあーっ!
     だ、大体っ……ヒック……私ともあろう者が……女性に言い寄られて……あまつさえ押し倒されるなど……ヒック……情けないにも程がある……」
    「いや、それは仕方無いですよ。いざと言う時は、女性の方が強いですから」
    「マーク、君が言うと妙に説得力があるね」
    「まあ、……経緯はウォーレンさんと似たようなもんだし。
     でも結果的には、良かったと思ってるよ。何だかんだ言ってシャランはいい奥さんだし、ルーは可愛いし。
     だからウォーレンさんもきっと、そのうち『この結婚は正解だった』って思うように、……ありゃ、潰れちゃったかな」
     どうやら相当に酔いが回っていたらしく、いつの間にかウォーレンはカウンターに突っ伏して、いびきをかいていた。

     店に放って帰るわけにも行かないので、マークとフィオは両側からウォーレンの肩を担ぎ、彼の家まで運ぶことにした。
    「しかし結婚ラッシュって言うか、何て言うか」
    「ん?」
    「マロからまた手紙が来たんだけどさ、彼も結婚したらしいよ。今回の働きが認められて、やっと恩赦が下りて出所できたんだってさ。で、すぐプロポーズしたんだって」
    「へー」
    「ほっとしてるよ。このまままた、監獄に逆戻り、なんてことになったら、どうしようかって、……はぁ、はぁ、ちょっと、辛くなってきた」
     筋骨隆々のウォーレンは相当に重たく、家路を3分の1も進まないうちに、マークが音を上げる。
    「ちょ、ちょっと、休憩させて」
    「おいおい……」
     仕方無く、ウォーレンを近くの壁にもたれさせ、マークたちは小休止する。
     と――。
    「ご足労様です。こんなところまで運んでいただいて」
    「あれ、カエデさん?」
     どこからか、楓が三人の前に現れた。
    「後はあたくしが運びますわ。よろしければお茶をお出ししますけれど、ご一緒に如何かしら?」
    「ええ、ありがとうございます」
    「では」
     楓はウォーレンの両脇にひょいと腕を差し込み、ぐるっと体を回して持ち上げ、自分の肩に載せた。
    「重くないんですか?」
     ウォーレンの巨体を軽々と扱う楓に、マークは目を丸くする。
     それに対し、楓はクスクスと笑って返した。
    「確かに重たいですけれど、苦になりませんわね。むしろ愛する人がこうして無防備に体を預けてくれると言うのは、これ以上無いくらいに幸せなことですわ」
    「それ、どっちかって言えば男が女に言う台詞じゃないのかなぁ」
     そうつぶやいたフィオの膝裏を、楓がぺちっと蹴った。
    「あいてっ」
    「どちらでもよろしいことでしょう?
     今のあたくしの台詞、あたくしがウォーレンから言われたとしても、あたくしは同じくらい幸せに感じますわ」
     楓にさらりと言われ、フィオとマークは苦笑した。
    「あっついなぁ。まだ11月なのに、汗かいちゃうよ」
    「僕はもう汗だくだよ……。ウォーレンさん担いでたからだけど」



     マークの予想通り――結婚前にはあれこれと愚痴を吐いていたウォーレンだったが、結婚後は一転、愛妻家となった。また、子供にも恵まれ、絵に描いたような幸せな家庭を築いたと言う。

     一方で、マークとフィオを交えて3人で酒を呑み、酔ったウォーレンの愚痴を肴にする機会は、その後も続いたらしい。
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