「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
赤虎亭日記
赤虎亭日記 10
朱海さんの話、第10話。
双月暦515年10月と11月:大食い店員、シリン。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
10.
双月暦515年 10月17日 火曜
イオタが店を開くコトになったらしい。アタシの呪いは効かなかったようだ。
いやまあ、なんだかんだで仲良くはなったし、(勿論、好きとかそう言うのはもう無いけども)今更死んじまったら気分が悪いし、悲しいっちゃ悲しい。
公安にいるのは今年いっぱいまで。来年から営業開始の予定だそうだ。ライバル出現だな。
双月暦515年 10月19日 水曜
イオタが来た。今日は非番だそうで。まあ、いつも通り客って言うより、料理を教わりにだが。
元から筋は良かったと思ってたが、今じゃアタシより手際よくサクサクっとこなすコトすらあるくらいだ。ヤベぇな。
そう言や、その間に色々話をしたが、アイツも央南の血を引いてるらしい。父方のじーさん夫婦が央南人で、こっちに移ったとか。料理も教わったし、簡単な剣術も教わったらしい。ただ、超メジャーどころの焔流とかじゃなく、全然聞いたコト無い流派だそうだ。(本人も何て名前だったか忘れちまったらしい)
だもんで、最初はそっち関係を活かそうと公安に入ったらしいが、荒事にどうも馴染めなかったんで、こっちの道に入り直そうってコトらしい。
そっか、だから包丁捌きがアタシより全然上手なんだな。刃物の扱いには慣れてますってコトか。
ついでにウチの包丁も研いでもらった。びっくりするくらい良く斬れるようになった。すげえなぁ、アイツ。
双月暦515年 10月26日 水曜
またイオタが来た。今日も客じゃなく、料理を教わりにだけども。でも助かった。
すげーでかい虎獣人の女が食い逃げしやがったんだけど、イオタが捕まえてくれた。マジ助かった。ありがとうイオタ。
体に見合う、って感じでドカ食いしてやがったからな、あの女。そのまんま逃げられたら、結構痛かった。
ただ、話を聞くうちに何か可哀想になってきたんで、カネは半分だけ取って、二度とやるなよっつって放り出した。休みの日に、イオタをわざわざ仕事場に顔出させるのも悪いしな。
双月暦515年 10月28日 土曜
あのデカ女、また来やがった。ただ、今回はメシ食いじゃなく、「働かせてくれ」だと。ちなみに名前はシリン・ミーシャ。訛りからして、央中東部生まれだろう。
結論から言えば無理。今2人抱えてんのに。コレ以上は利益が出ない。そりゃ助けてやりたいけどさ。
んで断ったら、あの筋肉ぱっつんぱっつんの巨体がしょんぼり縮こまっちまった。胸がちくっとするけども、無理なもんは無理。
双月暦515年 10月30日 天曜
締め日。今月も問題無く、40万弱のプラス。
と言うか、臨時収入ありと言うか。コレットたちが残ってた借金、全部返してきたからだ。コツコツ蓄えてたんだとか。大方、店の開店資金として貯めてただろうに。
理由を聞くと、シリンを雇ってやって欲しいとのこと。自分たちが独立した後で雇えば、店に影響も出ないだろう、だと。
やっぱりアイツらも、シリンを気にかけてたんだな。うーん、でも確かにアイツらの言う通り、アイツらが抜けたらまた1人だし、今の賑わいを維持するってなったら、しんどくなってきそうだもんなぁ。そろそろ次を雇う準備をしてかなきゃな。
よし決定。明日、シリンに声かけるか。
双月暦515年 11月1日 火曜
シリン採用。台所が狭いぜ。
うーん、でもコイツ、相当ポンコツだ。まず字が読めないって致命的だろ。いや、央南語が読めないってならまあ、仕方無い。でも央中語すら、メニューの半分も分かんないってダメだろ。
あと、ぶきっちょ過ぎ。包丁振り下ろしやがったせいで、まな板にばっちり跡が付いちまった。ほぼ溝になってる。使い古してたとは言え、買い替えた方がいいな。
ただ、力は目一杯有り余ってる感じ。味噌汁満載の寸胴鍋を、平気な顔して持ち上げてた。お前、ソレ何十キロあると思ってんだよ。でもあんだけ力あるなら麺が作れそうだな。うどんとか出せるかも。
教育には相当手間と時間がかかりそうだが、今のところはまだ、コレットたちがいるからな。その間にできる限り手をかけてやるとするか。
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双月暦515年10月と11月:大食い店員、シリン。
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双月暦515年 10月17日 火曜
イオタが店を開くコトになったらしい。アタシの呪いは効かなかったようだ。
いやまあ、なんだかんだで仲良くはなったし、(勿論、好きとかそう言うのはもう無いけども)今更死んじまったら気分が悪いし、悲しいっちゃ悲しい。
公安にいるのは今年いっぱいまで。来年から営業開始の予定だそうだ。ライバル出現だな。
双月暦515年 10月19日 水曜
イオタが来た。今日は非番だそうで。まあ、いつも通り客って言うより、料理を教わりにだが。
元から筋は良かったと思ってたが、今じゃアタシより手際よくサクサクっとこなすコトすらあるくらいだ。ヤベぇな。
そう言や、その間に色々話をしたが、アイツも央南の血を引いてるらしい。父方のじーさん夫婦が央南人で、こっちに移ったとか。料理も教わったし、簡単な剣術も教わったらしい。ただ、超メジャーどころの焔流とかじゃなく、全然聞いたコト無い流派だそうだ。(本人も何て名前だったか忘れちまったらしい)
だもんで、最初はそっち関係を活かそうと公安に入ったらしいが、荒事にどうも馴染めなかったんで、こっちの道に入り直そうってコトらしい。
そっか、だから包丁捌きがアタシより全然上手なんだな。刃物の扱いには慣れてますってコトか。
ついでにウチの包丁も研いでもらった。びっくりするくらい良く斬れるようになった。すげえなぁ、アイツ。
双月暦515年 10月26日 水曜
またイオタが来た。今日も客じゃなく、料理を教わりにだけども。でも助かった。
すげーでかい虎獣人の女が食い逃げしやがったんだけど、イオタが捕まえてくれた。マジ助かった。ありがとうイオタ。
体に見合う、って感じでドカ食いしてやがったからな、あの女。そのまんま逃げられたら、結構痛かった。
ただ、話を聞くうちに何か可哀想になってきたんで、カネは半分だけ取って、二度とやるなよっつって放り出した。休みの日に、イオタをわざわざ仕事場に顔出させるのも悪いしな。
双月暦515年 10月28日 土曜
あのデカ女、また来やがった。ただ、今回はメシ食いじゃなく、「働かせてくれ」だと。ちなみに名前はシリン・ミーシャ。訛りからして、央中東部生まれだろう。
結論から言えば無理。今2人抱えてんのに。コレ以上は利益が出ない。そりゃ助けてやりたいけどさ。
んで断ったら、あの筋肉ぱっつんぱっつんの巨体がしょんぼり縮こまっちまった。胸がちくっとするけども、無理なもんは無理。
双月暦515年 10月30日 天曜
締め日。今月も問題無く、40万弱のプラス。
と言うか、臨時収入ありと言うか。コレットたちが残ってた借金、全部返してきたからだ。コツコツ蓄えてたんだとか。大方、店の開店資金として貯めてただろうに。
理由を聞くと、シリンを雇ってやって欲しいとのこと。自分たちが独立した後で雇えば、店に影響も出ないだろう、だと。
やっぱりアイツらも、シリンを気にかけてたんだな。うーん、でも確かにアイツらの言う通り、アイツらが抜けたらまた1人だし、今の賑わいを維持するってなったら、しんどくなってきそうだもんなぁ。そろそろ次を雇う準備をしてかなきゃな。
よし決定。明日、シリンに声かけるか。
双月暦515年 11月1日 火曜
シリン採用。台所が狭いぜ。
うーん、でもコイツ、相当ポンコツだ。まず字が読めないって致命的だろ。いや、央南語が読めないってならまあ、仕方無い。でも央中語すら、メニューの半分も分かんないってダメだろ。
あと、ぶきっちょ過ぎ。包丁振り下ろしやがったせいで、まな板にばっちり跡が付いちまった。ほぼ溝になってる。使い古してたとは言え、買い替えた方がいいな。
ただ、力は目一杯有り余ってる感じ。味噌汁満載の寸胴鍋を、平気な顔して持ち上げてた。お前、ソレ何十キロあると思ってんだよ。でもあんだけ力あるなら麺が作れそうだな。うどんとか出せるかも。
教育には相当手間と時間がかかりそうだが、今のところはまだ、コレットたちがいるからな。その間にできる限り手をかけてやるとするか。
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