「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
赤虎亭日記
赤虎亭日記 16
朱海さんの話、第16話。
双月暦518年8月と9月:黄晴奈。
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16.
双月暦518年 8月10日 氷曜
久々に小鈴が来た。しかもあの黄晴奈を連れてきた。ようやく会えたって感じだ。
何でも晴奈、フー・ヒノカミってのを探してるとか。ヒノカミって、北海で大暴れしてるあの日上か? 色々悪いうわさが尽きないヤツだが、なんでまた央南の晴奈が、北方の日上を追ってるんだ?
詳しく聞いてみると、なんでも日上が、晴奈の親友のエルスってヤツから(こっちも聞いた覚えあるな。連合の総大将やってるエルス・グラッドってヤツじゃなかったっけか)すごい貴重な剣を盗んで逃げてるんだとか。やっぱとんでもないヤツらしい。
逆の意味で、晴奈もとんでもない。黒炎教団の神様に会ったコトあるとか、敵に捕らわれたけどそいつらのアジトで大暴れして壊滅させたとか、ブッたまげる話をゴロゴロ持ってるぜ。
色々聞き出して、知り合いの作家とか詩人とかに売りつけてやろう。すげーカネになりそう。……とか企んでたら、小鈴に覚られたらしい。横から出しゃばってきて、なんでか交渉する羽目になった。
気付けば晴奈の情報の売上の28%も取られるコトになってた。ちくしょう。我が従姉妹ながら、商売上手でいやがる。ソレともアタシが乗せられやすいのか?
双月暦518年 8月12日 雷曜
あんまりファンタジック過ぎるから、ツテをたどって作家クラブの連中に、晴奈から聞いた話を売ろうと持ちかけてみた。
なんか好評。劇作家だってヤツが買いたいっつって、即金で20万エル出した。交渉成立。
小鈴に56000エルやって、残りの14万強はアタシがもらうコトに。
双月暦518年 8月16日 火曜
シリンがウチを辞めたいと切り出してきた。闘技場のリザーバーになって結構カネ入ってきたから、トレーニングに専念したいんだと。
むう、ちょっとまずいな。この店の規模でアタシ一人になっちまうと、回りゃしないぞ。誰か代わりの店員探さないとなぁ。
ソレまでは何とかウチにいてもらわないと。
双月暦518年 8月20日 土曜
とりあえず商工会を通じて求人広告を出す。店の前にも張り紙しといた。
早めに来てほしいなぁ。シリン、本格的に格闘家を意識しだしてるみたいで、こっそり寸胴鍋持ち上げたり下ろしたりして筋トレしてたし。やめてくれ。汗が入りそうで怖い。
双月暦518年 8月30日 火曜
今月の収支は70万ちょい。晴奈効果だ。
しかし人材の方は振るわず。何人か面接してみたけど、「なんかちがう」って顔に出てる。確かに普通の定食屋じゃないもんなぁ。市国じゃ央南料理は珍しいし、傍らで情報屋もやってるし。
結局折り合いが付かず、また縁があればって感じばっかりだった。
双月暦518年 9月3日 雷曜
シリンとエイトから、「闘技場にとんでもないヤツが現れた」って話を聞いた。
名前はロウ・ウィアード。なんでも一昨日ロイドリーグに入って、今日にすぐ、レオンリーグに参戦したとか。マジかよ、雪乃以来のスピード昇格だな。
ただ、あんまりにも登場が早すぎて、ドコにも情報が流れてないらしい。ピースたちに聞いても、「全然知らない」って言ってた。
ウィアードって名前の通りだな。つかみどころ無さすぎ。
双月暦518年 9月6日 天曜
こないだ売った晴奈の情報に、目一杯尾びれが付きまくってるみたいだ。
演劇まで作られてる始末だ。「縛返しの剣豪譚」つって、巷じゃ大評判らしい。アタシも観に行ったが、元ネタを本人から聞いた身としちゃ、笑いをこらえるのに必死だったぜ。
なんだろ、央南人で侍で女でってのが、そんなにウケるのか? にしても美化し過ぎ。晴奈本人が観ても絶対、自分のコトだって分かんないだろうなー、アレじゃ。
双月暦518年 9月10日 雷曜
こないだ日記に書いてたあの演劇、人気出すぎ。ちっと癪だからリベートでももらえないかと思って、もっぺんクラブを訪ねてみた。
だけど残念ながら、晴奈の話を買ったジャッロって劇作家はいなかった。毎日満員御礼で、滅茶苦茶忙しいんだと。相当稼いでるらしいな。こりゃますます、リベートふんだくってやらなきゃな。
双月暦518年 9月15日 氷曜
ようやくジャッロを捕まえた。単刀直入に「儲かってんだろ」って聞いたら、ゲラゲラ笑ってやがった。やっぱりか。
だったらウチで慰労会でもやれよって誘ったら、向こうも「央南料理で締めるのも乙だな」つって、予約してくれた。
ま、人数も多そうだし、そこそこカネになるだろ。コレでリベート分としとくか。
双月暦518年 9月17日 雷曜
わっけ分かんねー。
いきなり店、って言うかアタシん家のど真ん中に小鈴と晴奈と、あと一人、「狐」のフォルナって子が現れやがった。しかも全員ボッコボコ。晴奈なんかアザまみれ、血まみれだし。後で畳変えなきゃな。
ともかく冗談抜きで死にそうだったんで、軽傷そうだったフォルナと一緒に、モニカの病院へ運ぶ。アイツの腕は確かだし、助かるだろ。多分。
って言うか助かれ。小鈴の葬式の喪主なんか、まっぴらごめんだ。英雄の悲劇譚なんてのも売りたかないし。
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双月暦518年8月と9月:黄晴奈。
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双月暦518年 8月10日 氷曜
久々に小鈴が来た。しかもあの黄晴奈を連れてきた。ようやく会えたって感じだ。
何でも晴奈、フー・ヒノカミってのを探してるとか。ヒノカミって、北海で大暴れしてるあの日上か? 色々悪いうわさが尽きないヤツだが、なんでまた央南の晴奈が、北方の日上を追ってるんだ?
詳しく聞いてみると、なんでも日上が、晴奈の親友のエルスってヤツから(こっちも聞いた覚えあるな。連合の総大将やってるエルス・グラッドってヤツじゃなかったっけか)すごい貴重な剣を盗んで逃げてるんだとか。やっぱとんでもないヤツらしい。
逆の意味で、晴奈もとんでもない。黒炎教団の神様に会ったコトあるとか、敵に捕らわれたけどそいつらのアジトで大暴れして壊滅させたとか、ブッたまげる話をゴロゴロ持ってるぜ。
色々聞き出して、知り合いの作家とか詩人とかに売りつけてやろう。すげーカネになりそう。……とか企んでたら、小鈴に覚られたらしい。横から出しゃばってきて、なんでか交渉する羽目になった。
気付けば晴奈の情報の売上の28%も取られるコトになってた。ちくしょう。我が従姉妹ながら、商売上手でいやがる。ソレともアタシが乗せられやすいのか?
双月暦518年 8月12日 雷曜
あんまりファンタジック過ぎるから、ツテをたどって作家クラブの連中に、晴奈から聞いた話を売ろうと持ちかけてみた。
なんか好評。劇作家だってヤツが買いたいっつって、即金で20万エル出した。交渉成立。
小鈴に56000エルやって、残りの14万強はアタシがもらうコトに。
双月暦518年 8月16日 火曜
シリンがウチを辞めたいと切り出してきた。闘技場のリザーバーになって結構カネ入ってきたから、トレーニングに専念したいんだと。
むう、ちょっとまずいな。この店の規模でアタシ一人になっちまうと、回りゃしないぞ。誰か代わりの店員探さないとなぁ。
ソレまでは何とかウチにいてもらわないと。
双月暦518年 8月20日 土曜
とりあえず商工会を通じて求人広告を出す。店の前にも張り紙しといた。
早めに来てほしいなぁ。シリン、本格的に格闘家を意識しだしてるみたいで、こっそり寸胴鍋持ち上げたり下ろしたりして筋トレしてたし。やめてくれ。汗が入りそうで怖い。
双月暦518年 8月30日 火曜
今月の収支は70万ちょい。晴奈効果だ。
しかし人材の方は振るわず。何人か面接してみたけど、「なんかちがう」って顔に出てる。確かに普通の定食屋じゃないもんなぁ。市国じゃ央南料理は珍しいし、傍らで情報屋もやってるし。
結局折り合いが付かず、また縁があればって感じばっかりだった。
双月暦518年 9月3日 雷曜
シリンとエイトから、「闘技場にとんでもないヤツが現れた」って話を聞いた。
名前はロウ・ウィアード。なんでも一昨日ロイドリーグに入って、今日にすぐ、レオンリーグに参戦したとか。マジかよ、雪乃以来のスピード昇格だな。
ただ、あんまりにも登場が早すぎて、ドコにも情報が流れてないらしい。ピースたちに聞いても、「全然知らない」って言ってた。
ウィアードって名前の通りだな。つかみどころ無さすぎ。
双月暦518年 9月6日 天曜
こないだ売った晴奈の情報に、目一杯尾びれが付きまくってるみたいだ。
演劇まで作られてる始末だ。「縛返しの剣豪譚」つって、巷じゃ大評判らしい。アタシも観に行ったが、元ネタを本人から聞いた身としちゃ、笑いをこらえるのに必死だったぜ。
なんだろ、央南人で侍で女でってのが、そんなにウケるのか? にしても美化し過ぎ。晴奈本人が観ても絶対、自分のコトだって分かんないだろうなー、アレじゃ。
双月暦518年 9月10日 雷曜
こないだ日記に書いてたあの演劇、人気出すぎ。ちっと癪だからリベートでももらえないかと思って、もっぺんクラブを訪ねてみた。
だけど残念ながら、晴奈の話を買ったジャッロって劇作家はいなかった。毎日満員御礼で、滅茶苦茶忙しいんだと。相当稼いでるらしいな。こりゃますます、リベートふんだくってやらなきゃな。
双月暦518年 9月15日 氷曜
ようやくジャッロを捕まえた。単刀直入に「儲かってんだろ」って聞いたら、ゲラゲラ笑ってやがった。やっぱりか。
だったらウチで慰労会でもやれよって誘ったら、向こうも「央南料理で締めるのも乙だな」つって、予約してくれた。
ま、人数も多そうだし、そこそこカネになるだろ。コレでリベート分としとくか。
双月暦518年 9月17日 雷曜
わっけ分かんねー。
いきなり店、って言うかアタシん家のど真ん中に小鈴と晴奈と、あと一人、「狐」のフォルナって子が現れやがった。しかも全員ボッコボコ。晴奈なんかアザまみれ、血まみれだし。後で畳変えなきゃな。
ともかく冗談抜きで死にそうだったんで、軽傷そうだったフォルナと一緒に、モニカの病院へ運ぶ。アイツの腕は確かだし、助かるだろ。多分。
って言うか助かれ。小鈴の葬式の喪主なんか、まっぴらごめんだ。英雄の悲劇譚なんてのも売りたかないし。



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