「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
赤虎亭日記
赤虎亭日記 23
朱海さんの話、第23話。
双月暦519年7月:見習い店員、ビートとアズサ。
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23.
双月暦519年 7月1日 火曜
晴奈たちが市国を発った。向かうは央北、ウィアードを殺したキングと、その取引相手の行方を追って、と聞いてる。
とうとうヘレンさんが、期限付きながらも闘技場の閉鎖を発表した。流石に今回の事件は、ひどすぎたからな。
もうキングは市国にいないとは言え、キングと取引してたヤツは捕まってないって話だし、キング抜きで誘拐される可能性もある。その可能性が残ってる以上、闘技場を開くコトはできない。ソレが理由だそうだ。
ピースたちみたいな、闘技場関係で商売してるヤツらは痛手だって言ってたが、仕方無いだろ? 人死にを出してまでする商売じゃないはずだ。
とは言え、期限付きなんだ。今回の事件がきちっと解決しさえすりゃ、また闘技場は再開されるさ、きっと。ソレまで待ってりゃいい。いつになるかは分からないけどな。
願わくば、さっさと晴奈たちが犯人をこてんぱんに叩きのめして解決して、無事に帰って来てくれますように。
双月暦519年 7月5日 土曜
ろくに事情も分かってないボケが、新聞の投書欄で闘技場の再開を訴えてる。腹立つ。
ピースたちは「この機会に、闘技場の歴史編纂をしようと思ってる」っつって、資料集めを始めた。うまくまとまれば書籍化して、今みたいに闘技場が動かない時にも商品を出して、儲けられるようにしたいんだと。
事件の関係だし、嫌な形でだけど、ウィアードの奥さんのシルビアと知り合いになった。晴奈から助けてやってくれと言われてるし、相当悲しんでるだろうから、「メシ関係なら力になってやれるよ」と言っといた。
まあ、アタシは「ご飯食べに来いよ」ってニュアンスで言ったつもりだったんだが、そしたらシルビアんトコの養子の、アズサとビートって子が「料理を習いたい」って言ってきた。元々、シルビアが妊娠して体調崩してた時から料理係になってたらしいが、「美味しい料理を作ってお母さんを笑顔にさせたい」っつって頼み込んできた。
うう、泣かせる話だ。情にほだされて、「明日から来な」って言っちまった。見た感じ、どっちもまだ10代はじめって感じだが、大丈夫かなぁ……。
双月暦519年 7月6日 風曜
アズサに関しては全然心配いらなかった。大人びてるなーとは思ってたが、普通に料理もできるし接客もこなせてる。ちっちゃいフォルナって感じ。
ビートも料理はまずまず。ただ、人見知りなのか緊張してるのか、客にはたどたどしかった。ま、慣れかなぁ。
齢を聞いたところ、アズサは12歳、ビートは10歳。あんまり幼い子を遅くまで店で使うのもなんだし、二人とも夕方5時には上がらせるコトにした。
新聞で、ヘレンさんが「絶対に再開は無い」って言ってた。昨日の投書とかも影響してるだろうし、財団内でも色々言われてるんだろうな。
だけど、アタシもヘレンさんに賛成。新聞覗き見してたアズサも、賛成っつってた。
双月暦519年 7月9日 氷曜
ウィアードが死んでから半月以上経ったが、やっぱりまだ、アズサたちの雰囲気は明るくない。そりゃ客が来たら笑顔で応対してるし、アタシと話してる時も笑っちゃいるが、ビートがトイレで泣いてんのを聞いた。アズサもふとした瞬間、寂しそうな顔をしてるのを見たコトが何度かある。
何とかしてやりたいなーとは思うんだが、今のところ、アタシには料理を教えるコトくらいしかできん。歯がゆい。
双月暦519年 7月15日 火曜
やっぱりメシ関係でしか喜ばせられないし、今日アズサたちが上がる時に、豚肉の良さそうなトコを持たせてやろうとした。「コレで美味い飯を作ってお母さんに食わせてやれよ」ってな。
だけどうっかりしてた。「今、お母さん食欲無いの。つわりだって」って返された。しまった、そうだった。ただ、渡すって決めたものだし、そんなら返せとは言い辛い。って言うか言えるワケ無いだろ。「じゃ、お前らで食いな」っつって、無理無理渡した。
せめてアズサたちだけでも喜んでくれれば、と言い訳してみる。
双月暦519年 7月16日 氷曜
アズサから夕べの話を聞いた。「最初、お母さんも食欲無さそうにしてたけど、あたしたちの料理を見て『美味しそうね』って言って食べてくれた」って話だった。
ちょっとほっとした。もしかしたらアタシに気を遣った嘘かも知れんが。
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双月暦519年7月:見習い店員、ビートとアズサ。
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双月暦519年 7月1日 火曜
晴奈たちが市国を発った。向かうは央北、ウィアードを殺したキングと、その取引相手の行方を追って、と聞いてる。
とうとうヘレンさんが、期限付きながらも闘技場の閉鎖を発表した。流石に今回の事件は、ひどすぎたからな。
もうキングは市国にいないとは言え、キングと取引してたヤツは捕まってないって話だし、キング抜きで誘拐される可能性もある。その可能性が残ってる以上、闘技場を開くコトはできない。ソレが理由だそうだ。
ピースたちみたいな、闘技場関係で商売してるヤツらは痛手だって言ってたが、仕方無いだろ? 人死にを出してまでする商売じゃないはずだ。
とは言え、期限付きなんだ。今回の事件がきちっと解決しさえすりゃ、また闘技場は再開されるさ、きっと。ソレまで待ってりゃいい。いつになるかは分からないけどな。
願わくば、さっさと晴奈たちが犯人をこてんぱんに叩きのめして解決して、無事に帰って来てくれますように。
双月暦519年 7月5日 土曜
ろくに事情も分かってないボケが、新聞の投書欄で闘技場の再開を訴えてる。腹立つ。
ピースたちは「この機会に、闘技場の歴史編纂をしようと思ってる」っつって、資料集めを始めた。うまくまとまれば書籍化して、今みたいに闘技場が動かない時にも商品を出して、儲けられるようにしたいんだと。
事件の関係だし、嫌な形でだけど、ウィアードの奥さんのシルビアと知り合いになった。晴奈から助けてやってくれと言われてるし、相当悲しんでるだろうから、「メシ関係なら力になってやれるよ」と言っといた。
まあ、アタシは「ご飯食べに来いよ」ってニュアンスで言ったつもりだったんだが、そしたらシルビアんトコの養子の、アズサとビートって子が「料理を習いたい」って言ってきた。元々、シルビアが妊娠して体調崩してた時から料理係になってたらしいが、「美味しい料理を作ってお母さんを笑顔にさせたい」っつって頼み込んできた。
うう、泣かせる話だ。情にほだされて、「明日から来な」って言っちまった。見た感じ、どっちもまだ10代はじめって感じだが、大丈夫かなぁ……。
双月暦519年 7月6日 風曜
アズサに関しては全然心配いらなかった。大人びてるなーとは思ってたが、普通に料理もできるし接客もこなせてる。ちっちゃいフォルナって感じ。
ビートも料理はまずまず。ただ、人見知りなのか緊張してるのか、客にはたどたどしかった。ま、慣れかなぁ。
齢を聞いたところ、アズサは12歳、ビートは10歳。あんまり幼い子を遅くまで店で使うのもなんだし、二人とも夕方5時には上がらせるコトにした。
新聞で、ヘレンさんが「絶対に再開は無い」って言ってた。昨日の投書とかも影響してるだろうし、財団内でも色々言われてるんだろうな。
だけど、アタシもヘレンさんに賛成。新聞覗き見してたアズサも、賛成っつってた。
双月暦519年 7月9日 氷曜
ウィアードが死んでから半月以上経ったが、やっぱりまだ、アズサたちの雰囲気は明るくない。そりゃ客が来たら笑顔で応対してるし、アタシと話してる時も笑っちゃいるが、ビートがトイレで泣いてんのを聞いた。アズサもふとした瞬間、寂しそうな顔をしてるのを見たコトが何度かある。
何とかしてやりたいなーとは思うんだが、今のところ、アタシには料理を教えるコトくらいしかできん。歯がゆい。
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やっぱりメシ関係でしか喜ばせられないし、今日アズサたちが上がる時に、豚肉の良さそうなトコを持たせてやろうとした。「コレで美味い飯を作ってお母さんに食わせてやれよ」ってな。
だけどうっかりしてた。「今、お母さん食欲無いの。つわりだって」って返された。しまった、そうだった。ただ、渡すって決めたものだし、そんなら返せとは言い辛い。って言うか言えるワケ無いだろ。「じゃ、お前らで食いな」っつって、無理無理渡した。
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ちょっとほっとした。もしかしたらアタシに気を遣った嘘かも知れんが。



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