「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
赤虎亭日記
赤虎亭日記 34
朱海さんの話、第34話。
双月暦522年5月16日:結婚記念日。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
34.
双月暦522年 5月16日 天曜(書き直し)
読み返してみたら、ココ二、三日の日記の内容がムチャクチャ過ぎる。16日のなんか、自分でも何て書いたか分からん。動揺しすぎ。実は浮かれてたのか、アタシって?
ともかく、ようやく落ち着いてきたから、もう一度書く。
まず、昨日はジュリアの結婚式だった。ソレは間違い無く現実。当初はアタシが見届人って話だったし、そのつもりで教会に行くはずだった。教会に行ったってトコも現実。
夢かと思ったのはココから。いや、一昨日からか? ソコから書いた方がいいな。一昨日、店を閉めようって時間になってジュリアとバートが来た。ヘレンさんまで連れて。何の用だよって思ってたら、ジュリアがイオタにちっさい箱を渡した。
で、イオタがアタシの手を引っ張って、厨房から客席の、ジュリアたちがいる方に連れてった。そしたらいきなりイオタがアタシの前にひざまずいて、その箱を開けた。中には指輪。で、「結婚して下さい」って言われた。いやもう何言ってんのか分かんない。
この時点で、アタシは相当パニックになってたらしい。「いや、結婚ってジュリアとバートがだろ?」とか何とか、ズレたコト言いまくってた気がする。そんな状態だったんで、ジュリアが見かねたんだろう。「イオタから相談されたのよ」っつって、経緯を説明してくれた。
まず、イオタは元々、公安辞めて店を開いた辺りから、アタシに気があったんだそうだ。自分の店が上手く行ってカネが貯まったら、プロポーズするつもりだったらしい。でも結局店潰しちまって、「こんなんじゃ結婚してくれなんて言えない」っつって、修行の旅に出たんだそうだ。
そしたら犯罪組織に捕まって記憶を消されて、5年も央北にいる羽目になったワケだ。んで記憶を取り戻した途端、何が何でも市国に帰ってアタシに逢いたいってなったらしい。で、アタシに無事会えたからすぐプロポーズしようと思ったけども、身ひとつで市国に戻って来た素寒貧なんで指輪も買えないし、結婚式なんてもっと無理。
だもんで元同僚のジュリアに相談したら、「それなら私たちと一緒に挙げればいいじゃない」って提案したんだそうだ。指輪については、なんとヘレンさんから借金して買ったんだそうだ。「ジュリアちゃんに頼まれて嫌とは言われまへんわ」っつって笑ってた。闘技場に出入りしてたのは、借金をちょっとずつでも返済しようと思ってのコトらしい。
で、残るはアタシの返事だけ。だけど、まあ、イオタならいいかなって思ってたコトは確かだし、こんなタイミングでイヤだって言えるワケ無いし。言いたくないし。
だからイオタから指輪を受け取って、「よろしく」ってどうにか返事した。
で、昨日の話。アタシとイオタもいきなり結婚式挙げるコトになって、準備どうすんだよって思ってたら、どうやらアタシに内緒で全部お膳立てしてたらしい。いつの間にかドレスも用意されてて、ソレを着て教会に。
教会に着いたら、同じようにドレス着たジュリアと、公安のよりは上等なスーツ着たバートが先にいた。んで、イオタもスーツ着て先に来てた。コイツのスーツ姿見るのなんて、公安の時以来だな。あと、ヘレンさんも来てくれた。今回の、本当の見届人だって言ってた。
2組同時ってどうなんだよって思ってたけど、牧師さんは「面白いやん」って笑ってた。良いのかソレで。
ともかくまずは、ジュリアとバートが指輪交換と愛の誓いをして、結婚成立。続いてアタシとイオタ。ジュリアたちと同じように指輪を交換して、牧師さんの前に立って、愛を誓った。誓っちゃったよ。
披露宴に移ったところで、ジュリアたちのために集まってたはずのみんなから、アタシたちに向けても拍手される。見たところ、どうもコイツら、ジュリアたちとイオタの計画知ってたよって顔してやがる。新郎新婦の席も2つずつ。完璧にやられた。全然気付かなかった。マジかよ。
その後はずーっと顔を真っ赤にして、適当に受け答えして、時間が過ぎ去るのを待ってたような気がする。
で、今に至る。もうイオタとさっきまで何してたかすら覚えてない。でもアタシの左手には指輪があるのは事実だし、同じ指輪はめてるイオタが後ろで寝てんのも今、確認した。
アタシ結婚したんだな。なんか慌てまくってたせいで、余韻とか全然感じないけど。……でも今、こうして日記書いてる間に、段々実感が沸いてきた。
よし、アイツを起こして確認してこよう。アタシ、アンタと結婚したんだよな? もっかいキスしていいよな? って。すっげー恥ずかしいコト、今から聞いてきてやる。
もうこの日記読めないな。二度と開けない気がする。すげぇ恥ずかしい。
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双月暦522年5月16日:結婚記念日。
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双月暦522年 5月16日 天曜(書き直し)
読み返してみたら、ココ二、三日の日記の内容がムチャクチャ過ぎる。16日のなんか、自分でも何て書いたか分からん。動揺しすぎ。実は浮かれてたのか、アタシって?
ともかく、ようやく落ち着いてきたから、もう一度書く。
まず、昨日はジュリアの結婚式だった。ソレは間違い無く現実。当初はアタシが見届人って話だったし、そのつもりで教会に行くはずだった。教会に行ったってトコも現実。
夢かと思ったのはココから。いや、一昨日からか? ソコから書いた方がいいな。一昨日、店を閉めようって時間になってジュリアとバートが来た。ヘレンさんまで連れて。何の用だよって思ってたら、ジュリアがイオタにちっさい箱を渡した。
で、イオタがアタシの手を引っ張って、厨房から客席の、ジュリアたちがいる方に連れてった。そしたらいきなりイオタがアタシの前にひざまずいて、その箱を開けた。中には指輪。で、「結婚して下さい」って言われた。いやもう何言ってんのか分かんない。
この時点で、アタシは相当パニックになってたらしい。「いや、結婚ってジュリアとバートがだろ?」とか何とか、ズレたコト言いまくってた気がする。そんな状態だったんで、ジュリアが見かねたんだろう。「イオタから相談されたのよ」っつって、経緯を説明してくれた。
まず、イオタは元々、公安辞めて店を開いた辺りから、アタシに気があったんだそうだ。自分の店が上手く行ってカネが貯まったら、プロポーズするつもりだったらしい。でも結局店潰しちまって、「こんなんじゃ結婚してくれなんて言えない」っつって、修行の旅に出たんだそうだ。
そしたら犯罪組織に捕まって記憶を消されて、5年も央北にいる羽目になったワケだ。んで記憶を取り戻した途端、何が何でも市国に帰ってアタシに逢いたいってなったらしい。で、アタシに無事会えたからすぐプロポーズしようと思ったけども、身ひとつで市国に戻って来た素寒貧なんで指輪も買えないし、結婚式なんてもっと無理。
だもんで元同僚のジュリアに相談したら、「それなら私たちと一緒に挙げればいいじゃない」って提案したんだそうだ。指輪については、なんとヘレンさんから借金して買ったんだそうだ。「ジュリアちゃんに頼まれて嫌とは言われまへんわ」っつって笑ってた。闘技場に出入りしてたのは、借金をちょっとずつでも返済しようと思ってのコトらしい。
で、残るはアタシの返事だけ。だけど、まあ、イオタならいいかなって思ってたコトは確かだし、こんなタイミングでイヤだって言えるワケ無いし。言いたくないし。
だからイオタから指輪を受け取って、「よろしく」ってどうにか返事した。
で、昨日の話。アタシとイオタもいきなり結婚式挙げるコトになって、準備どうすんだよって思ってたら、どうやらアタシに内緒で全部お膳立てしてたらしい。いつの間にかドレスも用意されてて、ソレを着て教会に。
教会に着いたら、同じようにドレス着たジュリアと、公安のよりは上等なスーツ着たバートが先にいた。んで、イオタもスーツ着て先に来てた。コイツのスーツ姿見るのなんて、公安の時以来だな。あと、ヘレンさんも来てくれた。今回の、本当の見届人だって言ってた。
2組同時ってどうなんだよって思ってたけど、牧師さんは「面白いやん」って笑ってた。良いのかソレで。
ともかくまずは、ジュリアとバートが指輪交換と愛の誓いをして、結婚成立。続いてアタシとイオタ。ジュリアたちと同じように指輪を交換して、牧師さんの前に立って、愛を誓った。誓っちゃったよ。
披露宴に移ったところで、ジュリアたちのために集まってたはずのみんなから、アタシたちに向けても拍手される。見たところ、どうもコイツら、ジュリアたちとイオタの計画知ってたよって顔してやがる。新郎新婦の席も2つずつ。完璧にやられた。全然気付かなかった。マジかよ。
その後はずーっと顔を真っ赤にして、適当に受け答えして、時間が過ぎ去るのを待ってたような気がする。
で、今に至る。もうイオタとさっきまで何してたかすら覚えてない。でもアタシの左手には指輪があるのは事実だし、同じ指輪はめてるイオタが後ろで寝てんのも今、確認した。
アタシ結婚したんだな。なんか慌てまくってたせいで、余韻とか全然感じないけど。……でも今、こうして日記書いてる間に、段々実感が沸いてきた。
よし、アイツを起こして確認してこよう。アタシ、アンタと結婚したんだよな? もっかいキスしていいよな? って。すっげー恥ずかしいコト、今から聞いてきてやる。
もうこの日記読めないな。二度と開けない気がする。すげぇ恥ずかしい。
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