DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 5 ~銃声は7回~ 5
ウエスタン小説、第5話。
真昼の襲撃。
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5.
アデルの手に小銃が戻る頃には、アデルはすっかり、店主の名前や友人の数さえ聞き出してしまっていた。
「そんでピエトロじいさん、さっきチラっと聞いた話になるんだが」
「うん?」
「アンタの友人の息子さん、名前を何と言ったっけ? 確か……、ジョルジオ? だっけ」
「ああ。ジョルジオのぽっちゃり坊やのことか。そいつがどうした?」
「俺の知り合いの知り合いにも似た名前がいるからさ、ちっと気になったんだ」
「ほう?」
一瞬、店主の目が注意深そうに、ギラリと光る。
しかしアデルは警戒する様子を出さず、呑気そうにこう返した。
「でも全然違うな、俺の知ってるジョルジオはガリガリのおっさんだった。
まあいいや、こんなだだっ広い西部で偶然知り合いの知り合いの、そのまた知り合いに出くわすなんて、よっぽどのラッキー野郎ってことだな。そして残念ながら、俺はそこまでじゃない。いや、変なこと聞いて悪かったな、じいさん。
ありがとよ、ピエトロじいさん。また何かあったら頼むわ」
「……ああ。またな、Mr.ネイサン」
アデルとエミルはそのまま店主に背を向け、すたすたと店を出て行った。
イタリア人街から20ヤードほど離れたところで、アデルが口を開く。
「で、エミル」
「ええ。みたいね」
短く言葉を交わし、ふたたびそのまま歩き出す。
「じゃ、どうすっか?」
「撃たれたくないでしょ?」
「そりゃそうだ」
次の瞬間、二人は走り出した。
その一瞬後に銃声が響き、二人がいた地面が爆ぜる。
「いきなりかよ、まったく!」
「あんたの見立て通りね。『疑わしきは罰せよ』ってところかしら」
二人が走る間にも、二度、三度と地面に土煙が立つ――どこかから銃撃されているのだ。
「どこからか分かるか?」
「はっきりとは分からないわね。でも真ん前や真後ろってことは無いでしょうね」
「ああ。その方角からなら、延長線上を狙えば嫌でも当たるからな」
5発目の銃弾を避け、二人は路地裏に滑り込む。
「はぁ、はぁ……」
路地裏から恐る恐る表通りを確かめ、アデルはため息をつく。
「これだけゴチャゴチャした通りだ。どこから撃ってきたかなんて、見当が付けられん」
「そうね。でも相手も見失ったみたいよ。撃ってこないし」
「ああ、恐らくはな。……で、この後は?」
「このまま町を出るしか無いわね。店を出てすぐ銃撃されたんだもの、敵の連携は相当よ。下手すると宿も突き止められてるわ」
「だな」
二人は路地裏を抜け、そのまま駅まで歩くことにした。
だが――。
「……参ったね、どうも」
「ええ、本当」
二人の行く手を阻むように、男が3人、銃を手に近付いてきた。
「お前ら、何者だ?」
一人が撃鉄を起こし、アデルに照準を定める。
「何者って、何がだよ?」
アデルは銃を構えず、尋ね返す。
「ジョルジオ・リゴーニ氏のことを尋ねてきた奴が、ただの賞金稼ぎとは思えねえ」
「ジョルジオ? ピエトロのじいさんが言ってた、ぽっちゃり坊っちゃんって奴のことか? 聞いてないのか、人違いだって」
「イタリア読みじゃ分からねーようだな」
さらにもう一人、撃鉄を起こす。
「アメリカ読みだと、ジョージ・リゴーニだ。こっちなら知ってるだろう、探偵さんよ?」
「彼のことを嗅ぎ回られちゃ、俺たちとしちゃ迷惑極まりないもんでな」
3人目も撃鉄を起こし、揃ってアデルに向ける。
「正直に言え。ウソを言ったら、この国らしく蜂の巣にしてやるぞ」
「そうだ。頭に3発、胸に2発。それを掛ける3だ」
「さあ、言え。いや、言わなくてもいいがな」
そして次の瞬間、パン、と銃声が轟いた。
しかし――倒れたのはアデルでもエミルでもなく、3人並んだうちの、真ん中にいた男だった。
「なっ……!?」
「お、おい、ドメニコ、……ぐあ!?」
続いて、右側の男も肩を押さえてうずくまる。
「さっきからあたしを無視してくれてるけど、これでようやく気付いてくれたかしら?」
銃口から硝煙をくゆらせつつ、エミルが声をかける。
「どうする? 素直に降参する? それともあんたも右肩に半インチのピアス穴、開けて欲しいの?」
「う……ぐ」
残った一人はボタボタと汗を流していたが、やがて拳銃を地面に捨て、両手を挙げて降参した。
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真昼の襲撃。
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アデルの手に小銃が戻る頃には、アデルはすっかり、店主の名前や友人の数さえ聞き出してしまっていた。
「そんでピエトロじいさん、さっきチラっと聞いた話になるんだが」
「うん?」
「アンタの友人の息子さん、名前を何と言ったっけ? 確か……、ジョルジオ? だっけ」
「ああ。ジョルジオのぽっちゃり坊やのことか。そいつがどうした?」
「俺の知り合いの知り合いにも似た名前がいるからさ、ちっと気になったんだ」
「ほう?」
一瞬、店主の目が注意深そうに、ギラリと光る。
しかしアデルは警戒する様子を出さず、呑気そうにこう返した。
「でも全然違うな、俺の知ってるジョルジオはガリガリのおっさんだった。
まあいいや、こんなだだっ広い西部で偶然知り合いの知り合いの、そのまた知り合いに出くわすなんて、よっぽどのラッキー野郎ってことだな。そして残念ながら、俺はそこまでじゃない。いや、変なこと聞いて悪かったな、じいさん。
ありがとよ、ピエトロじいさん。また何かあったら頼むわ」
「……ああ。またな、Mr.ネイサン」
アデルとエミルはそのまま店主に背を向け、すたすたと店を出て行った。
イタリア人街から20ヤードほど離れたところで、アデルが口を開く。
「で、エミル」
「ええ。みたいね」
短く言葉を交わし、ふたたびそのまま歩き出す。
「じゃ、どうすっか?」
「撃たれたくないでしょ?」
「そりゃそうだ」
次の瞬間、二人は走り出した。
その一瞬後に銃声が響き、二人がいた地面が爆ぜる。
「いきなりかよ、まったく!」
「あんたの見立て通りね。『疑わしきは罰せよ』ってところかしら」
二人が走る間にも、二度、三度と地面に土煙が立つ――どこかから銃撃されているのだ。
「どこからか分かるか?」
「はっきりとは分からないわね。でも真ん前や真後ろってことは無いでしょうね」
「ああ。その方角からなら、延長線上を狙えば嫌でも当たるからな」
5発目の銃弾を避け、二人は路地裏に滑り込む。
「はぁ、はぁ……」
路地裏から恐る恐る表通りを確かめ、アデルはため息をつく。
「これだけゴチャゴチャした通りだ。どこから撃ってきたかなんて、見当が付けられん」
「そうね。でも相手も見失ったみたいよ。撃ってこないし」
「ああ、恐らくはな。……で、この後は?」
「このまま町を出るしか無いわね。店を出てすぐ銃撃されたんだもの、敵の連携は相当よ。下手すると宿も突き止められてるわ」
「だな」
二人は路地裏を抜け、そのまま駅まで歩くことにした。
だが――。
「……参ったね、どうも」
「ええ、本当」
二人の行く手を阻むように、男が3人、銃を手に近付いてきた。
「お前ら、何者だ?」
一人が撃鉄を起こし、アデルに照準を定める。
「何者って、何がだよ?」
アデルは銃を構えず、尋ね返す。
「ジョルジオ・リゴーニ氏のことを尋ねてきた奴が、ただの賞金稼ぎとは思えねえ」
「ジョルジオ? ピエトロのじいさんが言ってた、ぽっちゃり坊っちゃんって奴のことか? 聞いてないのか、人違いだって」
「イタリア読みじゃ分からねーようだな」
さらにもう一人、撃鉄を起こす。
「アメリカ読みだと、ジョージ・リゴーニだ。こっちなら知ってるだろう、探偵さんよ?」
「彼のことを嗅ぎ回られちゃ、俺たちとしちゃ迷惑極まりないもんでな」
3人目も撃鉄を起こし、揃ってアデルに向ける。
「正直に言え。ウソを言ったら、この国らしく蜂の巣にしてやるぞ」
「そうだ。頭に3発、胸に2発。それを掛ける3だ」
「さあ、言え。いや、言わなくてもいいがな」
そして次の瞬間、パン、と銃声が轟いた。
しかし――倒れたのはアデルでもエミルでもなく、3人並んだうちの、真ん中にいた男だった。
「なっ……!?」
「お、おい、ドメニコ、……ぐあ!?」
続いて、右側の男も肩を押さえてうずくまる。
「さっきからあたしを無視してくれてるけど、これでようやく気付いてくれたかしら?」
銃口から硝煙をくゆらせつつ、エミルが声をかける。
「どうする? 素直に降参する? それともあんたも右肩に半インチのピアス穴、開けて欲しいの?」
「う……ぐ」
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