DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 5 ~銃声は7回~ 6
ウエスタン小説、第6話。
アデルの本領発揮。
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6.
まだ息のあった残り2人を介抱した後、アデルたちは改めて、自分たちを襲った男――彼もイタリア系の2世で、ロバート・ビアンキと言う――に尋問し返すことにした。
「まず聞きたいのは、この町には本当に、リゴーニがいるのかだ。どうなんだ、ロバート?」
「今はいない。でももうすぐ来る予定だとは聞いてる」
「なるほど。2つ目、俺たちを探偵だと見抜いたようだが、何か『お手本』があったのか?」
「お手本?」
「つまり、俺たちの前にも探偵が来たことがあったのか、だ」
「あ、ああ。つい先日、それっぽいのが来たって話は聞いた。だから俺たちも、もしかしてそうなんじゃないかって」
「ふむ。お前らの組織に、俺たちのことは伝わってるのか? ピエトロじいさんが他の奴に伝えたりするのか?」
「いや、まだ話してない。伝達も、この辺りは全部俺たちがすることになってる。折角の手柄を横取りされたくなかったし、組織にはまだ伝えてない」
「良い心がけだ。そこでロバート、ちょっとばかし相談したいことがあるんだが」
そう言って、アデルは懐から煙草を取り出し、ロバートにくわえさせる。
「な、なんだ?」
「協力ってヤツだよ。リゴーニがいつ来るのか、もしくはどこで武器の製造をやってんのか、探って俺たちに伝えてくれないか?
それさえ分かれば、お前らの身の安全は保証する。お前さんの命は助けるし、お仲間もこれ以上傷つけない。
オマケにカネもやるし、もしかしたら祖国イタリアからの感謝状ももらえるかも知れんぜ?」
「……」
ロバートは逡巡した様子を見せていたが、そこでさらに、アデルが誘惑する。
「お前さん、いくつだ?」
「あ?」
「歳だよ。今何歳なんだ?」
「23だ」
「23! ほお、23と来たか!」
「それが一体何だってんだ?」
「俺は今年で26になる。お前さんと3つ違いだ、そう大した差じゃないよな。
だが片や田舎町のしょぼくれた用心棒、片や大都会で難事件を追う探偵。たった3歳違うだけで、これほど人生に差が出ちまうもんなのか?
いいや、歳なんか原因じゃあない! 俺とお前さんの大きな差はだ、ズバリこれまでの人生に、『チャンス』があったかどうかなんだ。分かるか、ロバート?」
「ちゃ、チャンス?」
「お前さん、このまんま10年、20年とこの町でしょんぼり暮らしてて、いつか組織の幹部、大幹部になれるなんて思ってるのか?
いいや、組織がらみでなくったって、社会の裏や表で活躍できるような日々がいつか来ると、そう思ってるのか?」
「な、何だよ、それ?」
「どうだ? 今お前は、自分が活躍してると思ってるのか?
そうじゃないよな? じゃなきゃ組織に報告せず、自分たちだけで手柄を立ててやろうなんて思うわけが無い」
「う……、それは」
「だが、俺は違うぜ。日々をスリルとスペクタクルが繰り返す、波乱万丈の人生だ。
ある時は聖人気取りの賞金首と命の取り合いをし、またある時は怪盗を追って鉄道から鉄道へはしごし、はたまたある時は……」「だから何なんだよって言ってんだよ!」
憤った様子を装ってはいるが、明らかにロバートの声は上ずっている。
「いいか、ロバート。これはチャンスなんだぜ? だってそうだろ、俺たちに今、ここで協力すりゃ、お前も事件解決の立役者だ。
そうなりゃ俺たちのボスにも目をかけてもらえるかも知れないんだぜ? もしかしたらそれをきっかけに、お前も我が探偵局の一員に任命され、さらにさらに俺たちみたく波乱万丈の日々を過ごせる、か、も。
なあ、これがチャンスじゃなきゃ、何がチャンスだって言うんだ?」
「……チャンス、か」
幸薄い若者ならば誰でも引き込まれるようなアデルの話に、ロバートの顔色は明らかに変わっていた。
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アデルの本領発揮。
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6.
まだ息のあった残り2人を介抱した後、アデルたちは改めて、自分たちを襲った男――彼もイタリア系の2世で、ロバート・ビアンキと言う――に尋問し返すことにした。
「まず聞きたいのは、この町には本当に、リゴーニがいるのかだ。どうなんだ、ロバート?」
「今はいない。でももうすぐ来る予定だとは聞いてる」
「なるほど。2つ目、俺たちを探偵だと見抜いたようだが、何か『お手本』があったのか?」
「お手本?」
「つまり、俺たちの前にも探偵が来たことがあったのか、だ」
「あ、ああ。つい先日、それっぽいのが来たって話は聞いた。だから俺たちも、もしかしてそうなんじゃないかって」
「ふむ。お前らの組織に、俺たちのことは伝わってるのか? ピエトロじいさんが他の奴に伝えたりするのか?」
「いや、まだ話してない。伝達も、この辺りは全部俺たちがすることになってる。折角の手柄を横取りされたくなかったし、組織にはまだ伝えてない」
「良い心がけだ。そこでロバート、ちょっとばかし相談したいことがあるんだが」
そう言って、アデルは懐から煙草を取り出し、ロバートにくわえさせる。
「な、なんだ?」
「協力ってヤツだよ。リゴーニがいつ来るのか、もしくはどこで武器の製造をやってんのか、探って俺たちに伝えてくれないか?
それさえ分かれば、お前らの身の安全は保証する。お前さんの命は助けるし、お仲間もこれ以上傷つけない。
オマケにカネもやるし、もしかしたら祖国イタリアからの感謝状ももらえるかも知れんぜ?」
「……」
ロバートは逡巡した様子を見せていたが、そこでさらに、アデルが誘惑する。
「お前さん、いくつだ?」
「あ?」
「歳だよ。今何歳なんだ?」
「23だ」
「23! ほお、23と来たか!」
「それが一体何だってんだ?」
「俺は今年で26になる。お前さんと3つ違いだ、そう大した差じゃないよな。
だが片や田舎町のしょぼくれた用心棒、片や大都会で難事件を追う探偵。たった3歳違うだけで、これほど人生に差が出ちまうもんなのか?
いいや、歳なんか原因じゃあない! 俺とお前さんの大きな差はだ、ズバリこれまでの人生に、『チャンス』があったかどうかなんだ。分かるか、ロバート?」
「ちゃ、チャンス?」
「お前さん、このまんま10年、20年とこの町でしょんぼり暮らしてて、いつか組織の幹部、大幹部になれるなんて思ってるのか?
いいや、組織がらみでなくったって、社会の裏や表で活躍できるような日々がいつか来ると、そう思ってるのか?」
「な、何だよ、それ?」
「どうだ? 今お前は、自分が活躍してると思ってるのか?
そうじゃないよな? じゃなきゃ組織に報告せず、自分たちだけで手柄を立ててやろうなんて思うわけが無い」
「う……、それは」
「だが、俺は違うぜ。日々をスリルとスペクタクルが繰り返す、波乱万丈の人生だ。
ある時は聖人気取りの賞金首と命の取り合いをし、またある時は怪盗を追って鉄道から鉄道へはしごし、はたまたある時は……」「だから何なんだよって言ってんだよ!」
憤った様子を装ってはいるが、明らかにロバートの声は上ずっている。
「いいか、ロバート。これはチャンスなんだぜ? だってそうだろ、俺たちに今、ここで協力すりゃ、お前も事件解決の立役者だ。
そうなりゃ俺たちのボスにも目をかけてもらえるかも知れないんだぜ? もしかしたらそれをきっかけに、お前も我が探偵局の一員に任命され、さらにさらに俺たちみたく波乱万丈の日々を過ごせる、か、も。
なあ、これがチャンスじゃなきゃ、何がチャンスだって言うんだ?」
「……チャンス、か」
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